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古着屋の経営者から靴職人への転身。アナログな世界で変革を挑む靴職人

古着屋の経営者から靴職人への転身。アナログな世界で変革を挑む靴職人

  • 東 雅樹/apego(アペーゴ)

古着屋の経営者から靴職人への転身。アナログな世界で変革を挑む靴職人_記事画像

靴職人は、靴についての技術や知識が高まれば高まるほど、その腕前を発揮したくなるものですが、それは自分の目線であって、お客様が求めているものとは違ったりします。あくまで接客業であることを忘れずに、バランスを取っています。と仰る、靴職人の東さん。なぜ「靴」を取扱い、開業したのか、そのヒストリーをお聞きました。

古着屋の経営者から靴職人に転身。きっかけは将来的な不安からだった

ーー以前は、地元の香川県で古着屋を経営されていたそうですね。2回目の起業となる「apego」は靴のオーダーと修理の専門店。なぜ、この業態を選ばれたのでしょう?
古着屋は24歳で始めたのですが、やり続けていく中で将来性を感じなくなったんです。服を仕入れて並べてお客様を待って、やっとお金になるという仕事だったし、需要の低迷もあり、このスタイルだと将来的に厳しくなるなと。ファッションに関わる仕事は好きだし続けたかったので、じゃあこの業種で手に職を付けて技術を提供できるジャンルは何かと考えた時、靴だったんです。30歳になる前に古着屋を畳み、神戸の製靴学校に入学しました。次は靴だと思いついた当初から独立志向は強かったです。
自分が理想とする店をやるために必要なスキルは何かを考え、学校を出た後は、婦人靴メーカーなどで働いていたのですが、自分に足りていないものを多く感じていたので上京して、日本を代表する靴職人、柳町弘之氏の下で靴作りを一から学びました。

古着屋の経営者から靴職人に転身。きっかけは将来的な不安からだった

37歳で靴のオーダーメイドと修理のお店を開業。この立地に決めた理由は?

ーーさまざまなスキルを身につけて、37歳で修理とオーダー靴製作の「apego」を開業。修理とオーダーメイド、このふたつを看板に掲げているお店は少ないですね。
都内でも数件しかないようですね。でも僕の中ではごく自然な発想です。例えば、大切な靴を綺麗な状態で履き続けたいからメンテナンスをして欲しいと考えている方、あるいは既成靴が合わなくて自分の足にフィットしたオーダー靴を求められる方など、シンプルに靴を大切にしたい方々に喜んでもらえる店をと考えていましたから。修理とオーダーの両方をすることは気持ちの上で同等です。
靴修理というと壊れたから仕方なく直すとか、あまりお金をかけたくないと一般的に思われがちですが、実際に当店に来てくださるお客様は必要に迫られてというより、直すことをプラスに捉え、こちらの提案に素直に耳を傾けてくれる方が多いですね。

ーー開業にあたり、ご苦労されたことは?
物件選びですね。もともとは神戸で探していたのですが、自分の条件に合う物件がなくて。やはり東京の方が人口の数も違いますし、東京で探し直してやっと見つけたのが今の物件です。僕の店は大切に靴を長く使い続けたいという方がターゲットです。繁華街で多くの人が集まるエリアだからといって出店するのは違う。時間をかけて探した結果、山手線沿線で利便性がよく、池田山や島津山、御殿山など城南五山と呼ばれる高級住宅地もある五反田に決めました。近隣にお住いの方はもちろん、遠方から修理に持って来られるお客様、オーダーされるお客様も多いので、ここにしてよかったと思っています。

靴屋でも内装はお客様が心地よいと思える空間を。

ーーウッディな内装で工房のような店内、また、お店のホームページにもサービスの詳細がこと細かに記載されていて、こだわりが感じられます。
靴づくりをしているアトリエのような雰囲気で、お客様が心地よいと感じる環境で店づくりを考えました。何より、お客様が安心してご来店できる店であることが第一。ホームページは、そうした思いを広く伝えるためのツールでもあるのでこだわって作りましたし、ブログも毎日更新しています。当然のことと思われるかもしれませんが、技術職は仕事をこなしていると、どうしても考え方が内向きになってしまいます。ですが、外に向けての情報発信はとても大切です。
僕にとって今の仕事は美容室や飲食店などと同じで、お客様目線のサービス業であると意識しています。靴についての技術や知識が高まれば高まるほど、その腕前を発揮したくなるものですが、それは自分の目線であって、お客様が求めているものとは違ったりします。僕も職人なのでジレンマに悩むことはあっても、接客業の経験があるからバランスを取れているのだと思います。

靴屋でも内装はお客様が心地よいと思える空間を。

ーー今後の展開について教えてください。
1年経ったので、あと2年でしっかりと基盤づくりをしつつ、外に出てオーダーや修理の仕事を広げたいと考えています。やはり店でお客様が来るのを待っているだけではいずれ限界がきますし、こちらからアプローチすることで新たな需要が生まれると思っています。あとはスタッフも増やしたい。能力のある人材が将来に不安なく働ける環境づくりができたらと考えています。
起業した人間にとって店を続けていくためには、常に考え、変化し続けることが大切。このままでも何とかなるとか、食べていければそれでいいという考えでは絶対にダメになります。自営業のよさは、自分がいいと思ったことを自己責任ですぐに実行に移せること。企業に属していたらそうはいきませんよね。それなのに、変化をネガティブに捉えてしまうのか、動かなくなってしまう人が案外多い。僕は、変化し続けることは、成長していく唯一の道だと思っています。

東 雅樹

東 雅樹

1979生まれ。香川県出身。24歳で地元の香川県で古着屋を起業した後、神戸の靴学校を経て婦人靴メーカーに就職。上京後、日本を代表する靴職人・柳町弘之氏に師事。同時に、靴修理店などで経験を積み、2016年2月に「apego」を開業。

apego(アペーゴ)

apego(アペーゴ)http://apego2015.com/
東京都品川区東五反田5-24-8 YMビル1F

靴のオーダーをはじめ、修理やクリーニングを行う「apego(アペーゴ)」。店名はスペイン語で「愛着」という意味。お客様が大事にしている靴を修理・ケアすることで、長く「愛着」をもって履いていただくお手伝いをしたい、お客様の足に合ったオーダー靴を作ることで、これから共に生活していく靴に「愛着」をもっていただきたいという想いが込められている。

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