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【小阪裕司コラム】第15回:駅で重さ3キロのお地蔵さんが売れる理由2

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

売れるべくして売れた8万8千円のお地蔵さん

 前回、駅の展示スペースで、重さ約3キロ、お値段8万8千円の石のお地蔵さんが売れた実践をお伝えした。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある墓石店によるものだ。この結果に展示スペースの運営会社は「平均販売単価千円の場所で、8万8千円のお地蔵さんが売れるなんてすごい」と驚いたが、当の墓石店主は然るべき結果だと言う。実際のところ、彼は何をやったのか。
 前回お話ししたワクワク系の2つのハードル理論によれば、人はまず「買いたいか・買いたくないか」のハードルを越えないと「買う」ことはない。そこで店主は、スペースを覗いた方にまずこのハードルを越えていただくため、石のお地蔵さんにPOP(店頭販促物)を付けた。そこに書かれていたのは次の文章だ。「あるとホッとするお地蔵様。お墓の横に供養として置いたり、お墓のかわりとして自宅に置いたり、オブジェとしてお使いいただいております」。
 こう書いてあるのと、単に「〇〇石使用 石のお地蔵さん」と書いてあるのと、どちらがより「買いたい」となるだろうか? どちらが「買いたい」となる人の数が多いだろうか? 私はこのコラムでもよくPOPやダイレクトメールに書かれた文言の話をするが、それは文言が重要なのではなく、1つ目のハードルを越えていただくことが重要だからだ。
 さらに店主は、「買えるか・買えないか」のハードルを越えていただくところも考えた。この場合、8万8千円という価格もハードルではある。しかしもっとハードルになり得るものがあるが、何だと思うだろうか? 前回、この場所は「その場で買える」場所だと説明したが、ここで何がハードルとなるだろうか? そう。ものがものだけに、ここでのハードルは「持って帰れる重さだろうか?」という点だ。そう考えた店主は、POPにさらにこう書いた。「重さ3キロ。手で持って帰れます」。そうしてこのお地蔵さんに興味を持ったお客さんは2つのハードルを越え、「買う」となったのである。

「どうすれば売れるだろうか?」ではなく、「どうすれば買うだろうか?」を考える

 私たちワクワク系を実践する者が常に考えることは、「どうすれば売れるだろうか?」ではなく、「どうすれば買うだろうか?」。この2つは似て非なるものだ。そして、それには2つのハードルを越えてもらうこと。そこを考えれば、展示スペースの運営会社が言うような「すごい」結果も、狙って生み出すことができるのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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