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【小阪裕司コラム】第244回:「この店では売れない」は本当か

【小阪裕司コラム】第244回:「この店では売れない」は本当か

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

1800円のフルーツパフェ

 あなたが、ある地方の小さな町の郊外でカフェを営んでいるとしよう。周りには民家もまばらな立地だ。そこで普段出しているメニューはコーヒーとお菓子のセット。平均客単価はおよそ1000円。この店の売上を倍にしようと思ったとき、どんな手が考えられるだろうか。今回はそういうお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、あるカフェからのご報告だ。
 実際同店はあることを行って、次の月には売上が倍になった。その「あること」とは、フルーツパフェを売ったことだ。価格は1800円。こんな価格のメニューは売ったことのない店だった。しかし売ってみると、4人に1人がパフェを注文し、瞬く間にお店の平均客単価は1600円になった。しかも利用客も増えたことから、売上が倍になったのである。
 この取り組みのきっかけは、新しく入ったスタッフが、以前働いていた店で出していたようなパフェを出してみたいと思い立ったことだ。価格は1800円。こんなとき、あなたがオーナーだったらどう考えるだろうか。
 私の経験上、こういう発案に対する反応の多くは「そんなに高いものは、この店では売れない」というものだ。なぜなら店の平均客単価は1000円。それと比べて単価が高過ぎるし、周りの店でも売っていないからだ。事実、店主らは、パフェを売り出す前には多くの人から「このお店で1800円の商品を買う人はいないよ」と言われたとのこと。

思い込みが店のポテンシャルを狭める

 しかしそれは思い込みに過ぎないことが今回の例でも分かる。拙著『顧客の数だけ、見ればいい』にも、周りの人たちから「この町では1000円以上の定食は売れないよ」と言われ続けていた定食屋店主が、その助言(?)に耳を貸さず、旬の食材を使った高級ランチを1000円を大きく超える価格で出したところ大好評。ほとんどの利用客がそのランチを注文したというエピソードが出てくるが、間違った思い込みは店のポテンシャルを狭めてしまうのである。
 もうひとつ、先のカフェのポテンシャルの背景にはお客さんとの絆がある。同店には、必ずスタッフ全員がお客さんと会話するという方針がある。結果、お客さんはスタッフに会いに来る人がほとんどとのことだ。人はそういう店には、なおさらコスパを求めてはいない。「この店では売れない」、そう決めてしまうのはお客さんではないのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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