全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
商品の価値を伝達できればきちんと売れる
今回は、「売れない商品がたちまち人気商品になる方法」についてお話したい。新著『「価格上昇」時代のマーケティング』にも通ずるお話だ。
ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある和洋菓子店から、「モンブラン」というケーキに関する実践をお聞きした。
同店ではモンブランを扱っている。その種類は、 栗、イチゴ、チョコレート、カボチャの4種類。一番人気は栗のモンブランで 、最も人気がないのが例年カボチャだった。その理由を店主は、「モンブランといえば栗というイメージがあるからだと思います」と言うが、おそらくそうだろう。ところが今年、同店ではこのカボチャのモンブランを多く売る必要が生じた。理由は誤発注。店主いわく、「よりによって、カボチャのモンブランを誤発注してしまったのです」。そこで、カボチャのモンブランを処分価格にせず売り切るために、ワクワク系的売り方を徹底することにした。カボチャのモンブランの価値創造だ。
まずは、本品の「価値」を掘り起こした。単に並べておいただけでは例年通りの結果となり、誤発注した今年は多く売れ残ることは目に見えている。何か「価値」を訴求しなければならない。
あれこれ考えた結果、次のような「価値」を訴求することにした。カボチャの旬は、本当は夏だ。ただ、 ハロウィンが日本にもかなり定着してきたことから、カボチャには10月のイメージもついてきている。そこで考えた訴求点は、「今はまだ夏なので、カボチャのモンブランで秋を先取りできる」。よし、これで行こう、となった。
次にこの価値を伝達する手段として、POP(店頭販促物)を作り、お客さんが入店してすぐ目につく位置に配置した。
そうした結果、それまでは「カボチャのモンブランは要らない」と言われたり、実際売れなかったのが、今回は「カボチャのモンブランをください」と指名買いするお客さんが続出した。そうしてめでたく今年、カボチャのモンブランは人気商品となったのだった。
どんな商品でも売れる可能性を秘めている
店主は言う。「こうなってくると、お店にある商品は、価値創造をしてきちんと伝えれば、どんな商品であっても、 どんどん売れていく可能性を持っていることになります。ある意味、楽しみですね」。私のこれまでの経験上、実際そうだ。それは、ほとんどのお店や会社が持つポテンシャルであり、これからの楽しみなのである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
