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【小阪裕司コラム】第125回:「ようこそ先輩!」②

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

地域のお店が若者を育てる

 今回は、前回の続き。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の文具店での、顧客コミュニティの育成・活性化のお話。
 すでに美大生となっている同店主催のアートスクール卒業生に、現在のスクール生が教わるイベント「○○(店名)へ、ようこそ先輩!」。初めての試みだったが、大好評。教える方の自信と勉強になるとともに、教わる中高生にとっても大きな刺激になった。
 そして今回、それ以外に思わぬ「やってよかった」があった。それは、卒業生同士の交流だ。今回参加してくれた先輩らは4名。それぞれ別の大学に通っており普段会うことはないのだが、とにかく話が盛り上がる。主な内容は単位や進路のこと。うち2名は就活中でもあり、お互いの悩みも話し合っていた。互いの大学の講義内容にも興味津々で、実りのある会話が繰り広げられていた。「卒業後都会で力をつけ、必ずこの町に帰って来て、このお店のように、地域の役に立ちたい!」と力強い展望を語ってくれる子もいた。
「そんなやり取りを聞いていると」と店主は言う。「小さいお店でやり始めた教室でしたが、将来この町を盛り上げてくれる若者を育てるということにつながっているんだと、じわじわ嬉しくなりました。田舎の小さな、いち文房具店ですが、この地域の未来のための活動が出来ていると思うと、これ以上のやりがいはないなと思えます」。
 また今回参加してくれた先輩の中には、発達障害と診断され、高校時代、授業中に椅子に座っていられなかった子もいた。高校1年のとき、母親が藁をもすがる思いで、同店のアートスクールに連れて来た子だった。その後通い始め、特に幼児クラスの子たちに教えるボランティアが始まると、その子はすごいいきおいで成長を始め、症状も落ち着き、学校の授業も問題なく受けられるようになった。美大の受験にも無事合格。卒業前に同店でその子の作品展を開催した際には、担任の先生や教頭先生まで見に来られ、大いに感激していたとのことだ。

お店は地域コミュニティの核になれる

 地域における店の役割とは何だろう。私は、そのひとつはコミュニティの核であることだと思う。それは結果として顧客の維持につながり、経営の安定につながる。そして今回の例のように、そのコミュニティに温かく育まれた人たちが、そのことへの感謝と共に、社会の力となっていくのだ。「店」とは単なる「買い場」ではないのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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