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【人気飲食店の開業白書】第2回『地域住民に愛される、人にもペットにも優しいトラットリア――東京・緑が丘「Civetta(チベッタ)」』
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飲食店開業を目指す方に、目標としてほしい店舗や参考にすべき店舗を厳選してご紹介。開業時の投資計画や人気店になるブレイクスルーポイントなどを参考に、現在計画中のお店のコンセプト設計にぜひ役立てて欲しい。
第2回は東京・緑が丘のトラットリア「Civetta」さん。
リピーター中心の店舗運営を検討中の方は必見の内容だ。
【SHOP DATA】
「Civetta(チベッタ)」
東京都世田谷区奥沢2-49-17
TEL 03-5726-8444
営業時間:火~金17:00~22:00(フードL.O.21:00、ドリンクL.O.21:30)、土・日12:00~15:00、17:00~22:00(フードL.O.21:00、ドリンクL.O.21:30)
定休日:月曜+不定休
規模:19.4坪28席
客単価:ランチ4000円、ディナー6000円
instagram
食べログ
【開業サマリー】
オープン:2023年11月23日
最寄り駅(1日乗降客数):東急大井町線緑が丘駅(1万543人)
立地:緑が丘駅から徒歩3分の住宅エリア、路面
規模:19.4坪28席
家賃(坪当たり家賃):30万8000円(1万5876円)
初期投資:自己資金500万円、融資1000万円
目次
- リピート客が8割を占める住宅街のトラットリア
- トスカーナの田舎町で触れた昔ながらのレストランがモデル
- 「学ばざるを得ない環境」に自らを置き続ける
- 修業先への真摯な姿勢が開業支援につながった
- 居抜きでコストを抑えつつ、長く使う店の土台に十分な投資
- canaeru開業資料室
- 初期投資の内訳 ~既存造作に消防法上の問題が判明。撤去費150万円が発生~
- 店舗レイアウト ~仕切り壁を撤去して厨房内からの死角をなくす~
- 商圏情報(マップ) ~乗降客数わずか1万名強の住宅街に立地~
- 商圏情報(データ) ~客単価6000円のトラットリアを普段使いできる住宅エリア~
- 資金調達 ~20歳から蓄えた自己資金500万円と公庫融資1000万円~
- 物件探し ~家賃30万円前後で広さと住宅立地を優先~
- 内・外装工事 ~既存造作に消防法上の問題が発覚。撤去費150万円が加わる~
- 求人 ~広告を使わず、元同僚の支援で開業時を乗り切る~
- 広告、プロモーション ~認知度アップのためにしたのは近隣店への挨拶のみ~
- 店内の様子
- お父さん作成の皿
- 子ども専用の椅子
- ペット同伴用テーブル
- 住宅街に佇む店舗
- 取材協力
- Civetta(チベッタ)/枡田真(ますだ・まこと)
リピート客が8割を占める住宅街のトラットリア
イタリア修業を含む16年余りの外食業経験を経て、枡田 真(ますだ・まこと)さんが2023年11月23日、東京・緑が丘に開業したのが「Civetta」だ。ディナー客単価6000円のトラットリアだが、来店客に占めるリピート客の割合は8割。なぜ繁華街ではなく、住宅街の緑が丘を出店立地として選んだのか。開業までのプロセスとともに、そこに込めた思いを枡田さんに語っていただいた。
↓Civettaはイタリア語でフクロウを意味する。前職の㈱コローリのスタッフが書いたイラストをロゴに使用した

トスカーナの田舎町で触れた昔ながらのレストランがモデル
Civettaは東急大井町線・緑が丘駅から徒歩3分の緑道沿いに店を構える。周囲には閑静な住宅街が広がり、散歩中の近隣住民が行き交うものの、決して通行量が多い通りではない。その点では外食店には不向きな立地ともいえるが、枡田さんは「願い通りの店をつくれた」と手応えを口にする。
枡田さんは27歳で渡伊し、トスカーナとトレンティーノ・アルト・アディジェのレストランで計2年修業した。物件選びで頭にあったのは「トスカーナの田舎町で触れた昔ながらのレストラン」。「めざしたのは近隣の方に気軽に通ってもらえるトラットリアで、『近くにあってよかった』と思ってもらえる店にしたかった」と語るが、実際に子ども連れや年配の夫婦など、地元の幅広い客層から支持を得ている。
↓上:トスカーナで修業中の枡田さん(左)。この頃の経験が「Civetta」の基礎となっている
下:修業先の「Il Conte Matto」はシエナ地方の郷土料理を提供するリストランテ
「学ばざるを得ない環境」に自らを置き続ける
静岡県静岡市出身の枡田さんは地元の調理師専門学校を2007年3月に卒業した後、㈱ひらまつに入社。その時既に独立の意思は固まっていたという。
独立に必要な力を身につけるため、枡田さんが選んだのは、「学ばざるを得ない環境に自らを置くこと」だった。「自分から率先して勉強するタイプではないため」とその理由を説明するが、就職先にひらまつを選んだのも、高度な調理技術が求められるフレンチやイタリアンのファインダイニングの厳しい現場に身を置くことで、料理人としての基礎が身に付くと考えたからだ。
下北沢のトラットリア「イル・コンソラーレ」に転職し、そこで後に師匠と仰ぐことになるシェフの手嶋 正人さんと出会ってイタリア料理の魅力に開眼。27歳で渡伊したが、その際も「ローマやミラノなど都市部だと日本人同士で集まってしまうかもしれない。イタリアにどっぷりと浸るため、トスカーナとトレンティーノ・アルト・アディジェのレストラン、どちらの州でも田舎町を修業先に選んだ」という。
帰国後はレストランウエディングも手がける「HOTEL EMANON」の調理長としてスタッフを指揮。前職の㈱コローリには6年半在籍し、取締役も任されたが、「2colori」「+ruli-ro」というトラットリア2店の運営を通じ、調理や商品開発の他、コスト管理や人材採用など小規模店の経営実務も身につけた。
↓国内でもイタリアでも「学ばざるを得ない環境」を選んだと語る枡田さん
修業先への真摯な姿勢が開業支援につながった
この独立に向けた「半強制的な環境づくり」は開業資金の準備にも貫かれた。両親の助言もあり就職後から毎月3万円を実家に送金し積み立て、収入が増えてからは5万円に増額。開業時には自己資金500万円を用意した。
こうした計画性が評価され、日本政策金融公庫から1000万円の融資を獲得。難航しがちな物件探しも2回の内見で条件通りの物件を見つけられるなど、開業準備をスムーズに進めることができたが、そこには枡田さんの義理を欠かさず段取りを踏むという姿勢が背景にある。
2021年末に勤めていたコローリ側に初めて独立の意向を伝えた際は、共同代表の渡部武志さんと山口高志さんから「まだ早い」と止められ、さらに1年間勤務。2022年末に改めて意思を伝え、受諾された後も十分な引継ぎ期間を設けて2023年8月末に退社した。
こうした段取りを踏んだからこそ、コローリは枡田さんの開業を全面的にバックアップしてくれた。渡部さんは物件情報の収集や立地のアドバイスだけでなく内見にも同行。開業直後には同社のスタッフも営業をサポートしてくれた。「売上が不安定な時期だっただけに、集客状況に応じてヘルプしていただけたのは本当に助かりました」と枡田さんは振り返る。
居抜きでコストを抑えつつ、長く使う店の土台に十分な投資
開業資金1500万円のうち、物件取得に計558万円、店舗施工に計669万円を投じたが、ここで特筆されるのが、メリハリを利かせた資金配分である。
物件取得費がやや膨らんだのは、250万円の造作譲渡費を含むためだ。オステリア(イタリア風の居酒屋)の居抜き物件を活用しており、厨房設備で新たに購入したのは中古のスチームコンベクションオーブンのみ。什器・備品も椅子と一部のワイングラスの購入にとどめた。一方、内外装工事費は500万円におよぶが、これは壁や床、外装の補修にしっかり資金を投じ、長く使える店の土台を整えることが狙いだ。
地域に根付くトラットリアをめざし、ペット同伴、子ども用メニュー、スロープの設置など、開業後も近隣客の使い方に合わせて店を変えてきた。
2024年6月には週末のランチ営業をスタート。当初はセットメニューを提供していたが、年配のお客が多く、ボリュームがあまり求められないことから、2024年10月以降はランチ、ディナー共通のアラカルトメニューを導入している。
こうした施策を重ね、開業から3年弱をかけてCivettaを緑が丘に根付かせてきたが、その積み重ねが生かせるのも開業時に土台へしっかりと投資したからこそ。目下の課題は正社員の採用だが、採用後はディナー営業時間の延長と祝日のランチ営業を検討。広いテラスにも活用の余地が残されており、店の発展に力を注いでいく意向だ。
↓エントランスにはスロープを設置するなどお客さまのニーズに応えている
canaeru開業資料室
人気店のオーナーが開業時に考えていた経営や資金の計画、多くの人を悩ます物件探しや店舗設計などについて、貴重な資料とエピソードを交えながら振り返る。

初期投資の内訳 ~既存造作に消防法上の問題が判明。撤去費150万円が発生~
開業資金1500万円のうち、物件取得に計558万円、店舗施工に計669万円、運転資金273万円(店舗運営費268万円+什器備品5万円)を投資。居抜き物件だったため、厨房設備の他にも調理器具や食器などの備品類を引き継ぐことができ、新たに購入したのはスチームコンベクションのみだったが、これも撤退準備を進める店に交渉し、5万円で譲ってもらったものだ。造作譲渡費は当初の提示額が税抜300万円だったが、交渉によって税込250万円に減額することができた。
内外装工事費は500万円だったが、想定外の追加コストとして発生したのが解体費150万円だ。店の脇に増築されていたクローク兼倉庫、テラスに設置されていたテント用の柱に消防法上の問題があり、撤去などの追加工事が発生。また、造作譲渡で引き継いだ厨房設備のうち、食洗機、製氷機、冷蔵ショーケースが開業後に故障したが、これらはリースで対応した。
店舗レイアウト ~仕切り壁を撤去して厨房内からの死角をなくす~
店の規模は19.4坪28席で、店舗レイアウトはオステリアの居抜き物件をほぼそのまま引き継いだ。L字型カウンターのオープンキッチンに加え、間口が広く、厨房内から店頭を見渡せる開放感のある形状がこの物件を気に入ったポイントだった。エントランスの目の前に設置されていた壁の上半分とフロアの仕切り壁を撤去。厨房内からの死角をなくし、少人数でも店内全体に目を配れるようにした。
ファサードは全面ガラス戸になっており、春期、秋期は扉を開放。ファサード寄りのテーブル席はペット同伴で利用できる席にしている。
商圏情報(マップ) ~乗降客数わずか1万名強の住宅街に立地~
商圏情報(データ) ~客単価6000円のトラットリアを普段使いできる住宅エリア~
自由が丘駅から1駅だが、東急大井町線・緑が丘駅の1日乗降客数はわずか1万543人。駅周辺には落ち着いた住宅地が広がっており、外食店は数えるほどしかない。緑が丘駅を起点とし、自由が丘駅方面に伸びる九品仏川緑道沿いに店を構えているが、その周辺には高級住宅地が広がっており、ディナー客単価6000円のトラットリアを普段使いできる可処分所得の高い住民の割合も高い。枡田さんは近隣住民の所得水準などを事前に調査したわけではなかったが、周辺で暮らした経験があったことから、肌感覚でいけると判断した。
↓出典:総務省「令和5年 住宅・土地統計調査」「市町村税課税状況等の調」および厚生労働省「国民生活基礎調査」等を基に推計
資金調達 ~20歳から蓄えた自己資金500万円と公庫融資1000万円~
開業資金は自己資金500万円に日本政策金融公庫からの借入金1000万円を加えて計1500万円を用意した。枡田さんは㈱ひらまつに新卒入社してから毎月3万円、収入が増えると毎月5万円を実家へ送り、親に預かってもらっていた。自分の手元に置かず、全収入を使い切らない環境にすることで、着実に独立資金を積み立ててきた。
融資審査では開業の計画性や本気度をチェックするために、資金をきちんと積み立ててきたかが重視される。枡田さんは10年以上の積立てプロセスを通帳の記録で示し、滞りなく融資を受けることができた。物件探し ~家賃30万円前後で広さと住宅立地を優先~
開業準備で心強かったのが、前職の㈱コローリから支援を受けられたことだ。2023年初めに物件探しをはじめたが、共同代表の渡部武志さんが物件情報を集め、内見にも同行してくれた。当初の希望条件は10~15坪の規模で家賃30万円以内。学芸大学の物件を内見した際に「枡田さんのイメージには合わない」と渡部さんに助言され、本人もそれに同意した。
客席の回転率を重視した駅前繁華街の小型店ではなく、お客がゆっくり過ごせる住宅街の広めの物件に方針を変更し、見つかったのが現物件だった。同年5月18日に内見。8月の閉店を控えたオステリアが営業中だったが、緑道沿いの環境、19.4坪の広さ、幅広い間口、厨房から店内を一望できるオープンキッチンが構想に合致した。家賃も税別28万円(税込30.8万円)と予算内に収まり、契約を即決した。
↓カウンター内からは店内だけでなく通りを散歩する人も見渡すことができる
内・外装工事 ~既存造作に消防法上の問題が発覚。撤去費150万円が加わる~
内外装工事に投じたのは500万円。造作譲渡だったが、前店の印象を変えるためにファサードの外装、壁、床を塗装し直した他、男性用トイレの便座洗浄機能が旧式だったため、それを新型に切り替えるなど下地に手を加えたことで金額が膨らんだ。さらに予期せぬコストとして解体費150万円が発生。店の脇に増築されたクローク兼倉庫、テラスに設置されていたテント用の柱に消防法上の問題があることが判明し、それらを撤去しなければならなくなった。想定外のコストの発生に加え、解体工事が内外装工事の遅れにつながり、本来は9月中のオープン予定だったが、それが11月にずれ込んだ。
↓クローク兼倉庫が増築されていた店舗脇のスペース。店内につながっていた扉を塞ぐ工事も必要だった
求人 ~広告を使わず、元同僚の支援で開業時を乗り切る~
ワンオペでオープンしたが、19.4坪28席というやや広めの規模のため、開業直後も休前日や週末のピーク時にはスタッフが必要だった。ここでもコローリの支援が役立った。コローリのスタッフがヘルプで勤務し、さらに共同代表の渡部さんや山口さんも営業を手伝ってくれた。オープンから5カ月ほどを経てアルバイトスタッフを採用したが、それもコローリの店を辞めたスタッフだったため、開業前後に求人費はいっさいかからなかった。
2026年9月の取材時点で、火~木曜のディナー、土・日曜のランチは枡田さんとアルバイト1人、金~日曜のディナーは枡田さんとアルバイト2人で営業。今後の課題は正社員採用で、人員を確保できたら、ディナーの営業時間延長や祝日のランチ営業などをスタートする予定だ。
広告、プロモーション ~認知度アップのためにしたのは近隣店への挨拶のみ~
開業時のプロモーション費は0円。店の認知度を高めるために実践したのは周辺店への挨拶だけだった。コローリの渡部さんと一緒に交流のある自由が丘周辺の外食店6店を開業前に訪問。販促費をかけて広域からお客を集めるのではなく、まずは近隣に店の存在を知ってもらう方法をとったが、その甲斐あって周辺の外食店スタッフや外食メディア関係者なども来店するようになり、じわじわと売上を伸ばしていった。
店内の様子
お父さん作成の皿
枡田さんのお父さんは五島列島に移住。趣味で陶器を手作りしており、それを器に使用している
子ども専用の椅子
幼児連れの家族にも気軽に利用してもらえるように、子ども専用メニューの他、ベビーチェアも用意している
ペット同伴用テーブル
ファサード近くの2テーブルはペット同伴でも利用できる。緑道ではペット連れの住民が散歩している光景をよく見かける
住宅街に佇む店舗
緑道沿いに建つ3階建てのマンション1階に店を構える。住民以外はほとんど訪れることがないエリアだ
取材協力
Civetta(チベッタ)/枡田真(ますだ・まこと)
1986年11月2日、静岡県静岡市生まれ。鈴木学園 中央調理製菓専門学校静岡校卒業後、フレンチ、イタリアンのファインダイニングなどを手がける㈱ひらまつに就職。下北沢のトラットリア「イル・コンソラーレ」に勤務した後、イタリアで2年間修業した。帰国後は渋谷のウエディングレストラン「HOTEL EMANON」の調理長、㈱コローリの取締役を務めた。16年超の外食店経験を積んだ後、2023年11月23日、東京・緑が丘にトラットリア「Civetta」を開業した。
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