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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
間違っていなかった価格設定
今回は、お客さんから、「高いけどおたくにしか頼む気にならない」と言われる会社のお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員からのご報告だ。
この会社の業種は「葬儀社」。社長によると、先日顧客から次のように言われたとのこと。「○○町のお葬式に行ってきたんだけど、なんかいろいろとダメね。〇〇(同社の社名)は流石ね。おたくのお葬式を経験すると他がダメに見えちゃう。高いけどおたくにしか頼む気にならないわ」。
この顧客、この 10 年に、自分の両親、嫁ぎ先の両親、兄弟の配偶者などで6 回も近い身内として同社を利用された方だ。ここまで経験があると葬儀のイロハも分かってしまうので、他社での葬儀に参列に行くと、どうしてもあちこち配慮不足が目についてしまうのだそうだ。
そういう目利きの顧客に「おたくにしか頼む気にならない」と言われるのはもちろん嬉しいことだが、彼が特に嬉しかったと言うのは、その言葉が、「“高いけど”おたくにしか頼む気にならない」だったことだ。先代のころから丁寧な仕事を心掛けた結果、同社は「高い」と噂されるようになり、それならば、と実際に他社より高い価格で営業してきた。ワクワク系と出合ったことで、その価格設定が間違っていなかったとお墨付きをもらえたと感じていたが、さらに今回のこの言葉だ。「やってきたことが間違ってなかったんだなーと嬉しくなりました」と、彼は言う。
また彼はこうも分析する。今業界は家族葬が増えており、いきおい単価も下がっている。しかし同社地域でも、伝統的な葬儀を望む方や、家族葬にしても、高くてもいい葬儀をしたいと思う方は少なくない。同社はそういう方とつながっており、またそういう方の葬儀に参列される方の中には同様の価値観を持つ人が多く、葬儀を通じて出会いが広がっていると。実際、同社は「高い」のだが、同地域において葬儀施行件数はトップなのである。丁寧な仕事はそれだけで価値がある
このような結果を生み出すポイントは、まず彼の言う「丁寧な仕事」にある。実際彼に聞くと、人手も手間もかかるだろう、丁寧な仕事振りがよくわかった。昨今、某自動車売買・整備の会社が世間を騒がせているが、あそこまでのことはないにせよ、どの業界でも丁寧な仕事は減って来ており、この先、丁寧な仕事はそれだけで価値あるものになる。そして、この丁寧な仕事が会社・お店にもたらすものは、売上だけではない。それは何か?この続きは次回に。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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