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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
個人情報をお店に残してもらうには?
前回、鮎の塩焼きが名物の、あるドライブインでの、リピーターを増やす取り組みをお話しした。一見客が多くなりがちな業種ではあるが、前回お伝えしたお礼状など種々の取り組みが功を奏し、リピーター増に成功している。
お礼状を送るとなるとお客さんの個人情報が不可欠だが、それには、お客さんに、個人情報を残してもいいという気持ちになってもらうことが必要だ。そこに効いているのが、お客さんの心をくすぐる同店の様々なアプローチだ。
その一例に「ワンチャンステッカー」なるものがある。同店はドライブイン。食事で立ち寄るお客さんもいれば、お手洗いだけのお客さんもいる。そんな多様な来店客の中には、何も買わずに立ち去る人も多い。そこでこのステッカーだ。何も買わずに立ち去りかけたお客さんに近づき、これを渡す。そこには、犬(ワンちゃん)の着ぐるみを着た同店のオリジナルキャラクターが描かれ、こう書かれている。「今回は期待に添えられずごめんなさい…。でも…、もうワンチャンください!」。
すると何が起きるのか。例えばある日来店した30代とおぼしき軽トラックの運転手。するすると店内に入り、ざっと見渡して、またするすると店を出た。そこでスタッフがこのステッカーを手渡すとぱっと笑顔になり、鮎を焼いているコーナーを一瞥して、「あの鮎って買えるの?」。「はい、買えます」と答えると、「じゃあ3尾ください。お土産にするので」と購入した。同店では、鮎を買ったお客さんには「鮎食べました」というステッカーを渡していることから、今度はこれを手渡すとさらに笑顔に。こういうことが日常的に行われている店なのである。
他の例をもうひとつ言うと、ポイントカードにポイントを付ける際、サイコロを振ってもらう、というものもある。出た目の数ポイントがつくものだが、これはしばしば「キャー」と歓声が上がるほど盛り上がるのだそうだ。ちなみにこのポイントカードは、「お近づきのしるしカード」という、これまた粋な名前で呼ばれている。お客さんが笑顔になるアプローチを
名物の鮎が美味しい、接客が丁寧、お店が清潔、それらはリピーター増の要件ではあるが、今日、それだけでは足りない。そこに同店のような、思わず笑顔がこぼれるアプローチがあると、その瞬間からお客さんは、店に好感を抱き、愛着を持ち始める。それが個人情報を残してくれることにもつながり、同店の場合、その後お礼状が届くことで、またその気持ちが深まる。こうして“お客さんの心”を育てていくことこそが、今日のリピーター作りの極意なのである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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