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【小阪裕司コラム】第20回:これが頭に入っていれば②

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

壊れてしまった商品が定価で売れた!

 前回の話の続き。ある小顔矯正サロンでのこと。店主らは、床に落ちてポンプ式ボトルの頭部分が壊れてしまった「ローズの香りのボディクリーム」を、「猫の貯金箱方式」で売ってみようと試みた。
 この方式で売るとなれば、カギはPOP(店頭販促物)だ。そこで猫の貯金箱のPOPを模して、「誰か一緒に暮らしてくれませんか?」の見出しから、こう続けた。「2/14(げつ)てんき くもり バレンタインチョコを買いに行くとちゅうに事故にあいました。〇〇〇(同店の名前)小児科に行ったんだけど首がまっすぐにならず『他の所に行って』と言われました。だれか、私の首をまっすぐにしてくれる人いないかな~」。さらに「じこしょうかい」として、「なまえ…ローズ(おんなのこ) ねんれい…6さい たいじゅう…370g しんちょう…20cm」。締めには、「事故にあったけど性格(中身)は変わっていないから安心してね。あなたのそばに置いてくれませんか?香りであなたに寄り添いたいです」とし、壊れたポンプはあえて修理せず、POPと共に店頭に置いた。ちなみに販売価格は値引きなしの定価である。
 するとある夜、施術を終えた女性顧客が「これ何ですか?」と興味津々なご様子。「実はね…」といきさつを語ると、「このPOP見てたら、私がこの子を引き取りたくなっちゃって」と、見事定価でお買い上げ。POPも一緒にお渡しすると、手にしたPOPとローズちゃんに「私の家においで」と語りかけながら、嬉しそうにお帰りになった。
 この出来事に一同ハッピーな気持ちになったのだが、さらに翌日、この方からLINEで連絡が。「同居人の先生がローズちゃんを治してくれました」というメッセージと共に、その同居人が接着剤片手に真剣な眼差しでローズちゃんの頭を取り付けている写真が送られてきたのだった。

インプットの量と柔軟な応用力が大切

 落としてボトルの頭部分が壊れてしまったボディクリームを、普通はそのまま定価で売ろうと思わない。さらにはそこにさらに価値を生もうとは。しかしこういう事例が頭に入っていると、彼らのように、「あの事例があったな。あのときは…」と、打つ手が浮かんで来る。当会ではこうした事例を毎月数多くシェアしているが、この「インプットの量」、どれだけ多くの事例を頭に入れているかがものを言う。
 そしてもうひとつ今回の実践が秀逸なのは、単なる「ボディクリームの容器」に「猫の貯金箱」を応用した点だ。インプットの量と柔軟な応用力、この2つが合わされば鬼に金棒。それによりビジネス上の課題も、ときに思いもよらない方法で、ときにみんながハッピーな気持ちになりながら、解決されていくのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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