患者数1日5人も想定内!? あえてのスロースタートで始めたワケとは？

地域の成長性や都市計画といった、客観的データを収集・分析して開業場所を決めるなど、ロジカルに医院の将来を思い描きながら開業準備を進めていったという小林院長。その経営戦略と、医院の未来について語っていただきました。

医院のコンセプトに合わせて、あえてのスロースタート

――開業前は、敢えて集患活動を控えめにしたと伺いました。
はい。最近では開業前に内覧会を行い、ロケットスタートを切るのがスタンダードですが、当院では内覧会をしませんでした。開業前から、患者様に「伝える」ことをコンセプトとして決めていました。その実現には、治療をする意義や治療のスタートからゴールまでの経過、さらに先の予防のことまでを最初に理解してもらう、というフローが欠かせません。
もし、ロケットスタートをして許容量以上の患者様が来てしまったら、コンセプトに沿った対応が難しくなると思ったんです。

開業直後の患者数は1日5人前後。それもすべて想定内！

――となると、軌道に乗るまで時間がかかったのでは？
患者様が1日5人前後という日が続き、経営が軌道に乗るまで1年くらいはかかりました。ただ、開業後しばらく忙しくならないことは想定内でしたし、余裕のある時間で何をするかまで決めていました。

――具体的にはどんなことをされていたのでしょうか？
患者様のアンケート内容をスタッフへフィードバックしたり、患者様のご家族へ歯科検診をご案内したり、という地道な活動ですね。まずは目の前の患者様に「しっかり説明してくれる医院」だと認識してもらい、そのうえで次の紹介へつなげることを目指しました。

――医院のWebサイトにも患者様からの手書きのメッセージが掲載されていますよね。「わかりやすい説明」、「丁寧な対応」という声が目立っています。
ありがとうございます（笑）。その部分については、私たちが非常に重視している点なので、評価していただけているのは本当に嬉しいですね。

――Webサイトも医院の内装も白を基調にされていますが、どのような狙いがあったのでしょうか？
メインターゲットを30～50代の女性に定めていたので、その層の方を意識して、清潔感と信頼感を連想させる白をイメージカラーにしました。

主婦のコミュニティは絶大？かかりつけ医として長期的なお付き合いを

――どうして30～50代の女性をメインターゲットにしたのですか？
歯の治療や予防に対して、しっかり向き合っている方々だというのが一番の理由です。また、主婦のコミュニティ内では口コミが期待できますし、ご家族の紹介が高いのもこの層です。あとは、私の妻が小児歯科専門医であることも理由のひとつでした。小さい頃からお母様と一緒に通ってもらうことで、「かかりつけ医」として長期的なお付き合いができますからね。

患者愛とスタッフ愛の割合は6:4がベストバランス

――開業時と現在で、医院経営への意識が変わった点はありますか？
大きく変わったのは、スタッフへの愛情のかけ方ですね。開業当初は何より患者様第一という考えで、「患者愛」と「スタッフ愛」の割合は9：1くらいでした。設備選びも、患者様にとっての必要性が最優先。スタッフの働きやすさにまで意識が及ばなかったんです。
結果、退職者が増えるなど、マネジメント面で弊害が出るようになりました。その失敗を教訓に、以降は患者様だけでなく、スタッフにとっての必要性まで充分考慮して設備投資や環境整備を検討しています。今は患者愛とスタッフ愛の割合は6：4くらい。いくらスタッフが大事でも、スタッフ愛が患者愛に勝ってはいけないので、これがベストバランスだと思っています。

――今後の医院経営についてはどのようにお考えですか？
このまま少しずつでも経営的な数字を伸ばし続けていきたいです。開業後、大きく成長していく医院も多いと思いますが、それを10年、20年と続けるのは簡単ではありません。当院も、今の医院規模とコンセプトで続けていけば、いつかは成長が難しくなるタイミングが来るかもしれません。それでも1年前の自分に、経営的にも技術的にも勝たなければいけませんし、その方法を考えることが大事だと思っています。
もちろん、スタッフ全体のクオリティの底上げも重要です。だからこそ教育面でも、院長としての想いや目指す診療について「伝える」ことを怠らずに続けて、毎年少しずつでも医院を成長させていけたらと思っています。