全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
改善点は意外と身近なところにある
前回、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある卸業での、自社ホームページのほんの少しの改善で、注文件数が3倍以上伸びた事例をお話しした。こういう改善点は案外盲点で、同社・経営者もアクセス件数の増加など、マーケティング的にいかにも目が向きやすいところに懸命になっていた。そこで今回はもう1つ、盲点はこんなところにもあり、それを改善したことで売上が2.3倍になった事例をお話ししよう。
今回はあるペットショップでの実践だ。同店はいわゆるロードサイド店で、道に面して広い面積で店のファサード(正面から見た外観)がある。すっきりした外観デザインに、ファサードの両脇にはペットショップらしく可愛い犬の写真が、遠目からも分かる大きさで掲げられていた。
しかしこれが盲点だった。同店は犬用品の専門店ではない。猫用品も多く扱っている。というか、ペットショップである以上、それは同店にとって当たり前のことで、当然お客さんも知っていると思い込んでいた。だが、実際にはどうだろうか?
そこで店主は、右側の大きな写真を猫に替えてみた。新たな店のファサードとしては、左側が犬、右側が猫だ。すると一気に猫用品の売上は伸び始め、写真変更から4年経った今、猫用品の年商は、変更前の2.3倍にまで伸びたのである。
「人」に目を向けることで盲点が見えてくる
この間同店は、チラシや SNS広告などは一切やっていない。通常ペットショップで、犬用品に比較して猫用品の売上がかんばしくなければ、チラシやSNS広告など、先の卸業者のように、マーケティング的にいかにも目が向きやすいところの手を打つだろう。同店主のように、ファサードの看板写真が犬だけのため、通りを通る見込み客からは「犬用品の専門店」と認識され、猫用品は扱っていないと思われているのではないか、そもそも猫の飼い主からは店とも認識されていないのではないかという点には、なかなか考えがおよばない。
しかしこういうことは、ワクワク系的な視点での改善ではよくあることだ。なにせ相手は人間なのだから。チラシやSNS広告など、販促や集客の「手法・手段」ではなく、「人」の方に目を向ける。「人の習性」に詳しくなる。それによって盲点が見えて来る。すると今回の例のように、写真を替えただけで売上が2.3倍になるような思いもかけない成果が得られるようになるのである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
オラクルひと・しくみ研究所|小阪裕司ウェブサイト
