雑誌への掲載が、経営が軌道に乗るきっかけになった

独立までは、ジャンルを問わずいろいろな料理にチャレンジしてきたという八木シェフは、アパレルショップでも勤務経験があるというユニークな経歴の持ち主。その八木シェフに独立へ向けてのアドバイスや、経営が軌道に乗るまでの苦労について伺いました。

独立を考えたのは22歳。実際に独立、開業したのは39歳。だけどベストなタイミングだった

ーー八木さんはイタリアでシェフの修行をされていたとお聞きしました。 　
高校卒業後、アルバイトで洋食屋やバーで調理を担当していました。その時に料理の楽しさを知りましたが、独学なので料理の基礎が分からず、調理技術にも限界が見えていたのも事実でした。そこで本格的にシェフへの道を志すために、イタリアンレストランに入り経験を積みました。その後は、将来の独立を視野に入れ、スキルアップのためにイタリアへ修行に行くことを決めました。
結果的にはイタリアへ行ったのは大正解でしたね。料理のスキルアップはもちろん、独立の方向性が明確になったので、独立への自信がつけられました。

ーーそもそも、独立はいつ頃から考えていたのですか？
独立を考えたのは22歳くらいの頃。本格的にシェフの道を歩みはじめてからです。周りの独立したシェフに話を聞いてみると、「何歳までに独立する」という目標を持っている方が多かったのですが、私は、年齢ではなく「一人前のシェフとしての自信が持てたら独立しよう」と決めていました。だから実際に独立を果たすのはずっと先のことです。
イタリアから帰国し、ふたつのレストランで料理長を経験したのちに、ようやく独立を果たします。この時点ですでに39歳。時間はかかりましたが、オーナーとしてもシェフとしても、しっかりと自信を持てたベストなタイミングで独立することができましたね。

タリア修行、帰国後料理長などを経ていよいよ独立！でも開業するための資金がなかった！？

ーーそれでは開業までスムースに進められたのですね
いえ、開業資金がネックでした。本格的に開業資金を貯めはじめたのは、イタリアから帰国して料理長になってからです。シェフは若手時代のお給料があまり高くないので、開業資金を貯めるのが遅くなってしまいました。そのうえ、私はお金に無頓着で（笑）。

ーーええ！それではどうされたんですか？
そんな状況を見かねてか、当時はまだ交際中だった妻がこっそりと貯金をしてくれていましたので、何とか開業資金の目途を立てられました。
それに物件探しも大変で、六本木や恵比寿など、あちこち探してまわりました。私は物件探しをレストランの退職後に始めたので、時間の都合がつけやすい反面、お金がなくなっていく焦りがありました。スムースに独立をするためには、退職前から物件探しをしておくべきだと痛感しました。

開業後、軌道に乗らず苦悩の日々。独立にひつようなのはバランス感覚

ーー実際にお店を開業してみて、経営は順調に進みましたか？
プレオープンのレセプションやオープン当初は、たくさんのお客様や知り合いにお越しいただいて、最高に幸せな時間でした。でもそこから半年くらいは経営が軌道に乗らず、焦りを感じることもありました。

ーーそれでどうされたのですか？
情報雑誌から取材のオファーをいただいたことが、大きな転機になりました。お店をアピールできる絶好のチャンスだと思い引き受け、それ以降もいろいろな雑誌で紹介してもらえるようになりました。記事を読んで足を運んでくださるお客様が徐々に増えていきましたね。メディア戦略を意識したわけではありませんが、結果的に経営が軌道に乗る足がかりになったと思います。

ーーこれから開業を予定している方へ何かアドバイスをお願いします。
独立には自分がやりたいことやお店のコンセプト、出店したい場所や家賃などをバランスよく考えることが大切です。そのバランス感覚を養うために、常にアンテナを張って情報収集する癖をつけておくべきことが大切です。
物件探しを例に挙げれば、気に入った物件が見つかったとしても、その物件が相場的に安いのか高いのかをジャッジできる材料を持ってないと、自分では決断できませんよね。普段からアンテナを張って集めた情報が、ベストな判断を導く材料になってくれるはずです。