夫婦で立ち上げたヘアサロン、円満に続けられる秘訣とは？

「経営者に向いていない」そう語る店主・まっさんが作り上げた理想のサロンとは？

ーー太陽の日差しが燦々と差し込む、自然を感じられる気持ちのよいサロンですね。
もともとここは一軒家で、1Fは友人のサロンで2Fが僕たちの店。縁あってこの物件と出会ったのですが、好きに改装していいと言われ、自分たちで少しずつ作り上げていきました。インテリアは流木にしたり、ちょっとした机や棚は手作りです。お客様のカラーの待ち時間に店の内装をいじらせてもらうこともありました（笑）。僕ら夫婦が生まれ育ったのは自然の多い場所ですし、僕が昔から好んで通っていたのはハンドメイドな作りのお店が多かったので、そうした影響を受けていますね。
Tea Timaは以前勤めていた店で同僚だった奥さんとふたりで立ち上げてから9年になります。原宿という土地はサロン激戦区だけど、独立を考えたのはエネルギーのある時期でしたし、どうせやるなら、という強い思いがありました。ただ、僕は経営者に向いてはいないと思います。

ーー経営者に向いていないというと？
経営の本を読んでもしっくりこなくて、効率ばかりを追い求めるスタイルは違うなと思ったんです。僕は本能と感覚だけで生きています。夫婦でやるなら自分たちの長所を生かしたかった。だから今のサロンは僕の理想を追求したものです。そもそも夫婦ふたりだけの店だし、毎日いる場所だからこそ、店内にいるだけで癒されるようなリラックス感が必要だったんです。実は１日中、サロンでくつろいでから帰るお客様が多いんですよ。家族で来てくれる方もいて。ここでみんなが自由にのんびりしてもらえることが嬉しいです。

お客様からも心配の声、開業当初に起きたある出来事とは？

ーーご夫婦ふたりで一緒に仕事をされていますが、円満にやっていく秘訣は何でしょうか？
お互いに些細なことでも思いやりを持つことですね。ちょっとしたモノの言い方ひとつで関係性が変わってくるからです。喧嘩の原因って大抵が自分の思い通りにいかないとき。自己中心的な考えをなくすと喧嘩はなくなります。自分がイライラすることがあっても、「なんで今怒っているんだろう」って冷静になって考えることですね。

ーーふたりきりだからこそ、思いやりは欠かせませんね。
そう感じられるようになったのも、開業当初にある出来事が起きたからです。お客様が来てくれるかどうか不安が大きくて、オープンから500日間、一切休みを取らなかったんです。最後の方は夫婦関係や心のバランスが崩れて余裕がなくなり、お客様からも「そろそろ休んだ方がいいよ」って言われるくらい悲壮感があったみたいで（笑）。少しお休みをいただいたのですが、それから売り上げが安定するようになりました。基盤となる僕たちの気持ちや生活サイクルが安定したからでしょうね。
うちはマイペースにやっているので、自然と紹介制になりましたね。わかりやすい看板もないし、入り難いとは思うのですが、好奇心の強い人や海外の方がふらっと立ち寄ることが多い。そのせいか、一度来るとリピーターになってくれる方が多いです。

1Fのフリースペースではライブペインディング！？Tea Timeが実践する唯一無二の店づくり

ーー2016年7月には１Fにあるフリースペースを始められたとか。
ギャラリーやアトリエみたいな形で、使いたいという方に自由にお貸ししています。この前はアーティストの方と一緒にライヴペインディングのイベントを開催したのですが、これは通りすがりの人に感動を与えてほしいと思ったからです。僕は感動が人を変えると思っている。特に吸収力の強い子どもたちに何かを感じ取ってもらいたいんです。見える景色が違うだけで、人生も大きく変わってくる。今後はもっとたくさんのことをフリースペースで手掛けていきたい。今はそれが僕にとっての大きな柱になっています。
自分たちが一番大切にしているのはお店もそうですが、心のバランスです。心がブレなければ店は続くし、何をやっても上手くいく自信にもつながります。僕たちがここにいることでみんなが笑顔になったら最高ですね。

ーーTea Timeは唯一無二の店づくりをされているな、と思います。
僕たちにしかできないことをやろうと思っています。初めてお会いして、そう思っていただけたのなら、僕たちのやっていることは成功ですね（笑）。