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老舗や名店など、利益が出ている飲食店であっても、後継者がいないことで閉店を選択するケースが増えています。後継者不在の問題は、多くの飲食店が抱える重大な問題です。
この記事では、事業承継・事業譲渡といった選択で「後継者問題」を解決し、お店の味を後世に伝えるための方法を解説します。後継者問題にお悩みの飲食店経営者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
多くの飲食店が抱える「後継者問題」の現実
飲食店の多くは、「後継者問題」を抱えています。少子高齢化の影響で、子どもがいない飲食店経営者も多いです。子どもがいても、ライフスタイルの多様化などの影響もあり、店を継がないという選択をする子どもも多くいます。
ここでは、多くの飲食店が抱える「後継者問題」の現実について、深掘りしていきます。
■日本企業の後継者不在率は61.5%
帝国データバンクの調査によると、2021年の日本企業における「後継者不在率」は61.5%でした。コロナ下において数字は改善傾向にあるものの、それでも6割以上の企業で後継者が不在という深刻な状況が続いています。
つまり、飲食店だけでなく、日本企業全体が深刻な「後継者問題」を抱えているのです。後継者不足で代替わりができないために経営者の高齢化も進んでおり、「後継者問題」は今後も日本企業における大きな課題となることが予測されます。
参照 帝国データバンク 全国企業「高齢者不在率」動向調査(2021年)
■飲食店などサービス業の後継者不在率は66.5%
飲食店などが含まれるサービス業では、後継者不在率は全体の数値を上回る66.5%となっています。飲食店では、他の業種と比べて、さらに深刻な「後継者問題」に直面しているといえます。
「後継者問題」が解決できなければ、飲食店は閉店せざるを得ません。実際、「後継者問題」により閉店する飲食店は多くあり、利益が出ていない店舗だけでなく、老舗や名店と呼ばれる飲食店の閉店も珍しいことではありません。
飲食店がお店の味を後世に伝える3つの方法
飲食店が「後継者問題」を解決し、お店の味を後世に伝える方法は次の3つがあります。
・事業承継
・事業譲渡
・のれん分け
事業承継とは、親族や従業員などが後継者としてお店を引き継ぐことです。事業承継は、家業として事業を継続させることができるため、常連さんにも受け入れてもらいやすい方法といえるでしょう。一方で、後継者が不在であったり、実力不足であったりする場合には、実現が難しいという問題もあります。
事業譲渡とは、企業や第三者にお店を売却することをいいます。自分の手からは離れてしまいますが、お店自体は存続させることができますし、売却によって資金を得ることも可能です。大手グループの参入などによる競争の激化への対抗手段としても有効な方法といえます。
しかし、事業譲渡を行うと、経営者としての立場はなくなってしまうため、お店の看板や味が守られるとは限りません。経営者の顔で商売をしている店などでは、常連さんや仕入先などからの理解を得ることも難しいかもしれません。
のれん分けとは、従業員が独立してお店を開く際に、お店の屋号の使用を認めることです。弟子がお店の屋号、味を引き継いでくれれば、お店の味を後世に残すことができます。ただし、本家が後継者不在で廃業してしまった場合にブランド力を維持できるのかという問題があります。飲食店を事業承継するには?
事業承継の具体的な手続きとしては、大きく分けて次の流れになります。
(1)後継者を決定する
(2)後継者を教育・育成する
(3)事業、財産の移転を行う
後継者が親族である場合は相続を視野に入れた財産の移転を行い、従業員である場合は贈与を中心として財産の移転を行うことになるでしょう。
金融機関などでの負債があるときには、後継者に名義変更できるかは大きな問題となります。また、贈与によって財産を移転させる場合は、贈与税に注意が必要です。
承継手続きに時間をかけることができるのであれば、暦年課税制度を利用することで、贈与税を抑えて財産を移転させることができます。
飲食店を事業譲渡するには?
事業譲渡の具体的な手続きとしては、大きく分けて次の流れになります。
(1)譲渡先を決定する
(2)諸条件の調整を行う
(3)事業譲渡契約を締結する
(4)事業、財産の移転を行う
事業譲渡を行ううえで最大の壁となるのは譲渡先を見つけることです。逆に言えば、譲渡先さえ見つけることができれば、引き継ぎ先の育成・教育などは必要ないため、スムーズに引き継ぎを進めることができます。
後でも紹介しますが、事業譲渡の譲渡先を見つけるには、M&Aのマッチングサイトなど多くの方法があるので、上手く活用して譲渡先を見つけるようにしましょう。
事業譲渡によって譲渡益が生じた場合、譲渡所得として所得税の課税対象となることには注意が必要です。
事業譲渡で事業、財産の移転を行うには、個別の移転手続きが必要となります。従業員については改めて雇用契約を締結する必要がありますし、仕入先の買掛金や売掛金を引き継ぐ場合にも個別に契約を締結しなくてはなりません。
飲食店をのれん分けするには?
飲食店ののれん分けは、弟子の独立を認め、屋号の使用を許諾することで行われます。この場合、契約書などを締結しない例も多くあるようですが、後にトラブルとなることを避ける意味でも契約書は必ず作成するようにしましょう。
のれん分けの際の決めごととしては、次のようなものが考えられます。
・競業避止義務について
・保証金、ロイヤリティについて
・違約金について
のれん分けを認めた弟子との間でお客の取り合いとならないために、競業避止義務は課すべきです。保証金やロイヤリティを求める場合は、その内容も契約書に明記しておくことが重要です。お金の問題については、口約束で決めておくとトラブルを招く大きな原因となります。
他には、本家のブランドを傷つけるような行為があった場合の違約金についても契約書で決めておくのがよいでしょう。
事業承継・事業譲渡を推進する支援制度
「後継者問題」は飲食業界だけでなく、日本企業全体における問題で、国としても大きな課題として認識されています。そのため、事業承継や事業譲渡については、国の支援制度も用意されています。
■事業承継・引継ぎ補助金
コロナウィルスの影響が懸念される中小企業に対して、事業承継・事業譲渡のための費用を助成するものです。
買い手と売り手の双方が助成の対象となっており、外注費や廃業費用などの助成を受けることができます。引き継ぎ後の廃業費用が懸念される場合や、事業承継・事業譲渡を進めるのに士業などの利用を考えている場合に活用が期待されます。
■事業承継支援助成金
事業承継や経営改善を実施する過程において、外部専門家を活用する場合、その経費の一部を助成するものです。
補助金については、募集期間が限定されているもの、自治体が実施しているものもありますので、実際に事業承継を検討される段階で、活用できる補助金がないのかを確認してみることをおすすめします。
事業承継・事業譲渡の相手を見つける方法とは?
事業承継・事業譲渡を進めるうえで最大の課題は、相手を見つけることです。事業承継・事業譲渡の相手を見つける方法としては、主に次の4つが挙げられます。
・親族、従業員の中から候補を探す、打診する
・事業引継ぎ支援センターに相談する
・M&Aのマッチングサイトを利用する
・M&Aのコンサルティング会社に相談する
親族や従業員の中から後継者を見つけられるのであれば、それがベストな方法といえるでしょう。しかし、飲食業界は深刻な「後継者問題」を抱えており、この方法で後継者を見つけられる飲食店は多くありません。
それでもお店の味を後世に残したい場合、事業引継ぎ支援センターなど、外部の機関を利用して後継者を探すのが現実的な方法となります。
事業引継ぎ支援センターは国が設置する公的相談窓口で、全国の都道府県に設置されています。相談料も無料なので、後継者問題の解決にお悩みの方はまずは相談してみることをおすすめします。
「後継者問題」解決には早くからの準備が重要!
飲食店がお店の味を後世に伝える方法についてまとめました。「後継者問題」は飲食店だけでなく、日本企業全体が抱える問題です。
老舗や名店などの味が引き継がれることなく消えていくのは、お店にとってだけでなく、顧客や飲食店にかかわる多くの人にとって大きな損失となります。
「後継者問題」は積極的に取り組まなければ解決が難しい問題で、時間をかけて検討・推進すべき問題です。この記事を参考に、「後継者問題」に直面している飲食店の方は、引き継ぎのための準備を1日でも早くはじめてみてはいかがでしょうか。
ライター:伊藤実
元弁護士の経験を活かし、労務問題・企業法務・企業間トラブルにまつわる法律問題を中心に執筆活動を行う。弁護士時代には、企業法務、労務問題、交通事故、離婚など多数の案件を解決。読者のお困りごとに寄り添う記事をモットーに執筆に取り組んでいる。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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