住宅街でも勝機を確信。開業前の定点観測とコロナ禍での開業を成功させた経営戦略
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- 焼鳥酒場 鶏のから騒ぎ
- 山田耕路
東京都板橋区弥生町31-15瀬戸ビル1階
- エリア
- 東京中板橋
- 業種
- 焼き鳥店
- ロケーション
- ベッドタウン
- ターゲット
- 大人向け
- 業界経験
- 5~10年
- 開業時の年齢
- 40代
- 目標月商
- 300万以上
- 開業資金
- 1,000万~1,500万
- 坪数
- 10~20坪
- 家賃
- 30~40万以下
開業を目指すきっかけ
- 開業のきっかけについて教えてください。
- 飲食業界に身を置いていた期間は長くて、店長や料理長などを務めていたこともありますが、開業前は病院や介護施設を経営する医療グループの本部で給食に使用する食材のバイヤーを担当していました。
開業を具体的に考えたきっかけは年齢。1年前に47歳を迎えた時、急に定年を意識するようになったんです。
当時、関わっていた給食産業は外食産業と違って、生産から消費までを自分の目で確認できず、「ごちそうさま」の最後の瞬間まで見届けられないのが、何となく物足りない部分ではあったんですよね。じゃあ、どんな形なら納得できるのか、そのときに浮かんだのが社会貢献でした。
ただ、社会に恩返しするにしても、自分には飲食業の経験しかない。貧困など不遇な状況に置かれている子どもたちをニュースで目の当たりにして、「自分のキャリアを生かすなら、子ども食堂だ!」と思い立ったんです。
それには原資が必要。最終的なゴールは「子ども食堂を」つくることですが、それを実現するための手段として開業を決心したんです。
開業準備での課題と解決方法
(物件探し・資金集め, etc.)
- 「自分の店を持とう」と決めた後、どのように行動されましたか。
- USENのセミナーをはじめとする開業セミナーに片っ端から参加しました。店のオペレーションは経験あるけど、経理や人事、総務といった事務作業は全くの素人。しかも物件もどう探せばいいのかわからない状態だったんです。
とにかく、「分からないことが分からない」状態。開業セミナーに参加したことで、そんな分からない部分をひとつずつ埋めていくことができました。
- 「焼鳥酒場 鶏のから騒ぎ」は東武東上線の中板橋駅から徒歩1分と好立地ですね。立地について何かこだわりはあったのでしょうか。
- 当初は、駅前の、できれば1階で10坪前後の居抜き物件を希望していたので、池袋駅周辺を探していましたが、理想とする物件がなかなか見つからない。やむなく池袋から離れて、中板橋駅周辺にターゲットを絞り、今の物件を決めることができたのですが…駅近ですが、飲食店が圧倒的に少ない住宅街なんですよ。だけど駅前で定点観測すると1時間に800もの通行人を数えることができた。その中から5%でも来てくれる人がいれば勝機があるかもしれない。そう感じられたことが物件選びの決め手になりました。それに飲食店が少ないからこそ、ファサードで目立つことができますしね。
看板の位置は通行人の目につきやすいよう設置する工夫をしています。
- 開業資金はどう工面されましたか。
- 日本政策金融公庫で最大1,000万借りられた事例があると知って申し込みました。事業計画書はセミナーを介して知った専門業者の方に作成してもらい、満額回答で無事に借りることができました。開業資金はトータルで1,300万円を用意。このうち300万円が自己資金で、返済能力ありとみなされたんです。
借り入れをしておいた方が将来的な信用も得られますし、何にせよ新型コロナの影響もあったので、結果として融資を受けておいてよかったですね。
開業後の気づき/今後の課題
- 当初、オープンは4月を予定されていたそうですが、新型コロナウイルスの影響で延期を余儀なくされたそうですね。
- ひとまず4月はランチ営業だけやっていたのですが、グランドオープンは5月7日に延期しました。ただオープンしたとは言え、自粛要請真っ只中でしたので、夜の営業は16時から19時まで。同時にテイクアウトも始めています。惣菜1パック350円で出していましたが、3パック買ってくれたら1000円でいいよと。テイクアウトは唐揚げなど総菜が1パック350円、焼き鳥5本で500円、煮込み500円といった3つのラインナップでまわしていました。テイクアウトだけで1日平均4~5万円の売り上げがありましたが、夜営業よりも売上は良かったですね。
- テイクアウトのオペレーションが上手くいった要因は何だったのでしょうか。
- ひとつにお弁当を出さなかったことがあるかもしれません。依頼は多かったのですが、うちには家庭用炊飯器しかなく、ごはんものは諦めていました。それにより余計な手間が減り、揚げ物と焼きに集中できたんです。15時から調理して16時から販売、品切れになれば、どんどん追加していました。デリバリーについては業者からも提案を受けたし、そのための補助金申請も考えたけど、手間暇など考慮した結果、自店のテイクアウトだけに絞りました。自粛要請が解除された6月以降は、さすがにテイクアウトの売上は減りましたが、毎日通ってくれるお客さんもいるので止め際が難しいのが正直なところです。やはり店内で食べて欲しいという気持ちはありますし、お酒が出ないと利益が出にくい部分もありますしね。
- 「鶏のから騒ぎ」のこだわりのひとつに、他店では見られないようなお酒のラインアップがあるそうですね。
- こだわりは焼酎なのですが、芋と麦に絞り、50種類用意しています。こんなに揃えているお店は中板橋にはそうないかもしれませんね。これも他店と差別化するためです。僕自身が好きなワインも用意しているのですが、実は仕入れ価格が500円と破格。だから提供価格もプラス500円上乗せしているだけ。
その代わり、ボトルのみの販売で、飲み切れなければ持ち帰りOK。ボトルキープはしません。
これだけ種類があると、制覇してみたい! という焼酎好きは多いんです。
うちではコンプリートカードを作成して、制覇した方にはプレゼントを贈呈しています。ランチにもコンプリートカードをつくりました。昼の営業はラーメンを提供しているのですが、5杯食べたお客様にはトッピングの無料サービスをしています。
こうしたカードって埋めたくなる心理が働くんですよね。ちなみランチメニューは鶏そばのみ。塩と醤油を日替わりで交互に出しているので、どちらかの味を気に入ったら次回は違う味を試してみよう、という来店動機に繋がるし、こうしたアイディアもすべて戦略です。もともとは、カウンターとテーブルだけのそう広くはない店なので、一人で店を切り盛りしようとしていたけど、せっかくなら席数目一杯つくって売上を立ててやろうと。事業計画書ではよく見積もって月180万円を売れればいいかなと考えていたのですが、このまま順調にいけば300万に到達する見込みです。
- オープンはずれこんでしまいましたが出足は好調ですね。次なる目標について教えてください。
- 売上が維持できれば、もう1店舗出したいんです。できればドミナント戦略で。近隣に出すメリットは従業員が欠勤した場合でも、近いと応援でフォローできますし。ゆくゆくは多店舗展開をして、正社員雇用制度を取り入れるつもりです。社会貢献を目指した開業ですので、シングルのお父さんやお母さんの雇用につなげたいという目標もあるんです。今は個人事業主ですが2年間は税制優遇を受け、3年目から法人化します。これも開業セミナーで学んだことです(笑)。
- 現状の経営課題についてはどうお考えですか。
- 店の認知をもっと上げていくことですね。「ヒトサラ」などグルメサイトへの掲載も欠かせないと考えていますし、チラシも1万枚ほど配布しましたが、その反応を待っている段階です。他にもアイディアはあって、500円で提供している生ビールの値段を250円でやろうかなと。狙いは中板橋で一番安いビールの店にすること。ただ、生ビールばっかり出てしまうと赤字になってしまうのが悩みどころなんですけどね。競合の居酒屋は180円で出しているのですが、とりあえず生ビール飲みたいなと思った時、お客さんは安い店を選んでしまう。大手チェーン店も多いですし、今は新型コロナの影響もあるから、あらゆる対策を立てる必要があると考えています。そのためにも、販促費は惜しまず使います。経費も後ほど補助金で補填できますからね。