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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
強調した商品が一番伸びるとは限らない?
10種類も同種の商品がある中、1種類だけを強調したら他の商品の売上はどうなるか――今回は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるお茶販売店での取り組みをご紹介しよう。
同社は茶葉の栽培から店頭や通販での販売までを一貫で手掛ける会社。今回社長が送ってくれた実践報告は、店頭販売しているお茶の中の5種×2パターン(グラム数の違い)、計10種類の販売についてのものだ。
今回強調した「1種類」とは、5種の中の上から2番目に高価なお茶。店頭にはすべてのお茶が並んでいるが、そこに大きなPOP(店頭販促物)を貼った。そこには「お茶人生46年で最高のお茶になりました!!」とのキャッチコピーに続いて、どれほど最高のお茶になったのか、なぜそうなったのかなどが丁寧に綴られており、最後に「どのお茶も美味しいのですが、特に〇〇(商品名。上から2番目のお茶)に全てが詰まっています」と、その商品1つだけに的を絞り、強力に訴求した。
そうした結果、どうなっただろうか? 上から2番目に高価とは言え、その商品を強力に訴求したのだから、それが一番伸びただろうか? その他の商品は?
彼からの報告書には、昨年と今年を対比して、10種それぞれの商品の販売数量と伸び率が記されていたが、そこには実に興味深い結果が現れていた。
まずはどの商品が伸びたかだが、結果としてはすべての商品が伸びた。中でも最も伸び率が高かったのは、強調した上から2番目の商品ではなく、さらにその上の、最上級の商品だった。その伸び率は全商品中唯一の200%超え。他の商品も、軒並み120%から180%の伸び率だった。
もっとも、販売数量は上から5番目の商品が毎年最も多く、今回もそうだった。普段使いの商品だからだ。それでもその商品の伸び率も120%を超え、大きく伸びた。単価が圧倒的に高い最上級品の大きな伸びも含め、全体として売上は大きく伸びたのだった。大事なことは「価値をちゃんと伝える」こと
1種類の価値を強調することにより、連れて他の商品の価値も上がり、全体として売上が伸びる。このケースはそれだ。2番目がそれほど美味しいならばその上はさらに美味しいに違いないとこの機に最上級品を試す方もいれば、ならばと普段使いをいつもより多めに買う人もいただろう。大事なことは常に「価値をちゃんと伝える」ことにより人の行動は変わる、その事実なのである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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