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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
ダイレクトメール送付の一番の目的は「関係性作り」
今回は、前回の続き。顧客を増やすための具体的な取り組み、その取り組みの背景にあるカギは何か。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある化粧品専門店からのご報告だ。
前回はまず新規客にフォローレターを出している話をした。彼らは顧客との関係性作りを重視しており、あの一連の活動の目的もそこにある。そして関係性を深めるための次なる取り組みは毎月のダイレクトメール(以下、DM)である。
この店では毎月約2000通のDMを送付しているが、その目的は店主によると、一に関係性作り、二に教育、三にセールスだ。目的の第一に「関係性作り」が挙げられていることに着目していただきたい。毎月2000通のDMにかかるコストを考えると、DMの目的が目先の売上作りになりがちだが、彼らはセールスよりも関係性作りを優先している。ここがカギだ。
顧客との関係性が深まることが、結果的にセールスアップにつながると店主は言う。彼によると、セールやイベントの反応が高くなり、以前と同じイベントを打っても130~140%という反応が得られるようになった。以前はこちらから売り込んでいた商品も、お客さんのほうから相談に来るようになった。
同時に顧客の流出率が低下していく。ちなみに「流出率」とは、利用してくれていたお客さんが利用をやめてしまう割合のことだが、新規客の2年目以降の継続率は、2割近く改善した。こういう状況になると、流出客よりも流入客(=新規に獲得した顧客)の数が多くなり、毎年コンスタントに顧客名簿が増えることとなる。
DMの第二の目的・教育とは、顧客に役立つ情報を発信することだ。肌の手入れのテクニックや季節に応じたケア知識など、美容のプロとして情報提供する。これらはセールス以前に、顧客の知らないことを教える活動だ。こうして事前に情報を与え、教育しておくことが、DMの第三の目的、セールス時の好反応をもたらすのである。「商売に奇手奇策なし」
この種の、単なる売込みでないDMを毎月発行することは、肥沃な土壌を耕しているようなものだ。土が肥えているぶん、セールスをかければきれいな花が咲く。世の中、手っ取り早く売上を得ようとする風潮があるが、あなたなら、そういうお店から買いたいだろうか?店主も言うが、「商売に奇手奇策なし」。やるべきことを地道にやることが、結果的に着実な成果を手にすることになるのである。
この記事の執筆
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
小阪裕司
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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