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下北沢にあるブックカフェは、クイズ作家の参考図書がずらりと並ぶ「知識工房」

「参考図書だけを集めた店」は、関連するイベントなども開催するまさに「知識の箱」

  • 仲野隆也(なかの たかや)/クイズ作家、クイズ制作会社(有)セブンワンダーズ代表/RBL CAFE(アールビーエル カフェ)

下北沢にあるブックカフェは、クイズ作家の参考図書がずらりと並ぶ「知識工房」_記事画像

演劇や音楽をはじめ、大衆カルチャーの聖地として知られる東京・下北沢。この街に2016年、「RBL CAFE」というブックカフェが誕生した。日本語的に言い換えれば「参考図書カフェ」という意味になるこの店のオーナーは、仲野隆也さん。その名前にピンと来た人は、かなりのクイズ好きだろう。現在、多くの媒体でクイズ作家として活躍しながら、クイズ制作会社など幾つもの会社を経営しているという、クイズ業界の有名人だ。

カフェは当初、金・土・日曜の3日のみの営業だった。開業から2年余りが経ち、不定期ながら平日も営業をするスタイルに変わったが、訪れるお客さんはじっと、椅子にかけたまま何時間も本を読み耽り、時折パソコンに文字を打つ「仕事モード」の人も多い。話し声のほとんど無い静かな空間に、柔らかな音楽とコーヒーの香りが漂う。仲野氏はなぜ、こうした店を持ったのだろうか。その思いを聞いた。

ラジオ制作に、クイズ作家?異色の経歴を持つカフェオーナー

――そもそも仲野さんはなぜ、クイズに興味を持たれたのでしょうか?
最初のきっかけは、クイズ好きの「母」ですね。小中学生の頃からなんとなく自宅で、ご飯を食べながらテレビ番組を見ていた時に、クイズ番組を見ることが多かったんです。クイズを意識し始めたのは、中学校2年生くらいですね。テレビの問題をチェックしたり、自分で問題を作ったりしていました。ただ、当時はまったく「クイズを仕事にする」ということは考えていませんでしたね。将来は物書きになりたいな、って思っていました。

――大学は名古屋大学に進学されて、クイズ研究会に入られたそうですね。
大学では経済学部の経営学科だったんですが、当時、テレビ番組の「アメリカ横断ウルトラクイズ」が大流行していたので、僕もクイズ研究会に入って番組に出たんです。でも、成田まで行って、何と「じゃんけん」で負けてしまって。それからウルトラクイズは見ていませんね(笑)。

卒業して最初に就いた職は、FMのラジオ番組を作るという仕事でした。制作、営業職として、ジャパンFMネットワークというところで11年働きましたね。

――そこからなぜ、クイズ作家になったのでしょうか?
退職する時は、「クイズを仕事にしよう」とは考えていなかったんです。でも、辞めてすぐに、知り合いの方がテレビの番組の仕事を紹介してくださって、翌月からクイズ作家になったんです。本当に、たまたま滑り込んだ、みたいな感じです。

――クイズ作家とは、どんなお仕事内容なのでしょうか?
もうひたすら、クイズの案出しですね。最初はテレビ番組の問題作りから始めて、そのうちゲームを作ったり、本を書いたりもして、色々な媒体で書かせていただいています。放送中の番組だと、テレビ朝日の「Qさま!!」とTBSの「東大王」を担当しています。

――クイズ専門会社の代表もされているそうですね。
クイズの会社として、本当に“クイズ工房”的な仕事をする「セブンワンダーズ」と、一般企業に対してイベントやWEBプロモーションなどを提供する「キュービック」という会社、そして、「一般社団法人日本ジェネラルナレッジ協会」を立ち上げ、「知識検定」も行っています。このカフェは「セブンワンダーズ」で経営しています。

ラジオ制作に、クイズ作家?異色の経歴を持つカフェオーナー

クイズ会社がカフェを開業。その意外な理由とは?

――本業がありつつも、カフェを立ち上げられたわけですが、狙いは何ですか?
僕自身がもともと「ノマド」的な仕事のスタイルで、ほとんどカフェなど、外で仕事をしていたんです。でもやっぱり、うるさかったり、いろいろ気を使ったりするので、「自分でカフェを持ちたいな」と思っていたんですね。それに、自分を表現する媒体、チャンネルとしても「箱」があれば楽ですし。まあ、実質的な話としては、本の置き場所が必要だったんですけれども(笑)。

――お店のコンセプトを教えてください。
静かに仕事ができて、ゆっくり本を読める環境を作りたかったので、そこは強く意識しています。もともとここは事務所仕様の物件だったので、壁をはがして、本棚も自分で設計して、内装にはすいぶんお金がかかっちゃいましたね。テーブルはオーダーで作ってもらったものですし、椅子も、素材と色を自分で組み合わせたセミオーダーです。特に本棚はこだわりましたね。段ごとに高さを変えて、木の厚みとか、何段にするとか、下の段は少し大きくするとか、収めたい本を想定してかなり細かくやりました。やっぱり自分が居て、「落ち着けるな」って空間を作りたかったので。

――BGMにもこだわっていらっしゃいますね。
もともとFMラジオの会社で働いていましたからね。時間帯とか季節に合うような音、ということは意識しています。昼は活動したくなるような、リズミカルなものだったり、夜はしっとりしたような感じだったり。「コーヒー美味しいね」って言われるよりも、「音楽いいですね」って言われるほうが嬉しいです。基本的には洋楽かジャズをかけていますね。

でも、コーヒーだってこだわっていますよ。自分がすごいコーヒー好きなので。たまたま、すごく素敵な焙煎家の方に出会うことができたので、今はその方のコーヒーだけを仕入れて、自分はその最後の“お手伝い”だと思いながら、丁寧に淹れています。

店舗を経営していることでいろいろな出会いがある!

――実際に仕事場としても活用されていますか?
もちろんです。ここで実際に案出しの作業もしていますし、その資料として、ここの本も使っています。

お客さんの滞在時間が長いので、正直言うと、ほとんど利益出ていないんですが、それでも、ここは「自分のチャンネル」としての意味が大きいですね。お客さんも、ここで仕事をされる方は多いですね。パソコン率が6割で、8割くらいがお一人の方です。

――カフェを作ったことで、本業に良い影響は出ていますか?
そうですね、一番良かったのは、店をやっていなければ絶対に会えないような方と、すごくいっぱい出会えたことでしょうか。専門分野が違う人や、外国人など、環境が違う人、業界が違う人などと、イベントを通じて沢山出会えました。下北沢という地域とのつながりができたのも、大きいですよね。

――こんなに色々されていて、忙しくて寝る時間も無いのでは?
本業もあるので、休みと言える日はほとんど無いですね。でも、ぼうっとしているよりは、そっちのほうがいいかなと。最近は「インプット」する時間が足りなくて、それがちょっと辛いですけれども。

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開業前はブックカフェを徹底リサーチ!

――開業前に、リサーチをした、またはモデルにした店はありますか?
モデルにした店はありませんが、開業前に都内の五十何軒かのブックカフェを回って、その特徴を落とし込んで、マトリックスを作って、「そこに無い位置を作ろう」ということでコンセプトを考えました。

だから、うちと似た店はどこにも無いと思いますよ。そもそもこんなへんてこりんな、参考図書だけを集めた店なんて、誰も作らないでしょうけれど(笑)。

――今後のお店をこうしたい、といったビジョンをお聞かせください。
今よりもっと、「人が有機的に集まれるスペース」にしていきたいですね。積極的にイベントを打って、イベントで集まった人たち同士がつながって、そこから新しい何かが生まれるような循環を作っていきたいです。

直近の予定では、毎月1回ぐらいのペースで、お芝居(のイベント)、あと、「一般社団法人日本ジェネラルナレッジ協会」を立ち上げ、「知識検定」を行う予定です。本当に小さな箱なんですけれども、そういうことを定期的にやれば、普段は聞けない違うジャンルの人の話も聞けますから、新しい発想や展開にもつながっていくのかな、と思っています。

開業前はブックカフェを徹底リサーチ!

――これから新しいことを始めたいと思っている方に、アドバイスがあれば教えてください。
何かを「やりたい」と思っている人は沢山いると思うんですが、思っているだけだとそこで終わりなので、まずは「口に出す」ということですね。口に出して、自分にプレッシャーをかけるんです。僕自身、やりたいことをバーっと言っちゃうタイプなんですけれど、そうすると案外、情報って向こうから来るし、サポートしてくれる人が集まってきたりするんです。不思議なことに。

でも僕自身、こうやって色々やってきて、「失敗した」とか、「想定外だった」と思ったことはないですね。「やりきった」と思えれば、それがすべて成功だと思うので。例えうまくいかなかったとしても「失敗した」と思うまでやりきれば、必ず、何か得るものはあるんです。

――積極的に前に出ていく、仲野さんのそのパワーの源は何ですか?
何ですかねえ…。多分、「考え過ぎない」ってことでしょうね。もちろん、まったく考えないわけではないですけれど。最初にきっちり条件を書き出して、そこから取捨選択をしていくんです。でも、そこに「これ面白いな」ってものがあれば、考える前に、やっちゃいますね。さっきマトリックスの話をしましたけれど、そうやって何か、図に書き出してみると、自分の「やりたいこと」も見えやすいと思いますよ。

誰でも「やりたいこと」ってあると思うんですけれど、それを誰にも言わなければ、安全なんですけれど、実現もしないんですね。それを口に出して、敢えてリスクを取ることで、「大変だけれども、実現する可能性もある」という道が開けると思うんです。自分は、そういう道を選んで生きていきたいですね。

下北沢にあるブックカフェは、クイズ作家の参考図書がずらりと並ぶ「知識工房」_記事画像5

仲野隆也(なかの たかや)/クイズ作家、クイズ制作会社(有)セブンワンダーズ代表

仲野隆也(なかの たかや)/クイズ作家、クイズ制作会社(有)セブンワンダーズ代表

1966年三重県津市生まれ。名古屋大学経済学部経営学科を卒業後、ジャパンFMネットワークに入社し、制作、営業職を経験。2000年に退職しフリーのクイズ作家に。05年にクイズ制作を主業務とするセブンワンダーズ、11年に法人にクイズ関連のコンテンツを提供するキュービックを創業。16年に「RBL CAFE」を開業し、自身のクイズ創作の拠点としながら、クイズ関係のイベントなどを展開。ちなみに、大学時代には数々のクイズ番組や大会等に出場、華やかな戦績を残している。

RBL CAFE(アールビーエル カフェ)

RBL CAFE(アールビーエル カフェ)http://rblcafe.jp/
東京都世田谷区代沢5-32-12

店名の由来は「Reference Book Library」。日本語に訳せば「参考図書の書庫」。店内は両側の壁全面が書棚で、分野別にあらゆるジャンルの実用書、辞書、図説等が並べられている。これらはすべて、仲野氏がクイズ制作のために買い集めたもの。一部には販売用の図書もある。テーブルは基本的に一人掛け。電源も自由に使うことが可能。メニューは基本的にコーヒーと焼菓子のみ。コーヒー豆は世田谷代田「グラウベルコーヒー」から仕入れており、注文ごとにミルで挽いてペーパードリップする。イベント開催による貸し切り営業も多く、営業日は変動的なので、ホームページで最新情報を確認してから訪れたい。

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