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コロナ禍で「これまでの常識が通用しなくなっている」と言われるが、それは「これまでの商売のやり方が通用しなくなっている」と言い換えられる。消費者の行動が変化しているだけでなく、外食に対する考え方や価値観までがコロナ禍で大きく変わった。
それにいかに迅速に対応できるかが外食業の生き残りの鍵。新たにテイクアウトやデリバリーを始めるといった「売り方」の変化だけでなく、ポストコロナを見据えて商売そのものを見直す動きが次々に出てきた。そうした「うまくいっている商売替え」の最前線を追ってみよう。目次
- 【鶏料理居酒屋⇒餃子酒場】主力商材の総入れ替えで昼夜の営業に成功 『番町餃子道 小伝馬店』
- 【パスタ専門店⇒居酒屋】おひとり様需要の獲得で居酒屋業態に挑む『おでんトさかな にのや』
- 【和食バル⇒サムギョプサル専門店】 調理技術を必要としない業態転換が後のブームを捉える結果となった『韓国式豚焼肉 豚山食堂』
- 【中華食堂⇒芋菓子専門店へ】 月商50万円から月商950万円の繁盛店へと変貌した『高級芋菓子 しみず』
- 【昼だけハンバーグ専門店】 徹底的なイメージ戦略とブランディング構築で成功した『君のハンバーグを食べたい』
- 【朝だけマグロ丼専門店】 朝からマグロ乗せ放題で大ヒット『朝定食 まぐろ丼 いとおかし』
- 【居酒屋に唐揚げ専門店を併設】 食と立地のニーズにマッチしたことにより奏功した『元祖からあげ家 鳥いち 鹿児島谷山店』
- 【テイクアウト・デリバリー専門店を開発】 生産性重視のオペレーションでテイクアウト・デリバリー業態へ参入『伝説のすた丼屋 練馬店』
- この記事の監修
【鶏料理居酒屋⇒餃子酒場】主力商材の総入れ替えで昼夜の営業に成功 『番町餃子道 小伝馬店』
コロナ禍で大打撃を受けた業態の代表格が居酒屋だが、主力商材を変えて大衆的な業態に転換することで成功したのが東京・小伝馬町の「番長餃子道」だ。
鶏料理を幅広く揃える居酒屋「鳥番長」から2020年10月に業態転換した。経営母体の㈱バイタリティによれば「業態転換のポイントは“何屋か”をわかりやすく伝えること」とのことだが、そのために打ち出したコンセプトが「台湾の夜市」。
看板商品の「番長肉餃子」5個550円をはじめ73品を用意するフードメニューは台湾の屋台料理をラインアップ。店のインテリアでも提灯の装飾や夜市の写真を内壁全面に貼り付けるなどでコンセプトを表現した。
さらにユニークなのが餃子の提供法。にんにく胡麻油、ニラ醤油、辛味噌タレなど8種のつけダレをセットにしたアルミ製ホテルパンを提供し、餃子の新しい食べ方を提案している。屋台料理の麺とごはんものを組み合わせたランチメニューも好評で、全時間帯の集客に成功した。【パスタ専門店⇒居酒屋】おひとり様需要の獲得で居酒屋業態に挑む『おでんトさかな にのや』
首都圏で大衆酒場「屋台屋 博多劇場」などを展開する㈱一家ダイニングプロジェクトは2020年6月、東京・新宿のスパゲティ専門店からの業態転換で居酒屋「おでんトさかな にのや」をオープンした。
食事主力の業態から居酒屋への転換は時流に逆行しているようにも思えるが、ここでの狙いはコロナ禍で急増した「おひとり様需要」を吸収すること。
グループ店の「こだわりもん一家」の名物料理であるおでんと鮮魚料理をスライド活用しつつ、料理の小ポーション化でメニューの単品価格を500円以下とした。
アルコールの主力である日本酒も新政や而今、田酒といった人気の銘柄を揃え、90㎖の小グラスで提供することで中心価格を400円台と500円台に設定。料理3~4品と日本酒3杯で一人3,000円に収まるというリーズナブルさが女性客に受け、来店客の6割を20~30代女性が占めている。【和食バル⇒サムギョプサル専門店】 調理技術を必要としない業態転換が後のブームを捉える結果となった『韓国式豚焼肉 豚山食堂』
コロナ禍が直接のきっかけではないが、業態転換が結果としてニーズの変化に対応する結果となったのが東京・池尻大橋の「韓国式豚焼肉 豚山食堂」だ。
同店の前身はカウンター主体の和食バル。調理スタッフの退職により品揃えの維持が難しくなったことを受け、調理技術を必要としない業態に転換したが、これが奏功した。
同店のサムギョプサルは定番の豚バラの他に肩ロースやタンなど5種の豚焼肉をラインアップ。豚肉をサンチュに包むのも手ではなく箸を使ったり、サンチュやキムチ、ナムルなど11品が食べ放題のセット「パンチャン」を無料で付けるなど、徹底して現地のスタイルにこだわった。
さらに内外装のネオン管やテーブルウェア、商品名の韓国語表記などでも本場の酒場の雰囲気を再現。流行に敏感な20代女性など、新しい客層を開拓することに成功している。【中華食堂⇒芋菓子専門店へ】 月商50万円から月商950万円の繁盛店へと変貌した『高級芋菓子 しみず』
2020年10月に東京・築地にオープンした「高級芋菓子 しみず」は、中華食堂「スパイス食堂 サワキチ」からの業態転換。コロナ禍により月商50万円にまで落ち込んでいたこの店が、転換によって月商950万円という大繁盛店に変貌した。
同店の主力商材はサツマイモを使った芋菓子。焼イモはいま外食業界でトレンド商材になっているが、このブームに乗りつつ芋菓子専門店という独自のポジションを確立したことが成功の要因だ。
売れ筋は「和スイートポテト」8品各350円で、「贅沢『芋』パフェ」1000円、「しみずの芋プリン安納芋」500円などスイーツ30品も用意。さらに芋菓子の他に常時8種前後の焼イモを400~600円でラインアップする。サツマイモは季節に応じて18種を使い分け、収穫後に40日以上をかけて熟成。
これによって糖度を上げ、コンベクションオーブンで品種ごとに最適な時間と温度で焼きあげる。素材の味わいがストレートに伝わる焼イモを揃えることで、メニュー全体のクオリティイメージを高めているのだ。百貨店の催事出店や商業施設のポップアップ・ストアの業績も好調で、ブランド力を生かしフランチャイズ展開も考えているという。【昼だけハンバーグ専門店】 徹底的なイメージ戦略とブランディング構築で成功した『君のハンバーグを食べたい』
東京・新宿のイタリアンバール「DRA7」は、21年3月にランチ営業をスタート。メニューは「トリュフデミグラスハンバーグ」1,500円のみだが、1日50食が1時間で売り切れる大ヒットとなった。
黒毛和牛と三元豚の合挽肉を使ったパティ、トリュフの香りをつけたデミグラスソースいずれもランチ用に新規開発したもの。食器も夜営業からの転用ではなく、有田焼や萩焼といった和食器を新たに導入した。
さらに、ランチタイムだけ店の屋号を「君のハンバーグを食べたい」に変更している。単にランチも営業するというだけでなく、この商品を核としてブランディングに取り組んだことが成功の要因。ランチ営業開始の1ヵ月前からInstagramのアカウントに写真と動画を投稿し、店のコンセプトや商品開発のストーリーを発信したことも奏功した。
このヒットを受け、経営母体の㈱DREAM ON COMPANYではハンバーグ専門店の新業態も計画している。【朝だけマグロ丼専門店】 朝からマグロ乗せ放題で大ヒット『朝定食 まぐろ丼 いとおかし』
福岡・春吉の鮮魚居酒屋「魚ト肴 いとおかし」が2021年1月にスタートした朝食営業が大ヒットを飛ばしている。お客の目当ては看板商品「乗せ放題まぐろ丼」1,500円。
丼にはあらかじめ100gのマグロの切り身を盛って提供するが、その上にスタッフがマグロを、お客がストップをかけるまで乗せ続けるのだ。マグロは国産の生本マグロを使用し、赤身だけでなく中トロや大トロも惜しげもなく盛りつける。
当然のことながら同商品の単品原価率はきわめて高いが、主菜や刺身をセットにした単品原価率15%の「朝定食」1,000円がこれに次ぐ売れ筋となっており、トータル原価率は40%に落ち着いている。
営業中はお客の目の前でマグロ一本を解体するパフォーマンスも披露。出勤前の会社員や大学生、さらには主婦をはじめとする地元住民など幅広い客層を集客している。【居酒屋に唐揚げ専門店を併設】 食と立地のニーズにマッチしたことにより奏功した『元祖からあげ家 鳥いち 鹿児島谷山店』
鹿児島市の新興住宅街、谷山にある大型居酒屋「鳥門米門うまいもん。 鹿児島谷山店」は2021年2月、店の一画を改装し「元祖からあげ家 鳥いち(鳥いち)」をオープン。
併設スタイルで再スタートをきった。同店は2フロア計300坪373席という大型店で、もともと宴会需要を多く吸収する繁盛店だったが、コロナ禍で営業戦略の転換を迫られた。
そこで経営母体の㈱グッドフェローズダイニングは日常食としてのニーズが高い唐揚げに注目。㈲いのいちがフランチャイズ展開する鳥いちに加盟したのである。
唐揚げの売れ筋は「醤油・旨塩あいもりパック中」1,080円で、唐揚げは1個当たり鶏モモ肉60~65gを使用。11品を揃える弁当も人気で、ごはんは普通盛り200gの他、無料で大盛り300g、特盛り400gに変更可能だ。店は生活道路に面した十字路の角地に立地し、駐車場も12台分を用意。このアクセスのよさを生かして地域のニーズを吸収することに成功した。【テイクアウト・デリバリー専門店を開発】 生産性重視のオペレーションでテイクアウト・デリバリー業態へ参入『伝説のすた丼屋 練馬店』
コロナ禍を受けてテイクアウトとデリバリーの新業態に取り組む外食企業が急増しているが、その中でも大きな成果をあげているのが㈱アントワークスの「伝説のすた丼屋」だ。
2021年3月、東京・練馬にテイクアウトとデリバリー専門のモデル店となる練馬店をオープン。メニューはイートイン業態のものを下地にしながら、生産性を高めるための仕掛けを随所に取り入れた。
たとえば、イートインで提供するカレーの代わりにトッピングのアレンジで唐揚げ定食のメニューバリエーションを拡充。主力商品のすた丼も7品を揃えるが、とろろ、マヨネーズ、チーズなどトッピングの変化でメニュー数を増やしている。また、トッピングは別容器で提供する形をとって盛りつけ作業を簡略化。
バラエティを打ち出しつつオペレーションを効率化し、ランチのピークに1時間で80食の提供を可能にしている。この記事の監修
株式会社柴田書店/株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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