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【小阪裕司コラム】第13回:石油ストーブで焼き芋を

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

鍼灸院が始めた焼き芋販売が大好評!

 ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある鍼灸院からのご報告。開業して25年、ベッド1台の小さな、店主いわく「隠れ家的」なお店だ。
 同店の暖房は今どき珍しくなった石油ストーブ。上にやかんを乗せられる昔懐かしいタイプ。初めて来院する方はみなさん懐かしがって「おばあちゃん家に来たみたいな匂い~なんだか安心する」とよく言われ、雰囲気作りにも役立っているとのこと。
 そんなある寒い日、よくご利用いただくお客さんが来院した。いつもは明朗快活なこの方だが、この日はなんだか元気がない。施術のために仰向けになっていただくと思わず涙が…。聞くと、ここのところ色々あって…とのこと。施術していくうちにゆったりされてきたものの、何かぐっと一押し心を温めることができないかと考えていると、自家栽培のさつまいものことが思い出された。それをストーブの上で焼き芋にしておき、帰りにお渡しし、少しでも心温かくなってもらおうと。
 そうして施術が終わり、帰り支度をすませたその方に焼き芋を手渡すととても嬉しそう。お帰りになった後にも、丁寧なお礼のメールをいただいた。
 そこで店主はピンときた。「あ!これって商売にしてもいいかも!焚火の周りに人が集まるみたいに」。そこで、焼き芋を販売することにした。来院した際、ご希望の方にはさつまいもをストーブの上に乗せておき、お帰りの際にホクホクになった焼き芋を持って帰ってもらうというやり方だ。告知に大きなPOP(店頭販促物)を作成。そこに大きく「さつまいも、ストーブに乗せる?帰るころにはホクホクよ」と書き、掲示した。
 そうして始めたところ、大好評。初日から「なに?これ!」との質問に答えると「アハハ!ひとつお願いね」のご注文。普段あまりPOP類を見ない93歳のおじいさんも「お宅のお芋、焼いて売ってるの?面白いね」とお買い上げ。今ではすっかり名物になったとのことだ。

お客さんにとっても心温まる体験に!

 この焼き芋のアイデアは秀逸だ。それも、昔懐かしいストーブが活きて、お客さんにとって一層心温かい体験となる。そして、この一連のエピソードからそれ以上に思うことは、人にとって、こういう場所が必要だということだ。人の心を温めることをいつも考える店主による、心温まる場所。その一軒一軒はささやかかもしれないが、これからの厳しさを増す社会の中で、それらはなくなってはならない存在なのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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