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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
同じ志の社員が自然に集まった葬儀社
前回、前々回と、直接の顧客ではない、子供たちの気持ちをも強烈につかんでいる、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の店の実例をご紹介した。そしてその秘密も。今回はそれらの話と本質を同じくする、こんな事例をお話ししよう。ある葬儀社での出来事だ。
ある日同社・社長にアポイントなしの来客があった。名刺を差し出してきたので何かの売り込みかと思っていると、「私、○○高校の進路アドバイザーの○○と申します」と、地元高校の関係者だとおっしゃる。何事かと思って聞いてみると、話はこう続いた。「御社で働きたい生徒がいます。そこで、御社が高卒求人を行うかどうか、確認にお邪魔しました」。
社長は目が点になったという。ただでさえ応募の少ない葬祭業。さらに、「田舎の小さな10 名程度の葬儀社です。こんな会社に新卒の応募が来るとは。そもそも、応募すら出していないのに」。
さらにはこの入社志望の生徒、同社の社用車に一部マニュアル車があることから、一般向けの求人には「免許がオートマ限定の方はご相談ください」と書いてあるのを見て、「マニュアルで免許取ります!」とまで言っているとのこと。
その生徒はなぜこれほどまでに葬儀社で、しかもこの会社で働きたいのだろう?その疑問は実に簡単に解決した。この生徒の志望動機について、その方はこう言ったのだ。「家族の葬儀で御社の葬儀場に参列した際に、ここで働きたいと思ったそうです」。
そういえば、と振り返ってみると、同社に現在アルバイトに来ているスタッフは、他県の実家で葬儀に参列し、葬儀社で働きたいと思った、大学院まで出た才女。最年少でミスなく業務をこなし、とても気が利くスタッフは顧客の娘さん。転職の際両親に、同社で働くのはどうかと相談して勧められたのがきっかけ。勤務先の業績悪化で転職を決意した、8月から勤務予定の20 代男性は、すでに両親を亡くしているが、同社での葬儀に感銘を受けたことが、同社への転職動機だ。社長は言う。「中小企業は、質の高い仕事をして、顧客と絆を作る。その絆の中から同じ志の社員が働きたいと集まる。こちらの流れのほうがミスマッチも少ないのではないでしょうか」。好きになれば、ここで働きたいとすら思わせられる
これは真理。お客さんはこういう店を好きになり、ここで働きたいとすら思う。人手不足が深刻になりつつある今日、示唆に富んだ出来事ではないだろうか。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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