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依然として終息する気配のない新型コロナウィルス。
飲食店に対する営業時間短縮要請が再び出され、外食業界への逆風は強まる一方だ。
テイクアウトやデリバリーなど、コロナ禍でも需要を喚起できるビジネス形態を探っていく必要があることは言うまでもない。しかし、その際でも重要になるのは店のブランド力、すなわち顧客から信頼を得ていることであり、その大切さは飲食ビジネスにおいて不変のことである。
しっかりと顧客とつながっていること。それは時代や環境の変化にも左右されない、いわば繁盛の黄金律なのだ。
その実現のために近年、急速に重要度が高まっているのがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である。
もともとコミュニケーションツールとして生まれたSNSは、いまや外食にとって欠かせない情報メディアとなった。SNSを通じて店の情報を伝え、集客に結びつける。それはアイデアひとつで「小が大に勝つことができる」という外食ビジネスの特性を生かした手法といえるが、そもそもツールとなるスマートフォンは外食ときわめて相性がいい。
料理、店、人という外食を構成する要素の中で、とくに料理はスマホの画角サイズにマッチした格好の被写体である。それ以外にも、スタッフのキャラクターや経営哲学など店独自の“売り”を発信することが、熱心なファンを獲得することにもつながる。
緊急事態宣言が発出されていた時期も、SNSを活用することによって顧客とのつながりを維持し、営業再開後のいち早い業績回復に結びつけた飲食店や外食企業が目立った。これからはじまるであろうwithコロナの時代には、SNSがますますその重要性を増していくことは間違いない。そこで今回は、SNSの世界で大成功を収めた店と人の事例を通して、このメディアをビジネスツールとしていかに活用すべきかを探っていこう。
そこにはSNS上で“バズる”ための取り組みやアイデアなど、SNS活用のノウハウが満載されている。
目次
- ◆フォロワー:9.8万/最高いいね数:9,733◆ Instagramの投稿から雑誌『婦人画報』の表紙に抜擢【patisserie.asako iwayanagi】
- ◆フォロワー:6.8万/最高いいね数:7,061◆ 投稿時間も細かく調整。集客の分散もSNSで制御【amam_dacotan】
- ◆フォロワー:5.2万/最高いいね数:1,200◆ Facebookはビジネス、Instagramはファン拡大と、目的を分けたSNS運用で成功【カレー倶楽部ルウ】
- ◆フォロワー:2万9,209/最高いいね数:19万◆ 複数のアカウントを併用し、新店の軌道にブーストをかける【エリックサウス 高円寺カレー&ビリヤニセンター】
- ◆フォロワー:1万3,594/最高いいね数:8,157◆ Instagramのリポスト活用でお客様から見たお店の姿を演出【不純喫茶ドープ】
◆フォロワー:9.8万/最高いいね数:9,733◆ Instagramの投稿から雑誌『婦人画報』の表紙に抜擢【patisserie.asako iwayanagi】
2015年12月に東京・等々力にオープンしたパティスリー。
経営者の宿澤巧氏は開業に先立つ15年11月から、Instagramを活用したブランディングをはじめている。看板商品のスイーツの美しい画像でブランドの世界観や商品力を発信したが、これがメディア関係者の目にとまり、同店のスペシャリテである「パルフェビジュー」が女性から高い支持を得る雑誌『婦人画報』の表紙を飾ることになった。
これをきっかけにInstagramのフォロワー数が急増。2020年中には10万人に達する見込みだ。情報発信のメインツールとしてInstagramのタイムラインを活用しているが、同店のシェフパティシエである岩柳麻子氏の「作品集」と位置づけており、きわめてクオリティの高いスイーツの写真が顧客を惹きつける。
また、19年12月からInstagramのストーリーズを活用し、スタッフがつくったまかないの写真を定期的に投稿。和洋中からエスニックまでジャンルはさまざまだが、これを見た人から「お弁当も販売してほしい」という声があがっており、近く惣菜の販売も開始する予定だ。さらに新たな事業展開として山梨・塩山に農地を取得し、果物や野菜の自家栽培に取り組んでおり、この農作業の様子をTwitterで投稿。いずれは自社農場の一角にパティスリーをオープンする予定で、プロモーションに活用するため写真を撮り溜めているところだという。
◆フォロワー:6.8万/最高いいね数:7,061◆ 投稿時間も細かく調整。集客の分散もSNSで制御【amam_dacotan】
Instagram上で頻繁に商品写真を投稿し、2020年11月時点で6万8,000人のフォロワーを抱えるのが福岡・六本松の大繁盛ベーカリー「amam_dacotan」である。
Instagram上には美しくディスプレイされた色鮮やかなパンの陳列写真や、シズル感溢れる商品写真が並ぶ。中でも、これまでに一番バズったのが20年10月1日に投稿した「イチヂクのマリオッツォ」の写真。ローマの伝統的なパンを再現したマリオッツォに福岡県八女産のイチヂクを盛りつけた商品だが、「いいね!」の数は7,061まで伸びたという。
輪切りにしたイチヂクの断面を見せる商品のビジュアルは迫力十分で、こうした写真映えするメニューは閲覧数が跳ねる傾向にある。投稿写真は経営者の平子良太氏自らiPhoneで撮影しているが、パンがディスプレイされている写真は開店前にミリ単位でパンの配置や向きを調整してから撮影するなど、ライブ感や店の世界観がしっかりと伝わるようにしている。また、もうひとつ注目したいのが投稿時間だ。写真映えする商品は14時と15時に販売する限定メニューとして毎週リリースし、販売開始の前日に写真をアップするが、販売期間中は陳列する10分前にストーリーズにアップし、投稿したポストのリンクを貼って商品の詳細を閲覧できるようにする。また、午前中に集中する客数を分散させるため、オープン5分前に新商品の写真を投稿し、午後の来客につなげるといった細かな取り組みをしている点も特筆されよう。
◆フォロワー:5.2万/最高いいね数:1,200◆ Facebookはビジネス、Instagramはファン拡大と、目的を分けたSNS運用で成功【カレー倶楽部ルウ】
宮崎・都城の「カレー倶楽部ルウ」は、「チキン南蛮カレー」960円が看板商品のカレー専門店。現店主の日置純彦氏が店を引き継いだ2008年9月にSNSの運用に着手して認知を広げ、18年9月からはフランチャイズ展開に着手している。
SNSへの投稿は日置氏自ら行うが、黄色のマスクを被ったキャラクター「チキン南蛮カレー ルウ王子」に扮しているのがユニーク。
日置氏は店頭にもこの姿で立ち、自ら広告塔になって宣伝活動を続けているが、カレー倶楽部ルウのブランディングツールとしてSNSを活用している。ツールはFacebookとInstagramの2つ。Facebookで伝えるのは仕事に関連した近況報告で、ビジネスにつなげるツールとして活用。これまで累計2万本を販売しているカレー専用醤油「みやこん醤油」は、食品メーカーにFacebookを通じて連絡をとることで実現したコラボレーション商品だ。一方のInstagramはファンを増やすことが目的で、真剣にバカなことに取り組むキャラクターを演じることで閲覧数を上げている。ルウ王子としての投稿の他に飼っている猫の投稿もあり、これはファン層の拡大に貢献。いまやTwitterは約5万2,000人、Instagramは3万人を超えるところまでフォロワー数を拡大した。SNSは店の売上げ拡大に加えて、直営2店、フランチャイズ6店に拡大した店舗展開を支える重要なツールとして機能している。
◆フォロワー:2万9,209/最高いいね数:19万◆ 複数のアカウントを併用し、新店の軌道にブーストをかける【エリックサウス 高円寺カレー&ビリヤニセンター】
㈱円相フードサービスが展開する南インド料理専門店「エリックサウス」は、現在8店舗を展開。2020年3月にオープンした高円寺店は、ビリヤニに特化したマニアックなメニュー構成で、Twitterでの宣伝活動も奏功しコアなファンを獲得している。
エリックサウスの業態開発からレシピ制作までを担うのが専務取締役の稲田俊輔氏だ。稲田氏はエリックサウス1号店のオープン前から「イナダシュンスケ」名義でTwitterアカウントを開設。
エリックサウスのヒットに比例してフォロワー数は伸び、現在では約3万人のフォロワーを抱えている。現在、稲田氏個人のメインアカウントの他にインド料理のマニアックな情報をつぶやく個人のサブアカウント、エリックサウス各店のアカウントの3つを並走。
メインアカウントでは稲田氏の店や料理との向き合い方や哲学をつぶやき、サブアカウントではインド料理にまつわるコアな情報を発信する。店ごとのアカウントは顧客向けの情報発信が中心だが、アカウント開設時はまず稲田氏がしばらくの間つぶやいてブーストをかけ、フォロワー数が増えて軌道に乗ってきたら各店のスタッフに移譲している。
20年8月に稲田氏がメインアカウントでツイートした、鶏胸肉のシンプルレシピを紹介する『30分チキン』には19万件の「いいね!」がつき、4万4,000件のリツイートがあったという。稲田氏の発信力を生かしつつ3つのアカウントを有機的に結びつけることで新店をいち早く軌道に乗せ、南インド料理というニッチなジャンルながら急速な店舗展開を可能にしている。
◆フォロワー:1万3,594/最高いいね数:8,157◆ Instagramのリポスト活用でお客様から見たお店の姿を演出【不純喫茶ドープ】
2020年7月に東京・中野にオープンした喫茶と酒場の二毛作業態「不純喫茶ドープ」は、オープン前日にTwitter上に投稿された店頭の看板と食品サンプルの写真が“大バズり”するという幸先のよいスタートを切った。
同店ではオープンに先立ってTwitterとInstagramのアカウントを立ち上げていたが、オープン前日に店の入口前にある電飾看板と食品サンプルを目にした人が写真とともに自身のTwitterで発信。この人が1万人を超えるフォロワーを抱えていたこともあり、このツイートは6,000件を超えるリツイートがされ、5万件以上の「いいね!」がついた。
これによって店の公式アカウントも認知度が急速に高まり、オープン3ヵ月で1万3,000を超えるフォロワーを獲得している。同店のコンセプトは「人に紹介したくなる店」。純喫茶ならぬ不純喫茶という店名、店頭のレトロな食品サンプル、デザイナーとつくりこんだ店名のロゴやビジュアルなどでそれを表現しており、このことがオープン前からの情報拡散につながった。さらに注力しているのが来店客の投稿のリポスト。Instagramでお客が投稿した写真の中に「これは」というものがあれば、そのお客にコメントやDMでコンタクトをとり、店の本投稿としてリポストさせてもらえないか交渉している。さらにストーリーズでもお客の投稿を頻繁にリポスト。お客として見た店の姿が伝わる“リアルな投稿”とするとともに、更新頻度のアップにつなげている。
この記事の監修
株式会社柴田書店/株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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