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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
右肩上がりの売上を実現させた「顧客を作る」活動
今回は前回の続き。「顧客を作る」という活動の継続がどんな大きな結果を生むかを示す貴重な実例。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、紙の卸売業からのご報告。
2020年の3月頃、「トイレットペーパーが手に入らなくなる」といったデマ騒動で出来た通常の倍以上の売上に、ついに並んだ同社。しかも今回はデマではなく、価格競争や無理な納期を聞いての売上でもなく、自社の「顧客」を増やすことによって売上を積み上げてきての結果だった。報告書には月次の売上グラフが記載されていたが、一目瞭然。2020年3月と4月だけが突出し、その後半分以下の(元の)売上に戻っていたが、実践会に入会した2021年5月から、毎月の売上は右肩上がりに。そのまま失速せず今回の結果にたどり着いたのだった。
では、同社では何を行ったのだろう。「まず」と、同社の後継者である専務が言うには、「顧客への自己紹介」。これまで会社が取引はしていたものの、普段すべての取引先と接しているわけでもないため、ここで改めて「人として」挨拶を。そして毎月売り込みではないニューズレターを送ること。また、当会の異業種で、お客さんに渡す伝票などの備考欄や余白にメッセージを書いている例を見て、「これならうちでもできるかも」と、請求書の茶封筒にメッセージを入れるなど。できそうなところから実行し始め、次々と活動を広げていったのである。
そうして今、デマ騒動の頃(以下、以前)との商売状況を対比してみると、
「以前:誰が買ったか分からなかったvs今:分かる(リピート客激増)」
「以前:購入後の接触なしvs今:接触あり」
「以前:忙しかったvs今:余裕を持った納期」
「以前:リピートなしvs今:温かい声」
「以前:顧客名簿なしvs今:顧客名簿管理」などと大きな違いが生まれていた。そして何より「以前:売上が読めないvs今:売上が読める」ことが大きい、商売に不安がなくなったと彼は言うのである。顧客を作れば、顧客の動きもわかる
また、報告書には次の一節もあったが、「顧客を作る」活動の本質を明快に語る一文だろう。
「この活動を続ければ続けるほど、長いスパンで顧客データが取れることに気づきました。顧客ごとの購入頻度や単価が分かってきて、どの顧客に時間を注ぐべきか分かってきたような気がします。この活動は短期的に見るのではなく、長期的な視点で見ると素晴らしい効果を発揮していることが分かりました」。
この記事の執筆
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
小阪裕司
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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