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【小阪裕司コラム】第84回:こういう相手に出会ったとき

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

信頼から広がるビジネスチャンス

 今回はお客さんに買ってもらう話ではなく、「売ってもらう」話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、あるリサイクル・リユースショップからのご報告だ。
 同社いわく、「リサイクルはやはり買取が命」。たしかに、この業種では、買取が無ければ売るものがなくなる。いかに良い品を買取れるかは売上に直結する。それに関して今回、同社の中の一店舗での、次のような出来事の報告があった。
 ある日電話で、メーカーものではない電動自転車の買取依頼があった。他社にも電話し、メーカーものでは無いということで断られたとのことだったが、同店店長は快く出張買取に向かった。行ってみると、その方のお宅は高級住宅街の大きな家。自転車の買取自体はすぐ済んだが、いろいろ話をしているうちに家に上がらせていただくことに。そうして家に入ると、そこに電子ドラムが。実はこの店長、元プロドラマー。それをきっかけにさらに話が進むうち、このお客さんもバンドをやっていることが判明。そのライブの映像まで見せていただき、大いに盛り上がり、その方の家を後にした。
 するとしばらくしてまたこのお客さんから連絡があった。ミシンとギターがあるので見てほしいとのことで出向くと、著名ブランドのレアなギターがそこに。もちろん買い取らせていただいたが、さらにその後も連絡が。三度訪問すると、今回はその方のバンドメンバーも勢ぞろい。そして、彼らからも続々買取品が。さらに話をしていると、大手楽器店に下取り査定に出しているサックスがあるとのこと。それも見せて欲しいとお願いしたところ、後日大手楽器店から引き揚げてくださり、そのサックスも大手楽器店の下取り価格と同額で買取することができたという。

信頼できる店、任せられる相手になれるかどうか

 先ほど、この業種では「買取が命」という話をした。ゆえにこの業界では「他店より高く買います」という謳い文句をよく見るが、このお客さんにとって、同店に買い取ってもらいたい理由はそこではない。また今回、バンドメンバーからまで買取ることができたわけだが、このお客さんはメンバーに何と声を掛けたのだろう?
 最近改めて思う。買取に限らず、何かをお店に頼みたいとき、信頼できる店、任せられる相手、そういう存在にめっきり出会えなくなったと。だからこそそういう相手を見つけたとき、お客さんはどんな行動に出るか。今回の件は、実に示唆に富んだ出来事なのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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