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個人事業主の方が転居によって住所を変更する際、所得税法の16条で定められている通り、税務署に対して書類の提出などを行う必要があります。
必要とされる手続きの量や内容は状況によって異なりますが、それぞれの手続きは数枚の届出を提出するだけなので、決して難しくはありません。
しかしながら、住所変更に伴う手続きを怠ると、確定申告の際に手続きが円滑に進まなくなったり、何度も税務署に足を運ぶことになったり、かえって手間が増えることもあります。
また、本来支払うはずの税金が引き落とされずに未納扱いとなり、延滞税が発生することも。
正しい知識を身に着け、必要な手続きについて理解を深めていきましょう。目次
移転に伴い住所変更になった場合に必要となる手続きとは?
住所を変更した際に必要となる手続きは、変更されるのが「納税地」なのか「居住地」なのかによって異なります。
居住地は住んでいる場所のことで、納税地とは納税の際の基準となる場所のことを指します。
国税庁によると、個人事業主の納税地は「住所地」「事業所の所在地」に加えて「居所地(単身赴任先や長期入院している病院の住所など、一時的な滞在場所)」のいずれかによって定義されます。
開業の際に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」の納税地を記入する欄でも、この三つから納税地を選択するようになっています。
確定申告などの税金に関する手続きは自身の納税地を管轄する税務署で行うことになるため、納税地の住所を変更した場合には、転居先の住所を管轄する税務署で確定申告を行います。納税地に変更がある場合
自宅を事業所として申請している方が転居する(納税地が変更される)場合、元々住んでいた住所を管轄している税務署に「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を、転居先の住所を管轄している税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出する必要があります。
市内や区内で引っ越した場合など、転居先と転居前の住所を管轄している税務署が同じである場合でも、それぞれの届出を提出する必要があります。
■「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」
転居前の住所を管轄している税務署の税務署長宛てに「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出する必要があります。
税務署の窓口で直接提出することもできますが、郵送で送ることも可能です。
届出書は国税庁のウェブサイトからデータをダウンロードするか、税務署で受け取ることで入手が可能です。控えと合わせて二部記入の上、マイナンバーカードの写し(またはマイナンバーの通知書と本人確認書類の写し)を添付して提出します。
提出期限は「納税地の異動があった後、遅滞なく」とされており、具体的な期限は定まっていませんが、開業届の提出期限が一か月以内なので、同程度のスケジュール感で提出しましょう。
■個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
一般的に「開業届」と呼ばれることも多い届出です。国税庁のウェブサイトか税務署で受け取ることができます。
個人情報や事業の内容など、基本的な記入項目は開業届と変わりませんが、「届出の区分」の項目で「事務所・事業所の移転」を忘れずに選んでください。
事業を始める際に開業届を提出したという方がいらっしゃるかもしれませんが、納税地が変更になる場合には、移転先の納税地を管轄する税務署で新たに開業届を提出し直すことになります。こちらは転居後一か月以内に提出する必要があります。納税地は変わるが居住地は変わらない場合
居住している住居とは別に店舗や事務所を構えており、店舗や事務所のみ移転する(居住地は変わらず納税地のみが変更になる)場合も、元々の納税地を管轄していた税務署に「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を、移転先の住所を管轄している税務署に「開業届」を提出します。
また、従業員を雇っているのであれば「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出も必要です。こちらも国税庁のウェブサイトか税務署で手に入れることができ、移転前の住所を管轄している税務署に提出します。こちらも郵送が可能です。
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出期限は転居から一か月以内です。納税地は変わらず居住地だけが変わる場合
店舗や事務所を住居とは別に構えており、そちらを納税地として申告している場合は、住居を移動しただけでは税務署になにかを提出する必要はありません。
同一の市区町村内で引っ越す場合は最寄りの市役所に「転居届」を提出してください。期限は引っ越しから14日以内です。
異なる市区町村に引っ越す場合は、引っ越しの14日前から当日までの間に引っ越し元の市区町村の役所へ「転出届」を提出して「転出証明書」をもらい、引っ越しから14日以内に引っ越し先の市区町村の役所へ「転入届」を提出してください。海外に移住する場合
海外に移住する際には、廃業に関連した手続きが必要になる場合があります。手続きが必要になるのは日本の居住者でなくなる(非居住者になる)場合です。住所、または継続して一年以上滞在している居住地・居所が国内にないと非居住者扱いとなります。
この際、移住前の住所を管轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を廃業届として提出しなければなりません。提出期限は廃業(移住)から一か月以内です。
また、場合によっては廃業届に加えて以下の書類の提出が必要になる場合があります。
■所得税の青色申告の取りやめ届出書
確定申告を青色申告で行っていた場合、移住前の住所を管轄する税務署に提出する必要があります。所得税の青色申告の取りやめ届出書の提出期限は廃業の翌年の3月15日です。
■所得税の納税管理人の届出書
個人事業主が海外に移住したあとも日本で不動産所得などによって収入が発生する場合、納税管理人に確定申告や納税を行ってもらう必要があります。この納税管理人を選出する際に、納税地を管轄する税務署へ提出することになります。
特に資格なども必要ないため、家族や友人に依頼する方も多いようですが、税理士に依頼することもできます。振替納税制度を利用している場合
振替納税制度は、所得税や消費税の納税を口座から自動引き落としで行える制度です。
振替納税制度を利用しており、転居によって管轄する税務署が変わった場合には、転居先を管轄する税務署か利用している金融機関に「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(振替依頼書)」を郵送または直接の持ち込みで提出し、改めて振替納税の手続きを行わなければなりません。
ただし、転居しても所轄の税務署が変わらないのなら手続きは不要です。
住所変更後に手続きを怠っていた場合、本来支払うはずの税金が引き落とされずに未納扱いとなり、延滞税が発生してしまいます。
期限の定められている手続きではありませんが、転居後すぐに済ませてしまうのが良いでしょう。「忘れた」なんて絶対NG!住所変更手続き
移転による住所変更手続きのキモは、「納税先が変わるかどうか」。
納税の義務を怠った場合のペナルティは、追加の課税だけではなく、
リカバリーする際の手続きの面倒さも発生します。
移転時にやらなければならない重要なことのひとつとして、後回しにしないことが必要です。
また、個人事業主と言えど、経営者は経営者、移転によって発生する必要な手続きを「忘れた…」なんて、経営者の仕事レベルとしては失格です。
そのようなことでは、事業もうまくいくことはなかなか難しい…と考え、しっかりとした管理体制を取りましょう。この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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