2017/08/17
川崎・武蔵新城駅にある知る人ぞ知る名店。濃厚味噌ラーメンをヒットさせた計算とは?
作りたい何かがあったら、そこに「自分だけの個性」を加えること。そうすれば、可能性はもっと広がっていく。
- 武井 哲也/麺小屋 てち
南武線・武蔵新城駅。周囲には閑静な住宅街が広がり、目立った商業施設などもないベッドタウンである。この駅から徒歩5分ほどの場所にある「麺小屋 てち」は、濃厚味噌ラーメンが専門という、少しマニアックなラーメン店だ。店主の武井氏は、IT関係から脱サラし、つけ麺の有名店でラーメン作りを学んだ。しかし、この店では修行先の技を封印し、全く違う味のラーメンを提供している。クリーミーでまろやかな味噌の味わいの奥に、濃厚なスープの旨味を閉じ込めた魅惑の一杯だ。その一杯にどのような思いが込められているのだろうか。
脱サラの怖さは全然無かった。「ラーメン」という「モノ作り」。
ーー武井さんはなぜ、ラーメン店主を目指そうと思われたのですか?
大学では情報工学科で情報通信技術の勉強をして、卒業後はIT関係の会社で開発の仕事をしていました。でも、仕事をする中で、「大きな組織だと自分が本当に作りたいものは作れないな」ってことに気付きはじめて、その一方で、小さい頃からモノを作ることが大好きで、「自分だけの何かを作り出したい」という思いもありました。そんな思いを抱えながらの仕事に悩んでいたのですが、ある時、部署異動の話があり、勤務場所も変わることになってしまったんです。それを機会に会社を辞めました。辞める時には「ラーメン屋をやろう」という決意は固まっていましたね。
出身が愛媛県なんですが、大学進学のために東京に出てきて初めて「家系ラーメン」というものを食べて、「都会にはこんなラーメンあるんだ!」って衝撃を受けました。それからずっと、いろんな店を食べ歩いていて。だから「自分で何かをやろう」と思った時にまず思い浮かんだものがラーメンでした。
武井 哲也
昭和50年香川県生まれ。小学校から高校まで愛媛県で過ごし、大学進学を機会に上京。学生時代から社会人時代にかけてラーメンの食べ歩きを重ねる。大学卒業後はIT企業に就職し、システム開発を担当。約10年の勤務ののち、ラーメン店開業を決意して退職し、都内の有名つけ麺店で修行を始める。その後「くり山」に移り、2年後の独立開業を前提に修行。「くり山」の定休日を使って、現在の店の源流となる店舗を火曜日の夜のみ限定で開くなど話題を集めた。約束通り、2年後となる2015年の7月に現在地に「麺小屋 てち」を開業した。
南武線「武蔵新城」駅南口から徒歩5分の場所にある味噌ラーメンの専門店。ほっこりとした優しい雰囲気の店内で、厨房では店主がひとりで働く。看板メニューの「みそら~めん」は、濃厚な白湯スープに愛媛産の麦味噌を合わせ、生野菜の紫玉ネギ、人参、大根、薄切りの豚肉、少し辛味を効かせた自家製ラー油を合わせた、優しくも個性派の一杯。その他にも「みそまぜそば」「濃厚担担麺」などマニアックなメニューを揃えており、ラーメンマニアを唸らせる実力店として知られるが、お客さんの大半を占めるのは地元在住のリピーター客。老若男女を問わず人気を集める、地元密着型のラーメン店である。
