わずか6日で学んだラーメンが雑誌に取り上げられる有名店になった理由

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中華そば たま河
太田吉紀

東京都府中市矢崎町4丁目1 大東京綜合卸売センター内

エリア
東京府中本町
業種
ラーメン店
ロケーション
ベッドタウン
ターゲット
大人向け
業界経験
3~5年
開業時の年齢
40代
目標月商
~100万
開業資金
500~1,000万
坪数
10坪以下
家賃
20万以下

開業を目指すきっかけ

太田さんが、そもそもラーメン店をやろうときっかけは何だったのですか?
ラーメンが好きだったからですね。
私自身は好きなことしか仕事にできないタイプで、学生時代は音楽が好きだったので、レコード会社に就職しました。営業や販売企画をやっていて充実はしていたのですが、2009年にレコード会社の統廃合があって、ひとまず転籍したのですが、2012年末に早期退職しました。少し休んだ後、働かないのも子供に対して顔が立たないと学生時代にアルバイトをしていたファストフードのハンバーガー店に再就職しました。店長をしていたのですが、飲食業で働くなら、やっぱり自分の店をやったほうが楽しいだろうとラーメンでの独立を考え始めたんです。あとは自分の人生計画として、今50歳なのですが、70歳まで続けられる仕事をつくるには、自分の店を開業するのがいいなという気持ちはありましたね。
ラーメン店での勤務経験はありましたか?
勤務経験が無かったので大和製作所という香川の製麺機メーカーがやっているラーメン学校に通っていました。日本の麺文化を育てましょうという趣旨でやっている6日間の授業で、50万円弱かかるのですが、終わった瞬間には「安っ!」と思ったくらい充実した内容だったんです。知識として、ラーメンを極限まで細分化して教えてくれるので、こうすればこういうラーメンができるんだというベースが理解できました。
調理未経験だったということは、実質の修業期間が6日で、ここまでのラーメンができるというのはすごいですね。
学校としても2~3年修行する時間は無駄だっていうポリシーでしたから、自分には最適な場で学ばせてもらったと思います。それに、卒業後も試作に行ってもいいというシステムだったので、店のコンセプトを固める際にも協力していただきました。

開業準備での課題と解決方法
(物件探し・資金集め, etc.)

開業準備としては、何から始めたんですか。
まずは物件探しでした。これが一番難しかったですね。府中限定という狭いターゲットだったことも影響していたと思います。ワンオペ前提で考えていたので、理想としては、6~7坪くらいで8席ほどのL字カウンターが理想だったのですが、昨年は店舗物件そのものが不足している状況でしたし、ラーメン店に使える物件のハードルの高さもありました。立地の良いマンションの1階の飲食店用の物件は、匂いの問題で、重飲食OKでもラーメンはNGっていうところも多いですし…

見つけたこの店の立地ですが、駅から近い立地でもないですし、市場内という特殊な環境なので決めていいのか、かなり悩んでいたんです。

物件が決まらないまま、2019年6月にラーメン学校を出て、8月に勉強のため、泊まり込みで福島の喜多方に行きました。喜多方では食生活のなかにラーメンが根付いているので、朝食からラーメンを食べる「朝ラー」も一般的だったことに、市場だったら、「朝ラー」もアリか。とひらめいたんです。ちょうど9月にラーメン学校が東京で開催されるというので、レシピだけ考えて、朝にこういうラーメンを出すのはどうでしょう?と相談してみたら、「これは全然アリでしょ」と講師に後押ししてもらったんです。その時に、市場の中でこのメニューでっていう店のコンセプトが確立したと同時にこの立地に決めようと思いましたね。

中華そば たま河 店主

開業資金に関してはいかがでしたか。
実はレコード会社の早期退職金に手を付けていなかったので、小さな店であれば、自己資金で十分まかなえたんです。
ただ、最終的には政策金融公庫に融資を受けることにしました。
お金周りに関しては、ほぼ素人だったので、そういったノウハウは、USENのセミナーなどに参加していく中で受けたアドバイスがあったおかげだと思います。事業を始めれば、いつ何がどうなるかわからないのでキャッシュフローが安定していたほうがいいですし、必要なければ一括返済もできるということを教えてもらえました。関連して、融資を受けるための事業計画の書き方などのアドバイスも非常に役立ちました。私の場合、ラーメン店の実務経験がないですし、ファストフード店でオペレーションに関しては実務を積んでいましたが、飲食業での経験も6年未満という扱いになるので、公庫の要件として外れてしまう可能性もありました。それに対して、ラーメン学校できちんと学んだ、ファストフード店では正社員だった、自己資金もしっかりある、借りる金額も満額ではないという点を強調して、事業計画書を作成したことで、すんなり審査は通りました。

開業後の気づき/今後の課題

昨年12月にオープンして、年明けにコロナ禍に見舞われたわけですが、順調に推移しているそうですね。
はい、開業前に想定していたより良い結果で進んでいます。
通っていたラーメン学校で宣伝・販促は軌道に乗ってからやることだと教えられて、私自身も納得していたので、とくに売り上げや集客に対して、意識的に対策をしたわけではないんです。私自身はこれまで調理経験がなかったこともあり、今はとにかく一杯一杯丁寧に仕上げることを最優先に考えていただけでした。
とはいえ、店が成功するためには、一般的に商品力と立地、宣伝・販促などが必要ですよね。『たま河』さんの場合、意図的ではなかったとしても、うまくいく要因は何かあったのでしょうか。
宣伝の部分で言えば、2020年初頭に何人か著名なラーメンブロガーの方が来てくれて、好意的なレビューを書いてくれたことですね。
彼らの評価を参考にしている、週末に食べ歩きをしているラーメン好きな方に、朝ラーが食べられる店として認知されたことで、かなり楽になりました。
ただ、これはまったくの想定外のラッキーな出来事でした。
うちは、「大東京綜合卸売センター」という府中の市場のなかにあるので、朝7時から営業しているのですが、ラーメンの食べ歩きをなさっている方は、1日3~4杯食べるわけですから、朝食を使える店は、意外に盲点だったのかもしれません。24時間営業でなければ、この時間帯に営業している店は珍しいですからね。

加えて、周囲にマンションがある住宅街だったので、外出自粛の期間でも、リモートワークの方々が結構いらっしゃったということにも助けられました。人が少ない午前中に市場で買い物したついでに、「せめて、これくらいは外食していいよね」と立ち寄ってくれる親子連れのお客様などが、定期的に通ってくれるようになったことは追い風でした。

ただ、その分、外食自粛ムードの影響やコロナ禍前に少なからずいた近隣の「府中 郷土の森」へ行ったついでに立ち寄ってくださるお客様は激減しましたので、どっちが良かったのかはわかりませんが、想定していなかった需要で補えましたね。
開業してから、準備期間にこうしておけば良かったという反省点はありますか。
新型コロナとかいろいろ想定外なことはありましたが、オペレーションや販売管理などに関しては、しっかり計画は立てていたつもりで、大失敗はしないだろうと考えていたので、準備期間での後悔はほとんどないですね。細かなことで一つあるのは、オープン時に食洗器が使えなかったことくらいです。厨房機器と内装で違う業者さんに頼んでいて、両社の連携の問題だったのですが、言った言わないの話になってしまったので、きちんと議事録をとっておけば良かったですね。
逆に、やっておいてよかったということは何でしょうか?
開業した気づきとしては、ラーメン店の運営にも、前職のファストフードや、前々職のレコード会社の販売企画の仕事の経験が役に立っていることが多かったということですね。料理に関しては、経験による勘には頼れないので、何をやればベストな一杯がお客様に出せるかという10秒単位のフローチャートを作って、それに従ってやっています。これは、ファストフードでスタッフのタスクを管理するやり方を応用しています。仕入れや売り上げは、レコード会社での販売企画でのフォーマットづくりのノウハウを応用して、一目で現状がわかるようにエクセルで管理しています。青色申告会に勘定項目の振り分けのアドバイスをもらえば大丈夫なくらいで、年数万円の会費だけで、税理士を頼む費用も浮きました。
今後の店の展開に関しては、どのようなプランを持っていますか?
今よりもっと効率化したいと考えています。
そもそも店の知名度を上げて、行列のできる店にしたいとか、多店舗経営したいとか、そういった目標はまったく持っていませんので、それよりも、お客さんが同じ時間帯に集中して待たせてしまったり、逆に空いてしまったりというムラをなくす仕組みを追求したいな、と。
これまでのデータを分析しながら、そのムラをなくせれば、来ていただいたお客様の満足感が上がることに繋がるはずです。繰り返しになりますが、調理経験が少なく、無理のきかない私が、最良の状態の一杯をお客様に出すのをキープし続けることが最優先というのは変わっていないですね。
中華そば たま河
  • 東京都府中市矢崎町4丁目1 大東京綜合卸売センター内

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