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【小阪裕司コラム】第236回:「手芸店」で「お菓子」を売る②

【小阪裕司コラム】第236回:「手芸店」で「お菓子」を売る②

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

「あのせんべいあります」

 前回、手芸店にも関わらず、お菓子販売を始めた事例をお伝えした。既存客を集め、喜んでもらうことには成功した店主。元々の目的である“見込み客”との出会いのため、一計を案じた。すでに既存客にダントツで売れている、ある“せんべい”を使った仕組みを考えたのだ。
 それはシンプルに、店の前の通りに向け、せんべいを売っていることをアピールすること。実は、このこと自体が店主にとっては画期的なことだった。なぜならそれまで、彼にとって、「見込み客」とは漠然とした存在だったからだ。
 しかし今回はこう考えた。毎日店の前を何千、何百と通り過ぎていく車、それに乗っている人、そして歩行者。そのすべてを見込み客と考えればいい。菓子は誰にとっても身近なもの。店の前を通る人たちにとってもだ。「なので、お菓子を売っていることを、その“見込み客”に向けてアピールすれば、少なからず反応があるのではないか?と考えました」。
 ではどのようにアピールするか。そこで店主は、「あのせんべいあります」と10文字だけ書かれた特大ポスターを通りに向けて掲示するとことにした。歩行者はもちろんのこと、車で通り過ぎる人にとっても、一瞬で認識してもらうべく、複雑にせず、ストレートに10文字。これであれば一瞬で認識してもらえると考えたのだ。
 そして実際に行うと、大きな反響があった。「あのせんべいってなんですか?」と初めて来店する方が続出。掲示して数か月経っても引き続いた。なかには、「あのせんべいって何か確かめてきて!」と言われ、会社や家族などから任務を帯びて初来店する方、「手芸をやらないから一生入ることがない店だと思ってた」と言って初めて来店したおじいちゃん、などなど。連日新しい人たちとの出会いがあり、様々な会話があって、毎日が楽しいと店主は言う。そうして菓子部門は、販売を開始してから約半年で、店舗売り上げ全体の約15%を占めるまでになったのであった。

新しいお客さんとの出会いをどう作るか

 念のために言うが、ここでの学びは「お菓子を売れば売れる」「集客にはお菓子」ということではまったくなく、まして「あの○○」と書けば売れるということではない。ここでの学びは、新しいお客さんとの出会いの仕組みをどう作るか、旧来の商売の垣根、売る側の思い込みをどう越えるか、などのことだ。そして何よりこの取り組みがよいのは、彼が「お菓子好き」であることだ。先代から承継した商売と、自分の「好き」との融合。それは、自らの商売への情熱を一層高めることにつながる。そうして、唯一無二の“自分の商売”がより充実していくのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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