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【小阪裕司コラム】第205回:人生最後の希望が叶う場所

【小阪裕司コラム】第205回:人生最後の希望が叶う場所

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

久々に来店された“お父さん”

 前回、前々回と、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の店でのエピソードを通じて、今日の社会での店の役割・あり方を考えた。今回も同様のエピソード。実践会員の、ある食品スーパーからのご報告だ。
 ある日、このスーパーがある市の中心部に住んでいる家族が来店した。店主と同年代の夫婦とその両親(80代)。来店頻度は多くないが、来店の際にはよく話をするので、気心の知れた間柄の方々だ。
 お父さんは久しぶりのご来店。病院の歩行器につかまりながら店に入って来られ、それを家族3人が見守っている様子だった。「久しぶりだねー」とお母さんに声をかけたところ、ご主人がずっと闘病しており長期入院していたのだが、外出の許可が出たので買い物に来たと教えてくれた。久しぶりに外出を許可され、ご主人にどこに行きたい?と聞いたところ、「○○(この店の店名)へ行って、自分が食べたいものを自分で選んで買い物したい」と言ったので、家族みんなで買い物に来たとのことだった。
 店主はお父さんにも「久しぶりだね。ゆっくりしていってねー」と声をかけ、お帰りの際もいつものように「またね!」と見送った。お父さんの表情もおだやかで、店内ではゆっくりと買い物を楽しんでいるようだった。

“選ばれる”ことの意義

 その数日後、娘さんが来店した。そして言うには「お父さんが亡くなりました」。先日は元気そうに見えたので驚いたが、事情を聞くと次のように教えてくれた。「実は先が短い状況で、最後に病院の先生が外出させてくれたんです。あれが最後の外出だったけれど、自分の足で歩いて、好きなこの店に来て、自分が好きなものを自分で選んで買い物できて、本人も嬉しかったと思う。私たち家族も最後の希望を叶えてあげられて悔いなく送れます」。
 亡くなったことはショックだったが、最後に自店へ来てくれた理由を聞き、「お役に立ててよかった!」という気持ちになったと店主は言う。こういう選ばれ方をすると自分たちの役割、店の存在意義にOK!をもらえた気がして自信につながるとも。
 この家族が住んでいる場所からこの店までの間に、食品スーパーは何軒もある。いずれも同店より大きな店だ。しかし、人生最後の希望を叶えるために選ばれたのはこの店。そこにある“違い”こそが、これからの商売における“違い”となる。そして新たな社会において「店」とは、そういう存在に進化していくことを求められているのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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