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【小阪裕司コラム】第64回:ラオスでの一斉値上げ事件

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

商売の理論は全世界共通?

 今回は、アジアはラオスで商売を営む、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員(日本人)からの報告を題材に、商売について考えてみよう。
 店主が営むのは、食品や生活雑貨などを幅広く品揃えする小売店。「人間の科学」をベースにしたワクワク系はラオスの方々にももちろん通用するはず、と店主は遠いラオスから熱心に当会の学びの場に参加している。
 そんな同店が昨年から特に力を入れているのは、日本の実践会員同様「値上げ」だ。当会の基礎の取り組みに「価値創造活動」と呼ばれるものがあるが、それを行った結果、「価値創造活動を行わない+価格を安くした商品」より、「価値創造活動を行う+価格を上げた(5%-10%)商品」の方がよく売れることは、同店でもすでに結果に出ている。そこで昨年は一層、「値引きによる集客ではなく、正しく値上げをすることはより良い結果をもたらす」というメッセージを社内に発信してきた。
 そんななか、事件は起こった。このメッセージが強く伝わり過ぎたためか、ラオス人店長がよかれと、商品の一斉値上げを行ったのだ。値上げ幅は約5%。店主がそれを知ったのは、実施後1週間も経ってから。前述の通り、価値創造活動の威力をよく分かっている店主ではあるが、さすがに一斉値上げとは、「なんてことをしてくれたんだ」と思ったとのこと。しかし、ここで下手に元の価格に戻すより、このような大胆な値上げをしたからこそ分かる店の力、これまでワクワク系を推進してきて、店にどれほどの力がついているのかを確認してみよう、との考えに至った。

お店に絆を感じてもらえれば値上げは受け入れられる

 そこでまずは現場スタッフに肌感覚的なところを聞いてみると、「新規客は減ったような気がしますが、常連客は来てくれているので問題ないと思いますよ」との返答。しかしそれだけでは安心できず、当月が終わるまで待ち、売上と客数を、過去最高だった同年10月と比較してみた。するとなんと12月は、過去最高を更新していた。詳細を見ると実際に、新規客は売上も客数もやや落ちていたが、リピート顧客は大きく上がっていたのだ。自店を、「単に必要な商品を買う場」ではなく、「楽しい場/ワクワクの場」と感じ、絆を感じてくれている人は、今回の値上げを受け入れてくれるはず、と店主は思ったと言うが、まさにその通りの結果となっていた。
 「しっかりと店力はついてきている。やってきたことは間違いなかった」と店主。今回結果的に、やっていることの重要性を社内に伝える機会ともなった、とのことである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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