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趣味をビジネスへと昇華させた、国内唯一の桜貝アクセサリー専門店
売り上げをデータ化して根拠を作る。これが職業作家と趣味作家の違い
- 陸門 浩行/Lino Drops Kamakura
趣味から職業へ。国内唯一の桜貝アクセサリー専門ショップ、Lino Drops Kamakuraの陸門浩行さんにインタビュー。商品化への道のりや、ビジネスへ繋げることの大切さ、そしてこの鎌倉という地を選んだ理由など、さまざまなことをお聞きしました。
特許申請中の桜貝のアクセサリー。趣味から職業へ、そして唯一無二の存在へ
ーー桜貝専門のアクセサリーショップはとても珍しいそうですね。
国内外で専門店はほとんどないと聞いています。このお店は友人と立ち上げたもので、彼女は製作、僕は販売と運営の担当です。関東近郊の海岸で桜貝を拾えるのは鎌倉の由比ヶ浜と材木座海岸くらい。青森出身の彼女にとって、この貝は憧れで集めていたのですが、僕から「桜貝で何か作ったら?」と提案してみたことがきっかけで、アクセサリーを作るようになったんです。
店を持つ前はふたりとも会社員でしたし、彼女が桜貝のアクセサリーを作り始めた当初はまだ趣味レベルで、ハンドメイドのイベントに売りに行ったりしていたんですよ。対面販売をスタートしたのは3年前。通常の店舗ではなく、とある店の軒先をお借りして始めたのですが、売上も順調に伸び、正月やGWなど鎌倉が繁忙期でない時期でも売り上げがさほど落ちなかったんです。これならやっていけるという手応えを掴み、「Lino Drops」だけで生計を立てられるようになったんです。ーー桜貝の見た目は美しい反面、貝そのものが薄く脆いですよね。商品化することは大変ではありませんでしたか?
桜貝のアクセサリーってあることはあるんですが、脆いまま作られているので観賞用がほとんど。だから普段使いさせることは、ひとつのイノベーションだろうとビジネス展開を何となく意識しながら、ありそうでないものを作ってみようとトライしてみたんです。試作品は何度も作りブラッシュアップしてきました。桜貝をパーツにするための技術は簡単に見えて実は繊細かつ経験が必要。ペンダント、ピアス、ブレスレット、かんざしなど月に600アイテムほど作りますが、それでもまだ十分な数ではありません。製作者は彼女ひとりだし、原料となる桜貝は自然のもので採取もその時々に左右されますし、加工も手間暇かけているので、商品になるまで時間がかかるんです。特殊な製法を生み出し、作っているものなので、特許を出願しました。取得できたとしても大々的に口外するつもりはありませんが、自分たちにとっての付加価値にはなると思います。“作家は売れるものより作りたいものを選びがち” 職業作家として桜貝のアクセサリーをビジネスへ転換させた方法とは?
ーー趣味のアクセサリー作りをビジネスに繋げることは、とてもハードルが高いように思えます。
ハンドメイド作家というと1点づくりが多いですが、仕事として成立させるためには売れる品を適正量作り続けないといけませんし、それには売り上げをデータ化して根拠を立てることが必要。こうした作業を地道にやってきているからこそ、ビジネスを軌道に乗せられたのでしょうし、職業作家と趣味作家の違いはそこにあると思います。
僕は会社員時代に製造業のコンピューターシステムを作る仕事をしていたこともあり、自前の基幹システムを作りました。そこから在庫管理の把握、1週間の売り上げを可視化させ、売れ筋商品の傾向を読み、品物を入れ替えるなどしています。製作者である彼女の限られた時間を有効に使うためには少しでも工夫をしなといけませんし、収益にも結び付きません。作家は売れるものより作りたいものを選びがちですし、同じものだけを作ることにつまらなさを感じることも。しかし、そこを割り切らないとビジネスになりません。お金も資源だけど時間も資源。その時間を有効に使うためにも無駄な作業をしないこと。遊びは必要だけど、無駄がなさすぎて遊びがないというのはものづくりをする人にとってはマイナススパイラルに陥ってしまうので、タイムマネージメントは常に追求していかないといけませんね。鎌倉で成功できるチャンスはどこにある!? 桜貝のアクセサリー専門店開業で気づいたこと
ーー鎌倉のような人気の観光地で物件はどのように確保されたのでしょうか?
観光地に出店する場合、気軽に入ってくるお客様を確保できる導線は非常に大切。人通りがある通りでも、どこにあるかによって人の流れは変わりますし、入りやすい雰囲気か否かでだいぶ違ってきます。そのような観点から店舗を見つける必要がありました。自分たちにとってちょうどよい太さの導線と間口の広さ、適度な滞在時間を有せる店の広さを重視して、フィールドワークをしつつ、条件に合う物件が出てくるのをじっと待っていました。ーーフィールドワークというと?
とにかく鎌倉中を歩き回りました。店主の方とは常に情報交換をしていましたし、街を歩く年齢層や売れ筋商品、同じエリアでも売れる店とそうでない店の違いなど注意深く観察するなど、地道に続けました。実は鎌倉の観光客は増えている一方で購買単価は全体で下がっていると聞きます。見てかわいい、おもしろい、と楽しませて終わりの店も少なくありません。ーー逆にいうと、これというものを店が提供しきれていないのかもしれませんね。
他と比べてクオリティが高い、ストーリーがあって魅力あるものを提供できる店であれば鎌倉で成功できるチャンスは高いと思います。地に足を付けて人気を集め、素敵な店づくりをされているオーナーさんはいらっしゃいますが、その一方で大手資本の参入も多く、鎌倉らしさが失われている側面はあるかもしれません。
鎌倉が継続して魅力的な街であり続けるためにも、鎌倉のよさを発信できるようなお店が増えると嬉しいですね。都会では出せない空気感を持ち、店のブランディングがそのまま鎌倉のブランディングにつながるような店が増えて欲しい。僕らももっと力をつけて発信をしていきたいです。陸門 浩行
1970年生まれ。愛知県出身。大手SIグループのSEとして勤務後、友人と一緒に「Lino Drops Kamakura」を立ち上げる。2016年に鎌倉の若宮大路沿いにアトリエ兼ショップとして路面店を開業。
Lino Drops Kamakurahttps://www.linodropskamakura.com/
神奈川県鎌倉市小町2-12-29 鈴木ビル1F国内唯一の桜貝アクセサリー専門ショップ。桜貝の持つ自然の色や魅力を引き出したネックレスやピアスなどのアクセサリーを製作・販売。
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