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「駅近くの物件で従業員を雇い、回転率を高めしっかり利益を上げる」というのも開業前の考え方のひとつとしてあります。しかし、このオーナーは初めての開業に際し、限りある予算の中で家賃と人件費を抑え、夫婦ふたりで切り盛りできる店にすると決意。阿佐ヶ谷駅から歩いて15分の店舗で開業します。東京・阿佐ヶ谷にあるビストロ「Bistro Sentiment」根本剛美さんにお話しを伺いました。
こちらの店舗物件に決めるまでの経緯を教えてください。
計画当初は東急東横線狙いだったんです。でも物件が全然見つからない。空き店舗があっても家賃が高くて……。そこで中央線沿いで探し始めました。まずは西荻窪。でも、ここも新規参入が多くて物件が見つからず、辿り着いたのが阿佐ヶ谷です。これまで阿佐ヶ谷には縁もゆかりもなかったのですが、物件を見たときに直感で決めました。
駅から歩いて15分という距離に不安はありませんでしたか?
駅から歩いて10分を超える物件は家賃が急激に下がるんです。もちろんリスクは高い。でも家賃が安いってことは開業するとき、経済的な縛りがある中では大事な要素です。駅近くで人を雇って、利益を上げてというのも考え方のひとつだけれど、最初は予算の中で店をオープンさせるから、僕たちは夫婦ふたりで回せる店というのが大前提でした。
それに、駅の近くだと不特定多数の人が来てしまって、その中には僕が狙っていない客層の人もいます。今はバルブームで、ビストロでもパスタやアヒージョを出したりするけれど、そうではなく、「自然派ワインとフレンチが食べたい」というお客様に来てもらいたかった。「あそこに行こう」と目的を持って店に来て欲しい。そのほうが単価は高くなるし、お客様を絞り込めるから、こちらもいいものが出せる。せっかくビストロに来たのに、チープなものを出してがっかりされたくないんです。阿佐ヶ谷の人は、安くて工夫されたものは食べ慣れているけど、飽きているアッパー層もいる。でもその人たちが「お金を出してでも美味しいものを」となったときには、都心に食べに行ってしまうんです。だったら、その人たちの受け皿になれたらと思っています。駅近だと家賃も高いから、どうしても利益重視になってしまって、そういう店づくりはできないかなと。そうなるとちょっと違うかなという想いもありました。駅から離れた場所にありますが、お店を知ってもらうためにどんなことをされていますか。
実はオープン当初は、阿佐ヶ谷の外からやってくる人がターゲットだったんです。だからグルメサイトの広告を出したりもしています。でも、実際に店を始めてみると阿佐ヶ谷の人たちに需要があった。あとは、荻窪や高円寺、中野あたりから来てくれる人が多いんです。そうなってくるとグルメサイトだけではダメで、地域のお客様の集客をどうするかということになる。SNSで自店発信をすることが多くなりました。今日のおすすめ料理とかをInstagramに載せてリアルタイムで宣伝する。オープンしてまだ8ヵ月ほど、知ってもらうためにスピード感ある情報発信を目指しています。すると、それを見た人たちが「あそこオープンしたけど行ったことある?」って、周りのお店で噂をしてくれたんです。助かりましたね。お客様同士の口コミで広がるっていうのは、店側としてもとてもありがたいです。
今後は、この店をどう展開していきたいとお考えですか?
やっぱり、商売としては一度、駅近の物件でやってみたいというのもあります。でも自分たちのブランドを立ち上げて、客層を固めるのはここがいいかな。ここでブランドが固まったら、駅近に移転も考えたい。ファンが付いた状態なら、心配だった利益重視で質を落とすということにもならないから。今後に向けて、しっかり基盤が作れる意味でもスタートはここでよかったです。
これから飲食店の開業を考えている方へアドバイスをお願いします。
独立・開業をしたいって考えている人は多いけれど、自分のファンを持っている人は少ないんです。オーナーシェフにでもならないと、なかなかシェフの名前ってお客様には知ってもらえないんです。そうなるとお店を出しても集客が大変。だからそこを補うためには自分で自分をプロデュースして、知ってもらうための努力が必要。今はSNSやネットがあるから、環境には恵まれています。これが10年前だったら大変だった。料理以外のところで、そういった時間を惜しまないということが大事かなと思います。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。Bistro Sentiment
阿佐ヶ谷駅から歩いて15分の場所に、2016年12月にオープンしたビストロ。定番のビストロ料理やフランスの地方料理とともに自然派ワインが楽しめる。全国各地から旬の素材を取り寄せ、その持ち味を壊さないよう調理。人気の「有機野菜と季節のフルーツサラダ」は、見た目も華やかで美しく、提供された瞬間、思わず歓声を上げたくなる。じんわり体に染み入るようなフランスの自然派ワインとのマリアージュを楽しんで。カウンター10席、6人掛けテーブル1卓の小ぢんまりした店内は落ち着きがあり、ハイクオリティの料理を気軽に楽しみたいグルメな大人にぴったりだ。
根本剛美
1981年12月生まれ、千葉県出身。都内のレストランやホテルでフレンチや和食などで20年の経験を積んだ。「初めての人でも気軽に楽しめるフレンチを」との思いで、2016年末にBistro Sentimentをオープンさせた。お客様とのコミュニケーションを大切にし、心地よい空間の店づくりを心がける。
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