本当に何も分からないところからはじめて、周囲の人のサポートで開業…お店の維持には販促が不可欠
SHOP DATA
- サポート
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- 資金
- 物件
- 内覧
- 手続き
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- 一六八(イロハ)
- 村上康之
埼玉県川越市新富町1-3-4
- エリア
- 埼玉本川越
- 業種
- テイクアウト専門店
- ロケーション
- 繁華街
- ターゲット
- ファミリー向け
- 業界経験
- ~3年
- 開業時の年齢
- 40代
- 目標月商
- 100万~200万
- 開業資金
- 1,000万~1,500万
- 坪数
- 10~20坪
- 家賃
- 20~30万以下
開業を目指すきっかけ
- 村上さん・王さんご夫妻が、台湾のバンズとドリンクのテイクアウト専門店を開業した経緯についてお聞かせください。
- 2人は台湾で知り合ったのですが、結婚を機に居住は日本に構えることになりました。いつか台湾をテーマにした仕事ができればなあ……と思うようになったのが開業に向けた一番最初ですね。台湾をテーマにした仕事って何だろう…と考えた時、台湾の美味しいものを知ってもらえる飲食店がいいのでは? と具体的に思い描くようになったんですよね。また、私たちの住む川越市には本格的な台湾料理店がほとんどなかったし、ちょうどいいかなと。饅頭(まんとう。※中に餡や具が入ってない中国の蒸しパン)や肉まんなどをすべて手作りで出す店は、日本ではまだあまり見かけないし、専門店とするといいかな、と徐々にコンセプトをまとめていきました。台湾の饅頭は小麦粉・水・イースト菌・砂糖だけでつくるのが特徴。もっちりしていて、現地では朝食として食べる人が多いです。
- 奥様である王さんが、開業したいと旦那様に伝え開業準備を始めた、とのことですが、ご主人の村上さんはどのように考えられたのですか?
- 最初の頃はとまどいの気持ちもありましたが、頑張り屋の彼女のやりたい思いを私がとめるなんてできないですし、大きな借金をしてまでの開業ではなく、失敗してもやり直せる範囲の規模で考えていたので、「やってみようか」ということになりました。
開業準備での課題と解決方法
(物件探し・資金集め, etc.)
- 開業の準備はどのように進めていかれました?
- 主に店の経営をするのは妻なのですが、飲食業界で働いた経験もなかったので、都内にある台湾の饅頭屋で半年間、修行ということで働かせてもらいました。店で出すフードは日本の食材でほとんどまかなえますが、現地の味を再現するために調味料は台湾から取り寄せています。大変だったのは日本で飲食店を開業するハードルの高さ。台湾はお金があればすぐに開業できるのですが、日本では必要な資格や手続きが多いので、手間取ってしまいました。
最初は事業計画書という存在自体も知らず、内装工事などの進め方も全く知らなかったので、飲食業界の先輩にいちから教えてもらいました。
その中でUSENの「canaeru」を知り、セミナーにも通いましたよ。開業準備では特に融資や物件探しが不安だったので、主にこの2つを重点的に相談させてもらったんです。ひとりで起業するのは本当に大変ですし、多角的に情報を仕入れることや専門機関に頼ることの重要性を痛感しました。
- お店のある川越市は城下町の面影を残す「小江戸川越」として人気の観光地。物件探しは難航されたとか?
- そうですね。川越は飲食店にとって競争率の高い街です。居抜き物件自体の絶対数が少ないのです。一等地とも言えるのが川越駅にあるクレアモールという商店街なのですが、ここはまず獲得のための競争に勝つことが大変。
一六八の最寄り駅は本川越駅なので川越駅周辺に比べて店も少ないし商圏から外れてしまうけど、それでも空き物件、特に路面店だとほとんど出ないんですよ。
物件探しでこだわった点は立地と坪単価の2点です。よさそうな物件を見つけても予算オーバーだったりと、なかなか決まらず困っている時に、知り合いから紹介を受けたのが今の物件。実はここ、もとは車庫だったんですよ。テイクアウトメインの店を考えていたので、大通り沿いに面していた物件は願ったり叶ったりでした。坪10万円位の売上目標を立てているので、広さを含めて考慮してもベストな物件が見つかったと思います。
開業後の気づき/今後の課題
- 「一六八」のドリンクやフードをテイクアウトするのは観光客の方も多いのでしょうか?客層について教えてください。
- 観光目当てだけど、ついでに寄ってくれる…というお客様を当初見込んでいたのですが、実際は全くでした(笑)。観光客が主に利用するのは隣駅の川越駅ですし、本川越駅で下車したとしても観光地となる小江戸エリアにはバスで移動しちゃうんですよね。ふたを開けてみたら地元の方が中心で、特に20~50代までの女性客やお子様連れが多いです。オープン時期が真夏でしたので、その頃はタピオカを中心にドリンクだけの購入がほとんど。肌寒くなってきた10月以降はドリンクの売上も落ちてきたので、セットメニューを打ち出したら客単価は上がりました。ただ、それでも安すぎると言われてしまって(笑)。価格の見直しは考えているところです。
- メニューの見直しなども積極的に行っているのでしょうか。
- 新しいメニューは常に考えています。先にもお話しましたが、オープン当初の売上を占めていたのはタピオカドリンク。ちなみにその当時、川越にはタピオカ専門店は数える程度だったのに、秋口には倍以上に増えていました(笑)。ブームが落ち着いた段階で、店のラインナップにル―ロー飯を加えたところ、テイクアウトだけでなくイートインするお客様が増えました。メニューは常にブラッシュアップしていて、最近だと手作りパイナップルケーキが好評なんですよ。
味はもちろんですが、見た目にもこだわっています。テイクアウト専門店で始めたこともあって、持ち帰ってSNSなどで紹介してくれる機会もあると思いますし。
- 試食させていただきましたが、サクサクの生地にパイナップル餡がぎっしりで、本当に美味しかったです(笑)。「一六八」のオープンから半年が経ちましたが、経営に関する課題や悩みはありますか。
- 川越で一六八のファンをもっともっと増やすことですね。そのためにはたくさんの方との繋がりを持ちたいです。例えば、地元のパン屋さんや陶器屋さん、雑貨屋さんなどが次々とインスタグラムに一六八のことをあげてくれたんです。それがきっかけで来店してくれた方も多いんですよ。先日もたまたまお店に来られた地元の有名なブロガーさんが、一六八を気に入ってくれて、ブログで紹介していただきました。川越ではまだまだ台湾料理が珍しいし、手作りを気に入って応援してくれるお客様もいて、本当にありがたいです。人が人を呼ぶ。地元の横の繋がりや口コミの大切さを感じています。
- 「繋がり」について、具体的な施策などをされてきたのでしょうか?
- オープン前からお店のインスタグラムやフェイスブックのアカウントをつくり、写真をアップするなど地道に宣伝をしていました。昔も今も店の告知はSNSのみ。店の内装工事などの様子も写真で紹介していたので、「川越にどんなお店ができるんだ!?」と地元の人の間で噂が広まったのはオープンの弾みになりましたね。いわゆる「映える」フードやドリンクが多いのも、SNSと相性がよいのかもしれません。あとは時間が許せば地元のイベントに出店するようにしています。
SNSは趣味で配信していたわけではなく、明確に「集客策」だと考えて配信していました。全国区で有名になる必要はないわけですから、川越を訪れる方と地元の方を想定して配信しています。
また、逆に、川越の地元方をフォローするなどして繋がりを作っていきました。そういうコミュニケーションがお店を知ってもらうきっかけになると考えていたし、クーポンやセールみたいなことより、とにかくお店を、お料理を知ってもらい、広めていってもらうことが大事だと。
- 今後「一六八」をどんな形で成長させていきたいですか。
- 今はこの場所でしっかりと地盤を固めることです。そして次のステップ、たとえば2号店や移動販売など、この先のことを具体的に考えていきたいですね。目標とする売上にはまだ足りないし、決して順風満帆とはいえないですが、開業して本当によかった。スタッフをはじめたくさんの素敵な人と出会えたのは、「一六八」を始めたからこそ、だと思っています。