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【小阪裕司コラム】第238回:やるべきことをやりさえすれば①

【小阪裕司コラム】第238回:やるべきことをやりさえすれば①

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

「あえて」行ったオープン時の実験

 今年に入ってから世界情勢は不穏さを増し、今もなお不透明な状況だ。重ねて日本では様々な災害もあり、一層不穏な状況が続いている。そんななか、コロナ禍の頃の2つの事例を思い出す機会があった。今回はぜひ、それらを改めてお伝えしたい。
 1つ目は、ワクワク系マーケティング実践会員のあるパン屋からのご報告。新店開業の際、あえてワクワク系を使わなかったという話だ。
 なぜ、「あえて」使わなかったのか。実は店主はそれ以前、別の場所にカフェを開いており、そこではワクワク系を開業当初から活用、多くの顧客に囲まれて商売をしていた。ただ今回、新たにパン屋を開くにあたって考えた。「ワクワク系がすばらしいことは分かるが、やらなかったらどうなるのかを知らないので、本当にワクワク系をやったことの効果で今があるのかどうかが分からない」。なにせ彼女は先のカフェが初めての店。まさに「ワクワク系をやっていない状態を知らない」のだ。そこで次のパン屋では、ワクワク系の基礎である「絆作り」も「動機づけ」も行わないことにしてみたのだった。
 そうしてオープンから3か月、まずワクワク系を「何もやらない」時期を過ごしてみた。オープンしたのは5月。その後7月まで月間売上は伸びたが、一般的にパン屋の売上が落ちると言われる「魔の8月」を迎えると、売上はがくんと落ちた。そこで9月からワクワク系をスタートすると売上は持ち直し、11月からは客単価もぐんぐん上昇、その後コロナ禍が来たものの、業績は好調。1年が経ち、その年も当然「魔の8月」は来たが、昨対185%の売上となった。
 最初の3か月について、彼女の報告にはこうあった。「(ワクワク系をやらなかった時期は)入店のための動機づけは店の周りの看板だけ。店の中のPOP(店頭販促物)などは商品名だけ」「ニューズレターもセールスレターもなし。郵送はもちろん手渡しもしない。ショップカードもなし。お客さんとつながりを作るためのツールも、方法もなし」。そしてそのような店の状態を彼女はこう言った。「普通のパン屋」と。

いつ始めても遅くはない

 新店であれ、以前から営まれている店であれ、今日、経営を安定させ、商売を持続するためには、やらなければならないことがある。たとえそれが、以前からの常識では「普通でない」と見えることでも。それをやっていないところにコロナ禍のような災禍が来ると、商売はより厳しいものになる。しかし彼女の実験が示すように、いつからでもやり始めれば、また商売は上向いていく。もちろん、今からでも遅くはないのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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