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【小阪裕司コラム】第175回:あなたにとって当たり前のことが

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

お客さんに「伝わっていない」は“伸びしろ”

 今回は、「あなたにとって当たり前のことが、お客さんにはわからない」というお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある生花店からのご報告だ。
 同店は桜並木沿いにあり、桜が咲く頃は人の往来が多くなる。今年のその時期、店主は、咲いている桜を見ながら散歩している人たちに向けて、桜の枝を販売した。買ってそのまま花瓶にさしておけば自然に桜の花が咲く。店主の狙いは、お客さんへの「咲きだすところが自宅でみられる」という体験価値の提供だ。
 店頭のPOP(店頭販促物)には「これから咲く桜、販売してます」「自宅で咲かせてみよう!」と記し販売を始めると、狙い通り「これから咲く桜、ありますか?」と、POPの言葉通りのセリフを口々にお客さんが入店され、桜の枝を買っていった。「こう発信すればお客さんの心が動く」と確信犯としてやったという店主は、「狙い通りで悦にいっておりました」。
 しかし彼は、買ってくれたあるお客さんの一言に、頭の中が「!」となったという。その言葉とは、「桜って、自分で咲かせられるとは思わなかった」。
 この一言は同店の常連さんによるもので、切り花を飾るのには慣れている方だそうだ。桜を咲かせるには、花瓶に水を入れ、桜の枝を入れておくだけだ。それで自動的に花は咲く。しかし、それが分からない人がいる、ましてや花屋の常連さんに、と店主には新鮮な驚きだった。
 店主はこの一件から、次のように考えた。「桜って自分で咲かせられるの?」と思う人はおそらく多数派だろう。分かっている人はすんなり買ってくれるが、分からない人は「分からない」というハードルから、興味があっても購入に至らず離脱する。ということは、まだまだ自分たちが日々花屋として行っていること、考えていることや想いはほとんど伝わっておらず、その「伝わっていない部分」はお客さんに感動を与えるという意味での伸びしろである、と。

感動を与えられる“伸びしろ”は売上の“伸びしろ”

 「あなたにとって当たり前のことが、お客さんにはわからない」―これは私が実践会員のみならず、講演でも著書でもよくお伝えすることだ。だからこそ、そこを見過ごさず発信することが大切だ。そしてそれはあなたの会社やお店にとって、店主の言う「お客さんに感動を与えられる伸びしろ」であり、ひいては売上の伸びしろなのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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