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【小阪裕司コラム】第57回:「+サービス」で無限の価値を

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

「+サービス」を変えることで値上げは可能か?

 今回は、あるバーの店主からのご報告。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、本格ウイスキーが売り物のバーだ。
 今、ウイスキーは世界中で品薄状態が続いている。取り合いになっているのだ。結果、バーから見れば仕入れ原価はどんどん上がる。となれば、当然売価に反映させるしかないのだが、これがそう単純ではない。同店の店主もこう言う。「ウイスキーの中身はもちろん変わりません。ということはお客様に仕入れが上がったことに伴う値上げをしたとしたら、お客様が受け取る価値は変わらず、価格だけ上がるという直接的な値上げになってしまう。これは非常に良くないのではないか」。
 そこで彼は、自店が提供できる価値を見直すことにした。そしてその際、次のような考え方を基にした。「『仕入れ価格は原価の一部』と考えて、『+サービス』が足し算されて定価と言うものが決定される。この『+サービス』の部分はある意味店側が決定出来る要素で、仕入れ原価から切り離して考える事ができる重要な部分」。そして具体的にその「+サービス」を変えることによって、価格を上げることが可能か実行してみた。
 そのカギは「グラス」だ。ウイスキーにしてもカクテルにしても、必ずグラスは使う。同店はオーセンティックバーゆえ、これまでもグラスには気を使って来たが、ここでさらに高級なグラスで提供することで、中身は同じでも「+サービス」で価値を上げ、価格に反映させることは可能だ、と考えたのだ。
 しかし、グラスをより高級に変えたといっても、すべてのお客さんがグラスに興味があるわけではない。「そこは根気よく価値を伝え教えることがとても重要」と店主は言うが、かといって単純に「今のロックグラスはバカラですよ」と言うのも違う。

常に「考える」ことで打つべき手は生み出される

 そこで例えば彼はこう言うのだ。「飲んでいるグラスを真上から覗いて下さい。ウイスキーの万華鏡が見えますよ」。
 「この一瞬の体験は強く印象に残るようで、お客様の反応は凄く良い」と店主。同店ではこのような「+サービス」の価値向上を様々に行い、お客さんの好評を得ながら、スムーズな値上げに成功している。
 「+サービス」を含めて定価だという考え方は秀逸だ。それならば価値は無限に作ることができ、価格にも縛られない。そして彼のように常に「考える」ことで、打つべき手は生み出されてくるのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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