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ワイン専門店オーナーが考える、ウンチクを語るよりも大切なこと

地域に根差した店にするならば、人や街のニーズを読み取ることが大切なスキル

  • 松尾 明美/a day.

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神奈川県・逗子、東京・代々木にワイン専門店を構えるa day.店主、松尾明美さん。実は店を畳んだ経験もあり、そこから多くのことを学んだとも語ります。専門店でも知識よりも大切なことがある。経営を続けていくためのポイントをお聞きしました。

ワイン専門店らしく生産者にこだわる。生産者の哲学的なところに共鳴したワインだけを仕入れている

ーー「a day.」は逗子と代々木八幡に店舗を構えるワイン専門店プですが、松尾さんがお店を始めた経緯についてお聞かせください。
逗子には結婚を機に住み始めたのですが、「a day.」の成り立ちとして、昔ながらの酒屋がスーパーに吸収されたりして、この街から酒屋が少なくなってきたという背景もあるんです。近隣にはワインを置いているスーパーもありますが、ワイン専門店はうちだけ。逗子店の方が早いオープンで2005年です。代々木八幡店は2011年ですが、せっかくやるならトレンディなワインを東京でやってみたいと思ったことがきっかけですね。インポーターさんと組んで試飲会なども積極的にやっています。
もともとワインが好きだったということもありますが、専門店を始める前は叔母が銀座でジュエリーショップをやっていて、そこを手伝っていたんです。顧客ビジネスという捉え方、つまり客のニーズに合わせ、何を提供するかということではワインもジュエリーも共通だと思っています。

ワイン専門店らしく生産者にこだわる。生産者の哲学的なところに共鳴したワインだけを仕入れている

ーー松尾さんはどのようなこだわりを持ってワインをセレクトしているのでしょう。
フランスのワインが9割ほどで、あとはオーストリアをはじめ、イタリア、スペインといったワインも置いています。私が重視するのは生産者。葡萄栽培への取り組みだったり、どのような工程でワインを作っているのか。どんな考えを持ち、なぜこの土地にこの葡萄を植えたのか。生産者それぞれに物語はありますし、彼らの哲学的なところに共鳴したワインだけを仕入れています。ワインと一言でいっても出来るまでは生産者によって千差万別ですからね。

ーー代々木八幡と逗子、街の特色はどのように違うものですか?
逗子はオフの街なので全体的にゆったり時が流れていますね。土地に対する価値観を共有できるような人が多く住まわれているような印象があります。新鮮な食材が手に入りやすい場所なので舌の肥えている方も多いですし、店にも晩御飯に合うワインを選びにご夫婦や、料理好きな男性がひとりでふらっと来られることもありますね。対する代々木八幡はオンな街。ワインラバーが多い街だし、感度も高い。いずれにしても地域に根差したローカルビジネスという気持ちで2店舗やっています。

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店は作ることより、畳むことの方が大変(笑)

ーー酒販免許が取れやすくなったということもあり、近年ワインを扱うショップは増加傾向に。これからワイン専門店を考えている方にとって市場に参戦するのはハードルが高いのでは?
専門店を開きたいなど自分でワインビジネスをやりたいのであれば、得意分野を持つことです。例えばイタリア産だけ扱うとか、産地を絞ったやり方でもいいわけで。あとは、何をどう売りたいのか、コンセプトづくりも必要。うちは「a day」と名付けた時から、心に残る日のための小さなワインショップ、というのが頭にあったんです。名刺にはそのキャッチもつけていたし、そのおかげで「a day」はワインショップだとわかってくれる人も増えました。
ワインはただ並べて売ればよいというものではないし、マーケティングは欠かせません。実は「a day.」には横浜店もあったのですが、2年で畳みました。その街のニーズって必ずあって、横浜店に関しては読み切れていなかったんですよね。店は作ることより、畳むことの方が大変。オープン時には夢があるし、たくさんの人にも支えられるし、支えてもらえないと店は継続できません。言ってしまえば閉店はファンを裏切ることだし、やることも多いからエネルギーが必要。離婚と同じかも(笑)。

ワイン専門店はマニアックではない。知識を伝えられることが重要

ーーワイン専門店のオーナーとして心がけていることは?
私はマニアックにワインを飲みたいとは思ってはいませんし、飲んで欲しいとも思っていません。それよりも生産者への尊敬を忘れることなく、作り手の想いをちゃんと伝えていきたい。そして食事に合うワインを勧められるコーディネーターとして、プロとしてあるべき姿でいたいとも思うんです。スタッフにもワインの知識より、店で扱っているワインを知り、お客様にしっかりと伝えて欲しいと言っています。

ワイン専門店はマニアックではない。知識を伝えられることが重要

松尾 明美

松尾 明美

京都出身。3歳で鎌倉へと移り住む。広告制作会社勤務、叔母の営む銀座のジュエリーショップを経て、2005年に「a day.」逗子本店をスタート。

a day.

a day.http://www.aday2005.com/
逗子本店:神奈川県逗子市逗子1-2-11、代々木店:東京都渋谷区富ヶ谷1-9-23

オーガニック・自然派を中心としたこだわりのワインをセレクトした専門店。ワイン以外のデリも充実。コンセプトは「心に残る日のための小さなワインショップ」。ワインは文化であるという考えのもと、また逗子の街づくりの一環として、多種多様なワインイベントを主催することも多い。

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