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『中華蕎麦 きみの』の常連客が継承。飲食店経営未経験のオーナーが語る開業までの道のり

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中華蕎麦 きみのあーる
小川博史

東京都新宿区西五軒町13−3

エリア
東京
業種
ラーメン店
ロケーション
ベッドタウン
ターゲット
ファミリー向け
業界経験
未経験
開業時の年齢
50代
目標月商
200万~300万
開業資金
500~1,000万
坪数
10~20坪

開業を目指すきっかけ

開業されたきっかけを教えてください。
神楽坂に『中華蕎麦 きみの』という人気店がありました。このお店で出される中華蕎麦はあっさり系の醤油と塩。何度でも食べたくなるこの中華蕎麦を求めて、たくさんの方が訪れていました。私もこのお店に何度も通っていた1人で、月に3回は食べに行くほど大好きなお店だったんです。しかし、店主が腰を悪くしてしまったのを機に今年の3月で閉店。その事を知ったのは昨年末にお店を訪問したときでした。その際に女将さんから、常連だった私に「うちの味を引き継いでほしい」と話しをいただいたんです。私自身、一瞬悩みましたがこのお店が好きだったし、この味を無くしてはいけないと思い引き受けることにしました。
店名も『中華蕎麦 きみの』にしたいと思っていました。しかし先代から少しだけ変えてほしいと要望があったので、受け継いだ店名にリボーン(生まれ変わる)の頭文字「R=あーる」を加えることにしました。
どういうところを引き継いだのか具体的に教えていただけますか?
スープや麺はもちろんですが、仕入れ先も極力以前と変わらないところにしました。受け継いだメニューの中に中華蕎麦・塩があります。この中華蕎麦のポイントは味変です。味変の調味料として酢橘の搾り汁をカウンターに置いているのですが、これも先代のころからあったもので、仕入れ先も同じ会社にしているんです。そのほかの食材も不漁でやむを得ず変更しないといけないもの意外はほとんど先代と同じものを使用しています。
あとは、店内の椅子。茶色い椅子とこげ茶の椅子を置いているのですが、茶色い椅子は先代のお店で使用していたものをリノベーションしたものなんです。以前のお店に通われていた常連のお客様が訪ねてきてくださったときに少しでも以前の雰囲気を感じてほしいと思って持ってきました。
ちょっとしたところだけど、そういう店の雰囲気も無くさず受け継ぐことが大切だと思っています。

どういうところを引き継いだのか具体的に教えていただけますか?

『中華蕎麦 きみの』は名店でしたよね。この味を受け継ぐことにプレッシャーは感じませんでしたか?
店の女将さんに頼まれたときには何とかなるだろうと考えていたのですが、スープやチャーシューなどの仕込みを教えてもらったときに、一筋縄ではいかないと感じました。1杯の中華蕎麦が出来上がるまでにたくさんの工程があるんです。
シンプルなのに何度でも食べたくなる味にするには、しっかりとした工程があってこそだと思いました。ここで改めて名店の味を受け継いで開業することへの重みを実感しましたね。

開業準備での課題と解決方法
(物件探し・資金集め, etc.)

開業を決めたときどんなことから始められましたか?
まずは物件探しから行いました。先代のお店が神楽坂にあったので以前の常連さんが通いやすい場所で、私の家からも近い場所にしたかったんです。そこで、不動産経営をしている知合いに希望を伝えて物件を探してもらいました。2件見つかったうちの1件がここ、江戸川橋の物件です。探し始めてから3週間くらいで見つかったので早く見つけられた方かなと思っています。ただ、この物件の内装工事がとても大変でした。
内装工事のどういう点が大変と感じましたか?
物件の築年数は70年以上。居抜き物件で、以前は居酒屋だったようです。まずは中華蕎麦屋の内装にするためスケルトン工事を行いました。ここで大変だったことは消防法を守った内装にすることです。思い描いていたのはカウンターのみの客席で、調理場からすぐに中華蕎麦を提供できる内装でした。
飲食店の開業は未経験だったため、どういうところが消防法に抵触するのかあまり分かっていなかったので専門業者に確認したところ20項目ほどのポイントがあったんです。それらすべてに引っかからないようにしないといけないらしいんですよね。それを知ったのが調理器具などを設置してしまった後だったのでそれらをもう一度外に出して消防法のチェックがクリアになるまで内装を作っていきました。四苦八苦しましたが、客席周りは理想通りの内装になったと思います。

内装で一番大変だった点はガス周りの工事です。昔の建物ということもありガス栓が小さかったため広げる工事をしなければいけません。そこで内装業者に見積もりを出して貰ったのですが、ガス周りの工事だけで300万円~400万円はかかってしまうと言われたんです。
当初、内装・外装工事費用として想定していたのは1,000万円。ガス周りの工事費用をプラスすると1,400万円になってしまいます。そこで、全体の工事費用も含めた開業費を日本政策金融公庫から融資を得ようと考えました。でも融資申請に必要な事業計画書の書き方など専門的なことが分からなかったためUSENの開業サポートへ問い合わせることにしたんです。
USENの開業サポートの担当者は、飲食店経営を経験されていた方だったことやこれまでに多くの方の開業をお手伝いされてきた経験から事業計画書を書く際のポイントを丁寧に教えてくれました。
結局のところ、原状復帰をしなければいけない物件でしたので、内装業者や日本政策金融公庫、USENの開業サポートの担当者とも相談し、ガス周りの工事は行わず、IHコンロを設置することで落ち着きました。ガス栓を広げる工事が無くなった点や飲食業での経験がなかった点を含め日本政策金融公庫から得られた融資金額は700万円くらいでした。

内装工事のどういう点が大変と感じましたか?

スタッフはどのように集められたのでしょうか。
内装工事と同時進行で、調理スタッフの募集も行いました。こちらも知合いに紹介いただきました。紹介いただいた彼はラーメン屋での調理経験が豊富で、今までにとんこつなどのこってり系や横浜家系ラーメンなどで店長の経験がありました。彼は横須賀に住んでいたのですが、店長として常にお店に立ってほしかったので店舗の近所に引っ越してもらったんです。効率のいいオペレーションなど、中華蕎麦屋の運営の仕方を知っているため未経験者の私としては本当に助かっています。

開業後の気づき/今後の課題

実際に運営してみて、開業までにやっておけばよかったと思うことはありましたか?
開業当初の6月は、コロナ禍で緊急事態宣言中だったため来店客数は少ないかなと思っていましたがたくさんのお客様に立ち寄っていただきました。既にネームが知られていたことに加え、感染対策をしっかりしていたことと、回転率が高いことが要因になったと思っています。
たくさんの方に来ていただけて嬉しい反面、開業前から人材をもう少し確保していればよかったと思っています。
緊急事態宣言中は、昼だけの営業を行っていて、店長と私の二人が主に店舗に立っているのですが、これが結構大変なんです。開業前までは店内も狭く効率よく動けるような調理場にしているから一人や二人でも回せると思っていたんです。しかし実際のところ、回転が速いためテーブルから食器を片付けたり洗ったりする作業も同時進行で行わなければなりません。私は別の業務もあるので、ずっと店内にいるというわけにもいきませんので、その際は店長が一人で店を見なければなりません。一応、アルバイトやパートの方はいますがピークの時間帯に一人で運営しなければならないのは大変です。そのため、もう少し人を入れて運営の負担を減らせていたらもっとパフォーマンスが上がったんじゃないかと思っています。
ただ、いまから人手を探すとなると時間も労力もかけることになるので、ある程度時間を割くことができた開業前に募集していればよかったなと少し後悔していますね。
開業後のお客様からの反応はいかがでしたか?
『中華蕎麦 きみの』に通っていた常連のお客様がこの店に通っていただけるか、一番心配していました。全員ではないと思いますが、以前のお店に通っていたお客様がこちらにも通っていただけるようになりました。
それに今では店舗近くに住む方々にも足を運んでいただけるようになり、新しく常連になっていただけたお客様もいらっしゃいます。
当店ではテイクアウトはしていませんが、店舗近くに住んでいるご年配の女性がわざわざ家から鍋を持ってきてお店の前に並んでくれたことがあったんです。その時は微笑ましくもあり、味を受け継ぐことができたんだなと嬉しくなりましたね。
今後のビジョンを教えてください。
今後は、とりあえずコロナ禍が落ち着いたら違う場所でも「中華蕎麦 きみのあーる」を出店し、先代の想いや味を広く伝えていけたらいいなと考えています。
中華蕎麦 きみのあーる
  • 東京都新宿区西五軒町13−3

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