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「飲食店は立地が7割」といわれるように、飲食店の成功を左右する要素とされているのが立地です。従来、飲食店に最適な立地といえば繁華街や駅前などの人通りの多い場所だとされていましたが、コロナ禍を機に飲食店を取り巻く状況は一変。最近では、住宅街などの郊外に出店する飲食店も増えてきました。
そこで今回は、住宅街での飲食店開業が増加する理由とともに、住宅街に出店するメリット・デメリットや注意点を詳しく解説します。目次
住宅街への出店が増加傾向にある理由
コロナ禍をきっかけにテレワークが浸透し、都市部ではオフィスを縮小する動きも加速。オフィス街でのランチ需要が減少するとともに、忘年会や歓送迎会などの宴会需要も低迷が続いています。
その一方、プライベートな外食に関してはコロナ禍前と変わらず安定した需要があり、単身者や少人数世帯の毎日の食事、週末の家族での外食機会は減っていません。そうした経緯から、手堅いプライベート需要に焦点を絞り、住宅街などの郊外に飲食店を開業する動きが活発になっています。
住宅街に出店するメリット
初期費用、ランニングコストを抑えられる
繁華街や駅前と比べると、住宅街は家賃や保証金(敷金)が比較的低く、初期費用やランニングコストを抑えることが可能です。その分、店舗の内装や食材などにお金をかけられます。
競合店が少ない
住宅街での飲食店出店は増加傾向にあるものの、繁華街や駅前と比べればまだまだ競合店は少ない状況です。目新しいジャンルの専門店を開業すれば、消費者の注目を集め独占できる可能性もあります。
テイクアウト、デリバリー需要が高い
コロナ禍で急速に需要が高まり、浸透したテイクアウトとデリバリー。テイクアウトやデリバリーの利用者は、持ち帰りの手間や配送費を考慮してなるべく自宅に近い店を選ぶ傾向にあり、繁華街の店に比べて選ばれやすいメリットも挙げられます。
参考記事:飲食店でテイクアウトを始めるメリット・デメリットは?必要な準備や売り上げを伸ばす方法も解説
常連客やリピーターを獲得しやすい
住宅街では曜日に関係なく一定の通行量が保たれており、競合店が少ないうえに、自宅への帰り道にふらっと立ち寄ってもらえる特徴も。そうしたことから常連客やリピーターを獲得しやすいメリットもあります。周辺地域の住民が定期的に来店してくれるようになれば、経営も安定しやすくなります。
住宅街に出店するデメリット
人通りが少ない傾向にある
繁華街や駅前などに比べると通行量自体は少なく、競合店が少ない環境とはいえ、積極的に集客活動を行わなければ客数がなかなか増えない可能性があります。
大人数での来店はあまり見込めない
職場の宴会や友人同士の飲み会などの大人数で集まるケースでは、オフィス街や繫華街、駅前といった立地が選ばれがちです。一つのコミュニティが集まる場として住宅街の飲食店が選ばれるケースは少なく、大人数での来店はあまり期待できません。その分、地域住民を中心とする常連客やリピーターを多く掴むことがカギとなります。
人材を確保しにくい
顧客の集客だけでなく、スタッフの採用面でも苦戦する可能性も。住宅街では人流が固定化しやすく、スタッフの募集をかけても人材が集まりにくい傾向にあります。
住宅街の種類と特徴
一口に住宅街といっても、そこで暮らす層はエリアによってさまざまで、どんな飲食ジャンルが向くのかも変わってきます。ここでは住宅街の種類として4つを挙げ、その特徴や適しているといわれる業種・業態をご紹介します。
新興住宅街
比較的新しく造成された新興住宅街には、若いファミリーやカップルが多く住む傾向があります。ファミリー層が好むキッズスペースや個室のあるレストラン、子育て中の主婦層が好むカフェやスイーツ店のほか、単身者や夫婦だけの世帯向けにデリショップ、おしゃれなバーやビストロなども適しています。
参考記事:キッズメニューの需要が拡大中!メニューづくりのポイントとは?成熟住宅街
新しい住宅が建つ場所がなくなり成熟した住宅街には、40〜50代が多い傾向があります。落ち着きのある喫茶店や、高齢化が進む成熟住宅街であれば、和食店やデリバリー専門店などもおすすめです。
単身者住宅街
一人暮らしの学生や社会人が多く暮らす単身者住宅街は、外食やテイクアウトの需要が高く、一人で気軽に入れる店やテイクアウトメニューが充実した店が好まれます。ファストフードやラーメン店、そば・うどん店、定食店などがおすすめで、一人焼肉・一人しゃぶしゃぶなどのおひとり様専用店も。学生街であれば、安さと量が売りの飲食店にするのもよいでしょう。
しかし、単身者住宅街(特に学生街)は、新興住宅街や成熟住宅街とは違って住民の入れ替わり頻度が高く、せっかくできた常連客・リピーターが突如去ってしまう可能性も。また客単価も低い傾向にあるため、店の回転率を上げたり、利益率の高いメニューを開発したりする工夫が必要です。高級住宅街
高所得者層が多く暮らす高級住宅街。金銭面に余裕のある人が多く、外食の利用頻度も消費単価も高い傾向にあります。隠れ家的な個室フレンチなど単価の高い飲食店も受け入れられますが、高級住宅街に溶け込む雰囲気や高単価に見合うだけのクオリティ、サービスも問われることを理解しておきましょう。
住宅街に出店する際のポイントと注意点
集客プロモーションは必須
繁華街や駅前と比べて人流が少ない住宅街。開業時にはまず集客に力を入れ、自店に足を運んでくれる人を増やしていきましょう。SNSでの情報発信に加え、周辺地域の住民に向けてはクーポン付きのチラシ配布・ポスティングも有効です。
騒音・臭気対策も忘れずに
住宅街では飲食店からの音や臭いが原因で、近隣住民とトラブルになることも少なくありません。
せっかく開業したのに騒ぎ声や臭いでトラブルになり、多額の工事費用が発生する可能性も。また、トラブルが発生してから対策を講じていては、地域住民から悪いイメージを持たれてしまう危険もあります。店舗設計の段階から十分に注意し、対策を講じる必要があります。
●騒音対策
空調の室外機や換気扇などの騒音の発生源に対しては
・設置場所や排気場所を近接住宅から離れた位置にする
・遮音壁やサイレンサー(消音器)を設置する
お客様の声やスピーカー等の音響機器からの音楽に対しては
・防音性の高い扉や窓を設置し、営業時はできる限り扉や窓を閉めて営業する
・スピーカーの向きや音量を調節する
●臭気対策
換気扇などの排気口から出る臭気に対しては
・設置場所や排気場所を近接住宅から離れた位置にする
・排気ダクトを延長し、排出場所の位置や高さ、向きを変更する
・強い臭気に対しては、脱臭装置や油煙除去装置等を設置する
以上のような対策が挙げられます。
住宅街での飲食店開業は、地域密着化もカギに
コロナ禍を機に一変した今の状況を踏まえると、手堅いプライベート需要に焦点を絞り、繁華街や駅前から離れた住宅街にあえて出店することはメリットが大きいといえます。
ただし、繁華街や駅前と比べて通行量が少なく、大人数での来店はあまり期待できないといった懸念は拭いきれません。そうしたデメリットを補うためには、地域住民を中心とする常連客やリピーターを多く掴むことが不可欠。地域住民が集うコミュニティの場として機能するようになれば経営も安定します。
これから飲食店開業を検討する方は、競合の少ない住宅街にあえて出店し、地域密着化を図るという手も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
参考記事:飲食店を開業するには?必要な準備の4ステップをわかりやすく解説
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
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