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【小阪裕司コラム】第27回:なぜこの値上げは受け入れられるのか①

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

経緯、意図があっての値上げであることをしっかりと伝えたい

 世は値上げラッシュ。まさに今、この価格上昇時代にどう対処するか、「価値」と「価格」についての本を書いているが、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員からも、続々と値上げ報告が届いている。今日はその中のひとつ。ペットのトリミングサロンやペットホテルなどを営む方からのご報告を紹介しよう。
 同社は、2022年の5月、トリミングとペットホテルの料金を大幅に値上げした。その背景にはご多分にもれず、燃料、光熱費、備品などの価格が軒並み上がってきたこともあるが、そもそも業界全体としてトリミング料金が安過ぎることもある。いつかはそれを是正しなければ、どのみちこの先、良いスタッフを育て、良いサービスを提供し続けることはできなくなると考えてのことだ。
 値上げにあたって店主は、世の中の流れに便乗し、単に「大変だから値上げします」としたくはなかった。これまでの経緯、意図があっての値上げであること、ある意味苦渋の決断でもあることをしっかり伝えたいと考えた。
 そこで、事の経緯や背景を、定期的に発行しているニューズレター(以下、NL)に書き、店のLINEや店頭でも、「トリミングと、ペットホテル料金の値上げを行います。この苦渋の決断の経緯とお客様に対する思いがNLに綴られています。ご一読お願いします」と発信し、強く訴えた。

参考記事:飲食店の値上げ|メニュー価格は「さりげなく」上げる!ポイント5点

お店の価値を伝えることで値上げが受け入れられた

 結果はどうだったか。値上げ前の4月の数字を100とすると、トリミングの売上は100.2%、ホテルは127.9%、その他、近年力を入れているドッグトレーニングは149.9%、物販122.1%で、5月の売上全体では108%と下がらなかった。
 ホテルの伸びは、5月にはGWもあり、タイミングも良かったと彼女は言うが、タイミングだけならむしろこの機に安い他店に流れてしまうこともあろう。彼女が「自宅兼店舗で夜間も無人にならない、フリースペースがあるので、ケージに入れっぱなしではない、『安心』『温かさ』などの価値を前面に出しています」と言うように、より価値あるサービスを提供し、それを伝えていることが功を奏している。「ホテルについても、こちらが思うより、抵抗なく値上げを受け入れてくれている感じがしました」。
 さて、今、ざっと顛末をお話ししたが、値上げの際、お客さんの反応はどうだったのだろう。また、こうして値上げがうまくいく会社は私の周りに多いが、そこには共通したカギがある。それは何だろうか? 続きは次回に。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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