更新日:

開業届の出し方とは?必要な書類や提出のメリット、デメリットを徹底解説

記事メイン画像,開業届の出し方とは?必要な書類や提出のメリット、デメリットを徹底解説

個人事業主として開業するにあたっては、開業届の提出や営業に必要な資格の取得など、行わなければならない手続きがいくつかあります。

「どのような手続きをいつまでに行うべきなのか」について、詳細を把握しない状態のまま開業準備を進めてしまうと、行われるべき手続きが完了していないまま開業日を迎える事態になりかねません。

業種によって必要な手続きが異なる場合もあるため、自身が開業する業種において必要な手続きについても把握しておく必要があります。

この記事では、開業時に必要な手続きや提出が必要な書類、業種ごとに必要となる手続きなどについて説明します。開業にあたっての手続きに不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

関連記事:開業とは?起業・独立との違いは?必要な準備についてもわかりやすく解説

関連記事:飲食店を開業するには?必要な準備の4ステップをわかりやすく解説

開業届の出し方とは?

個人事業主として開業する場合は、個人事業の開業・廃業等届出書を提出する必要があります。

個人事業の開業・廃業等届出書とはいわゆる「開業届」のことで、個人事業を開業したことを税務署に申告するための書類です。

ここでは、開業届の提出先や提出方法、開業届の書き方などを説明します。

関連記事:開業届の必要書類とは?書き方や提出方法をわかりやすく解説

提出先・提出方法・提出期限

開業届は最寄りの税務署の窓口で受け取ることができるほか、国税庁のサイトからもPDFで取得できます。

提出場所は管轄の税務署となっており、営業時間中であれば窓口に持ち込んで提出が可能です。夜間に届け出る場合は「時間外収納箱」へ提出する形となり、郵送で提出することもできます。

提出期限は「開業した日から1ヶ月以内」となっているので、開業直後は各種手続きを含めて行わなければならないことがいろいろとありますが、忘れる前に提出しましょう。

書き方

開業届にはいろいろな記入欄があるため、どこに何を記入すべきかで悩んでしまう方は多いと思います。

以下の通り、開業届への記入は上から順番に進めていきましょう。

・ 個人事業の開業・廃業等届出書の「開業」に○を付ける
・ 管轄の税務署名を記入し、書類の提出日を記入する
・ 納税地として自宅または事務所の住所を記入する
・ 氏名・生年月日・個人番号(マイナンバー)・職業・屋号を記入する
・ 届出の区分として「開業」に○を付ける
・ 開業・廃業等日のところに開業日を記入する
・ 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無(青色申告承認申請書等など)に応じて「有」「無」のどちらかにチェックを付ける
・ 事業の概要として具体的な事業内容を記入
・ 青色事業専従者や従業員に給与を支払う場合は、「給与等の支払の状況」について記入

●源泉所得税の納期の特例の承認に関する申告書の提出の有無:
従業員に給与を支払う場合、源泉所得税を納付する必要があります。通常、源泉所得税は毎月納付する必要がありますが、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申告書」を提出することで、年2回の納付にまとめることができます。提出する場合は「有」、提出しない場合は「無」にチェックを入れます。

●関与税理士の記載内容:
税理士に税務を依頼している場合は、税理士の氏名、税理士事務所の名称、電話番号などを記入します。税理士に依頼していない場合は、空欄で構いません。

提出時に必要なもの

開業届を提出する際に必要となる持ち物は、以下の通りです。

・ マイナンバーが確認できる書類
・ 本人確認書類
・ 印鑑

本人確認書類とは、身元が確認できる運転免許証・パスポート・健康保険証などが該当します。マイナンバーカードは本人確認書類も兼ねているので、マイナンバーカードがあれば本人確認書類は持参する必要はありません。

控えの提示が求められる手続き

開業届の控えは、様々な手続きで提示が求められます。例えば、事業用の銀行口座を開設する際や、融資を受ける際に必要です。また、屋号入りの口座を作成する場合も、控えの提示が求められることがあります。小規模企業共済への加入手続きでも、開業届の控えが必要です。これらの手続きに備えて、開業届の控えはしっかりと保管しておきましょう。

そのほかに提出が必要な書類

開業届は、個人事業主として事業を始めるために提出する書類の中でも代表的なものですが、開業届以外にも提出しなければならない書類はいくつかあります。

開業届以外に提出が必要な書類について、以下で説明します。

都道府県税事務所へ提出する開業の書類

個人事業主として開業する際には、都道府県税事務所へ個人事業を開始したことを申告する書類を提出しましょう。

提出する書類は自治体によって異なり、たとえば東京都では「事業開始等申告書」、大阪府では「事業開始・変更・廃止申告書」という書類を提出することになります。

税務署に対して開業届を提出しているにも関わらず、これらの書類を提出しなければならないのは、税務署と都道府県税事務所では所管する税金の種類が異なるからです。

税務署は国税を所管しており、都道府県税事務所は地方税(個人事業税)を所管しているため、個人事業主としての納税をきちんと行うためにも提出が必要となります。

青色申告承認申請書

青色申告承認申請書は、確定申告時に青色申告を行うために必要な書類です。本書類を提出しなければ、確定申告は白色申告で行うことになります。

青色申告は白色申告よりも控除を多く受けられるなどのメリットがあるため、特別な事情がない限りは青色申告を行うのが賢明でしょう。

青色申告承認申請書は最寄りの税務署の窓口で受け取ることができるほか、国税庁のサイトからPDFで取得することも可能です。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、従業員を雇って給与の支払いを行う場合に、源泉徴収した所得税を毎月支払うのではなく、年2回まとめての支払いへと変更してもらうために必要な書類です。

ただし、納期の特例が適用されるのは、常時雇用する従業員が10人未満の場合のみです。常時雇用する従業員が10人以上の場合や、従業員を雇わずに自分だけで事業を行う場合には提出する必要はありません。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、最寄りの税務署の窓口で受け取ることができるほか、国税庁のサイトからPDFで取得できます。

青色事業専従者給与に関する届出書

青色事業専従者給与に関する届出書は、確定申告で青色申告を行う際に、配属者や親族に対して支払う給与を経費計上するために必要な書類です。

確定申告を青色申告で行わない場合や、配偶者や家族を従業員として雇わない場合には、提出する必要はありません。

青色事業専従者給与に関する届出書は、最寄りの税務署の窓口で受け取ることができるほか、国税庁のサイトからPDFで取得することも可能です。

所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書は、開業1年目の税負担を減らしたい場合に提出しておくと効果的な書類です。

本書類を提出しておくことで棚卸資産の評価方法を自由に選択できるようになるほか、減価償却の方法も「定額法」と「定率法」のいずれかを選択できるようになります。

棚卸資産の評価および減価償却を都合のよい方法で行うことによって、税負担を軽くできる点がメリットです。

所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書は、最寄りの税務署の窓口で受け取ることができるほか、国税庁のサイトからPDFで取得できます。

開業届を提出するメリットとは

開業届を提出することは、個人事業主としての第一歩です。多くの飲食店従事者が開業を考える際に、どのようなメリットがあるのか気になることでしょう。このパートは、開業届を提出することで得られる具体的なメリットを解説し、起業を考える方の疑問を解消します。

①屋号入りの口座を作成できる

開業届を提出することで、屋号入りの銀行口座を作成することができるようになります。屋号とは、事業を行う際に使用する名前のことで、銀行口座に屋号が入ることで、ビジネス上の取引がスムーズになります。特に飲食店を運営する際は、取引先や顧客との信用を築く上で重要な役割を果たします。屋号入りの口座を持つことで、ビジネスの信頼性を高めることができるでしょう。

②小規模企業共済に加入できる

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が退職金を準備するための制度です。開業届を提出することで、この共済に加入する資格が得られます。小規模企業共済に加入することで、将来の資金計画を立てやすくなり、安心して事業に専念できる環境が整います。特に、飲食店のような不安定な業種では、将来の備えとして非常に有効です。

③融資を受けやすくなる

開業届を提出することで、金融機関からの融資が受けやすくなります。開業届は、事業を公式に開始した証明となるため、金融機関は信頼性を評価しやすくなります。特に飲食店を新たに開業する場合、初期投資がかかるため、融資を受けることは重要です。開業届を提出することで、事業計画の信頼性が増し、融資の審査が通りやすくなるでしょう。

④青色申告特別控除を利用できる

開業届を提出することで、青色申告特別控除を利用できるようになります。青色申告とは、一定の要件を満たした帳簿を備えて申告することで、税務上の特典を受けられる制度です。特に、青色申告特別控除は所得から最大65万円を控除できるため、税負担を軽減する大きなメリットがあります。これにより、飲食店の経営をより安定させることができるでしょう。青色申告を行うためには、事前に青色申告承認申請書を提出する必要がありますが、開業届を提出する際に一緒に手続きを進めることで、スムーズに進行できます。e-Taxを利用したオンラインでの申告も可能で、時間を有効に活用できる点も魅力です。

開業届を提出するデメリット・注意点

開業届を提出することには多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点も存在します。まず、開業届を提出すると、個人事業主として税務署に認識されるため、所得税の申告義務が発生します。これにより、毎年の確定申告が必要となり、税務処理の手間が増える可能性があります。また、青色申告を選択する場合、帳簿の作成や管理が求められ、これも手間がかかる要因となります。

さらに、開業届を出さない方がいい場合も考えられます。例えば、事業が短期間で終了する可能性が高い場合や、収入が少額である場合には、開業届を出すことで逆に煩雑な手続きが増える可能性があります。また、開業届を提出する際には、どこに出すのか、必要書類は何か、書き方はどうすればよいのか、といった点をしっかりと確認しておくことが重要です。提出方法としては、郵送やオンライン、e-Taxを利用することができます。これらの手続きを正確に行わないと、後々のトラブルの原因となる可能性があるため、注意が必要です。

参考記事 開業届のデメリットとは?出したほうが良いケース、出さないほうが良いケースについて紹介

【業種別】開業届以外に必要な手続き

ここまで紹介した書類は、個人事業主として開業する方であれば誰もが提出しなければならない可能性がある書類でした。

しかし、業種によってはさらに別途提出しなければならない書類や、行わなければならない申請などがあります。

たとえば飲食店の場合、「飲食店営業許可」および「防火管理者選任届」が必要となり、深夜12時以降に酒類を提供するのであれば「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」も必要です。

そのほか、美容院・マッサージ店・エステサロンで開業する場合には、以下の書類の提出や申請が必要です。

・ 美容院:美容所開設届
・ マッサージ店:施術所開設届(国家資格所持者が医業類似行為としてのマッサージ等を行う場合)
・ エステサロン:美容所開設届(マツエクサロンのような化粧等の方法により容姿を美しくするための施設を併設する場合)

このように業種に応じて必要な届け出は異なるため、自身が営む予定の業種ではどのような届け出が必要かに関しては、事前に調べておかなければなりません。

飲食店の入口

個人事業主として開業後に必要な手続き

個人事業主として開業するために必要な手続きは、書類の提出や資格・許認可の申請だけではありません。

ここからは、個人事業主として開業した後に行うべき手続きについて説明します。必須ではないものの、行ったほうがよい手続きも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

国民健康保険・国民年金への加入

会社をやめて個人事業主になる際には、国民健康保険に加入するか、勤めていた会社の健康保険を任意継続するかを選択する必要があります。

一般的には国民健康保険に加入するケースが多いものの、扶養家族がいるケースなどにおいては任意継続のほうがお得なこともあるため、各自が抱える事情に応じて適宜判断するとよいです。なお、任意継続には最大2年という期限があることは覚えておきましょう。

また、保険だけでなく年金も、厚生年金から国民年金へ加入することになります。

事業用の口座やクレジットカードの作成

個人事業主として開業すると、個人で利用するお金とは別に、事業関係で出入りするお金が発生するようになります。

個人のお金の動きと事業のお金の動きを判別しやすくするためにも、個人の口座とは別に事業用の口座を作るのがおすすめです。

名刺やホームページの作成

個人事業主として取引の幅を広げるためには、名刺やホームページが重要な役割を担います。とくにホームページは、数多くの人にリーチできる方法なので非常に効果的と言えるでしょう。

ホームページは自分で作成することも可能ですが、貧相なものを作成してしまうと逆効果になりかねないため、クオリティに自信が持てない場合は費用を払ってでもプロに外注することをおすすめします。

確定申告の準備

個人事業主として開業を行ったら、1年に1回決められた期間内に確定申告を行わなければなりません。

確定申告を青色申告で行うのか白色申告で行うのかによって、手続きの煩雑さは異なりますが、行うべきタイミングでスムーズに行えるように事前に準備しておくことが望ましいです。

青色申告では複式簿記が必要となるため、簿記の知識がない方は税理士などの専門家に相談する、もしくは会計ソフトを活用するなど対策を行えば、円滑に確定申告が進めやすくなるでしょう。

開業時には開業届の提出や各種申請などのさまざまな手続きが必要

個人事業主として開業するにあたっては、開業届をはじめとしたさまざまな書類を提出する必要があります。

また、開業届の提出以外に必要となる手続きは業種によって異なるため、自分が開業を検討している業種で必要な手続きについてきちんと確認しておきましょう。

開業する方法についてはこちらの記事でも紹介しているのでぜひ参考にしてください。

さまざまな手続きについて、自分一人だけではすべて網羅できるか心配だという方は、開業準備を支援してくれる「canaeru(カナエル)」のようなサービスを利用してはいかがでしょうか。

「canaeru(カナエル)」では無料の開業相談を受け付けており、経験豊富な店舗開業のプロによって幅広いサポートを実施しています。

個人事業主としての開業に向けてサポートを必要としている方は、ぜひ「canaeru(カナエル)」の利用をご検討ください。

ご相談はこちら

この記事の監修

株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

canaeruは年間300件以上の開業サポート実績!

メールアドレスの登録で
開業までのサポート完全無料で受けられます!

個人情報の取り扱いについて

メールアドレスを入力してください

無料会員登録でできること
① 「日本政策金融公庫」の創業融資をはじめとする資金調達の相談が出来る!
② 開業時に必要な事業計画書の作成サポートが受けられる!
③ 店舗開業や運営に関するさまざまな疑問点・お悩みを何度でも相談可能!
※ 金融機関出身者、元飲食店オーナーら店舗開業のプロが対応します

PAGETOPへ