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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
SNSへ告知すると商品が一気に完売
今回は、「売れた」と「売った」の違いのお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある飲食・物販の店からのご報告だ。
その報告は、店主からの「(ワクワク系でよく語られる)『売上ができた』と『売上をつくる』に大きな違いがあるという言葉になるほどと感心しました。そして初めてこれが『売上をつくる』ということなんだと思えたことがありましたのでご報告します」の言葉から始まる。
同店はレストランとしての営業の傍ら、地元産のお米を使ったシフォンとサブレなどを製造販売している。例年3月から4月にかけては、異動の時期というのもあり、新しい職場への挨拶やお世話になった職場へのお礼などにサブレがよく利用されてきた。今までも、それをある程度想定し、その時期やや多めに用意はしていたが、それ以上特に意識してセールスすることはなかった。
しかし今年は違った。年明けの飲食部門の多忙さも一段落し、菓子の在庫もできてきた3月、「今なら!」と、ワクワク系を実践すべく、SNSで告知した。するとその翌日からひっきりなしに注文の電話がかかってきて、在庫分はあっという間に完売。その後のお客さんには納品を待ってもらうほどになり、「びっくりしました」と店主。つまりこれまでになかったほどの売上となったのだが、この成果の決め手は何だと思うだろうか?
SNSでの実際の告知画面も報告書には添付されていたが、その文面は特にテクニカルなものではない。「春は出会いと別れの季節ですね」の書き出しから「この時期は〇〇(商品名)サブレの注文をたくさんいただくので、たくさん焼いています」と続き、この商品への想いがひとしきり語られ、「お世話になった職場の皆さんへのお礼や、新しい職場などへのご挨拶にとってもおすすめです!」となる、ごく素朴なものだ。
気づきが売上をつくることも
しかし、成果の決め手はまさにその点にある。改めてこの商品を(商品自体は年中売っているものだが)、この時期のお礼や挨拶に最適だと語り直し、発信した点だ。言い換えればこれまでの売上は、この商品がお礼や挨拶に良いと自ら思い買いに来た人が買ったことによる売上。今年のそれは、店主らがSNSでつながっている方々に働きかけ、「ああ、そうだ」「たしかに」などと気づかせ、店に足を運ばせた結果の売上。これが「売れた」と「売った」の違い。店主が実感した「売上をつくる」ということなのである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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