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【小阪裕司コラム】第138回:それぞれの「理由」に、それぞれの客が

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

視点を変えれば「防水スプレー」もこんな売れ方をする

 前回「モビール」の事例をご紹介した。一般的には「部屋の雰囲気が良くなる」ことが「買う理由」で、インテリア用品として売られるものだが、「目に良い」点を訴求すると別の「買う理由」が生まれる。「部屋の雰囲気」には反応しない人も、「目に良い」なら買いたくなり、結果として商品の売上は伸びる。そこで今日はこういう事例をご紹介しよう。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、クリーニング店からのご報告だ。
 あなたは「防水スプレー」という商品をご存じだろうか。普段それはどんな理由で買うだろうか。「雨や泥を弾く」と謳われることが多いことから、雨が強そうな日やキャンプに行くときなどに備えて購入する人が多いのではないだろうか。それゆえこの商品は、雨や泥に困りそうな時期、6月ごろから10月ごろまでによく売れ、冬場にはほとんど売れない、と扱うお店の方たちは言う。
 そんな中このクリーニング店では、防水スプレーをあえて「売れない」とされる12月に、「雨や泥をはじく」とは異なる点を訴求し、売ったことがある。POP(店頭販促物)にはこう書いた。
「忘年会でビールをこぼさない自信がありますか?」
するとどうなったか。例年ほとんど売れない12月に、防水スプレーが飛ぶように売れたのである。
 買った人たちは、何のために買ったのか。そう、文字通り忘年会のビール対策だ。雨や泥でなく、ビールもはじく。言われてみればそうなのだが、言われなければ気がつかない、「12月に防水スプレーを買う理由」である。

多くの人が気づいていない「買う理由」に気づけるか

 同店はクリーニング店だけに、ここに目を留めることができた。例年この時期になると、スーツなどにビールをこぼし、染みを作って持ち込まれる洗濯物が増える。しかしそれは、防水スプレーをふりかけてから忘年会に行けば安心だ。こういう背景があって彼らは、多くの人が気づいていない「買う理由」に気づき、POPを使って伝え、売上を生んだ。
 このように、モビールから防水スプレーにいたるまで、商品には様々な「買う理由」があり、それぞれの理由に反応するお客さんがいる。そこを見つけ出し、一つひとつ丁寧に結び付けていけば、それだけ商品は売り伸びる。そしてお客さんの側は「買う」だけでなく、それまで気づかなかった「買う理由」を教えてくれたあなたに感謝するのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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