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【小阪裕司コラム】第231回:「写経会」と「安全地帯」

【小阪裕司コラム】第231回:「写経会」と「安全地帯」

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

「写経会」がもたらした意外な効果

 今回は、「写経」を通じてお客さんとの関係性を深め、商売にとっても好循環を生んでいるお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の墓石店からのご報告だ。
 同店は大きな霊園を営んでおり、そこで10年ほど前から行っているのが「写経会」だ。現在では毎回満席、キャンセル待ちが出るほどの人気ぶりだという。講師は店主。といっても、「字が特別上手いわけでも経典に詳しいわけでもありません。あくまで『場のまとめ役』として、お客様と一緒に写経を楽しむスタイル」と彼は言う。
 参加者は、霊園の購入者やその家族・友人などが中心だ。写経会の内容は、自己紹介に始まり、写経、般若心経の唱和、そして最後は集合写真の撮影で締めくくるシンプルなもの。以前は外部講師を招いてイベントを行っていたが、「自分が主催すれば予算もかからず、気負わずに継続できる」と考えたのが、このスタイルの始まりだった 。霊園という場所柄、写経というテーマがお客さんにも受け入れられやすいとも思ったと言うが、実際、開始当初は5〜6名だった参加者が、ここ数年で一気に急増してきた。
 そして店主は、やってみてわかったこととして、「絆の深まり」と「驚きの波及効果」を挙げる。最近では、参加者が自発的に楽器演奏を披露したりお菓子などを配り合うようになり、参加者同士が仲良くなり、会を自ら盛り上げようとしてくれている。また、この場の居心地の良さを感じた顧客が友人を誘い、その方が霊園を購入するという、信頼に基づいた紹介の連鎖が起きていると店主は言う。写経会での自己紹介では、普段は他人に話さないようなプライベートな不安を打ち明ける方もおられ、この場がお客さんにとっての「安全地帯」になっており、単なる「店主と客」を超えた関係性が生まれていると店主は語る。

人々は「安全地帯」を求めている

 私はかねてより、「現代の人々は安全地帯を求めている」と実践会員に伝えている。もし、あなたの店や会社がお客さんにとっての安全地帯になれたなら、圧倒的に選ばれる存在になるのだと。ちなみに「安全地帯」とは、人にとって心から安心でき安らげる場のことだが、店主も今、そのことを実感していると言う。このような場を続けていくことこそが、自分たちのような地域ビジネスにとって最大の資産になると確信していると。今後は席数を増やし、より多くの方にこの安心を届けていきたいと考えているとのことである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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