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【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第24回 いい人がいないのではない。飲食店の強みは、いい人に変える力があること
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社会保険労務士で(株)リーガル・リテラシー代表取締役社長の黒部得善氏がお届けする、飲食店経営にフォーカスした労務コラム連載。
スタッフを雇用する店舗経営に欠かせない業務のひとつである労務管理。特にコロナ禍以降の外食業界は深刻な人材不足に悩まされ、「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「そもそも応募が来ない」といった悩みのほかに、アルバイトがSNSを使ったトラブルを起こす事例もたびたび耳にするようになり、安定経営とリスク回避という二つの側面で労務管理の重要性が高まっています。
全24回にわたり続いてきた本連載もついに最終回。
最終回は、これまでの過去回を振り返りながら、人がいないと成立しない飲食店ならではの強みについてお伝えします。飲食店の「いい人が採れない」という悩みについて
1年にわたって連載してきた飲食店の労務コラムも今回が最終回です。
この連載を通じて「指揮命令する権利を買って対価として給与を支払う」という労務の手法をつかっていいお店をつくるという話をしてきました。最終回となる今回は、飲食店さんからよく寄せられる「いい人がいない」「いい人を採れない」ということについて、過去回の振り返りを交えながらお話します。
飲食店は人がいないと何もできない職場
飲食店は人がいなければシャッターを開けることすらできません。人がいて成り立つ商売です。そして当然ながら、「いい人」が多くいればお店は繁盛します。だからこそ、経営者は「いい人がいない」と悩むのです。ですが、それは本当でしょうか?
私は飲食業の素晴らしさの一つは「いい人に変える力があること」だと考えています。正直、全くダメだった人を経営者まで上り詰めさせたり、やんちゃばかりしてきたという人を立派な社会人に変えてきたり、と挙げはじめたらきりがありません。飲食業は常に門戸が開かれていて、そして人と向き合い、いい人に変えていく力をもっている業界であると、労務の仕事で関わらせていただく中で感じてきました。だからこそ、人がいなければ何もできない飲食店においては、「いい人に変える力」をきちんと発揮することでどんなお店も「いい人であふれる」と信じています。
きちんと人を受け入れる
今後、日本はどんどん人口減少していき人手不足に陥ると言われていますし、今の出生状況を見ても確実にそうなるでしょう。しかし、今日現在は人手不足というよりは人が辞めすぎであるというのが現実です。
第6回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか①
なぜならもう既に、飲食業への就労人口はコロナ前水準に戻っています。人がいないのではなく辞めすぎているという問題にきちんと向き合うために、私は「3か月以内の離職者をゼロにする」ことが重要であると考えています。
「3か月以内の離職を防ぐためにやるべきこと」シリーズはこちら
第7回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか②
第8回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか③
第9回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか④
第10回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか⑤
第11回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか⑥
さまざまな理由でアルバイトは辞めていきますが、3か月以内の離職はやるべきことをきちんとやれば減らせます。飲食店は指揮命令の頻度がとても多い職場であるからこそ、きちんとしたコミュニケーションをおこなえばゼロにできるものです。
理念を活かして指揮命令しやすい環境をつくる
100社あれば100通りの労務があります。その違いは理念の違いです。
同じ焼鳥屋さんであっても理念が違えばお店の運営の仕方は異なります。私は第3回でお話したように、理念を活かして日常の労務に活かすべきだと考えています。
第3回 理念を日常の労務に活かす
そして、会社を主語にして労務をおこなうことが一番大切です。飲食業の採用面接を受ける人は「前職も飲食でした」という方がとても多い業界ですので、「前のお店ではこうやっていました」などと、今のお店以外を主語にした主張が生まれてしまいがちです。そうならないために、理念を活かして「うちのお店は」「うちの会社は」と、会社を主語にして労務をおこなうことで理念を日常的に使うことができるようになります。
そして、その理念を日常化するために人としてのマインドセットが大切です。
第13回 お店でやってほしい仕事の整理②
飲食店はお店にいることも仕事、という職場です。常にお店にいるからこそ、嫌な人と一緒だとストレスを感じます。店長がどれだけ仕事ができても人として最低であれば、その人の下で長く働きたいとは思わないということです。理念に基づく人のあり方とマインドを求め続け、スタッフに伝わる共通言語に変えることで「うちのお店らしい人」を育成することにつながります。できるようにさせる
人を採用する目的は「やってほしい仕事がある」からです。
第1回 飲食店では“仕事ができる”と“仕事をやっている”はちがう。
やってほしい仕事がある、できなければできるように教える(教育)、できるようになったら見合った給与を支払う(評価)というサイクルが労務のサイクルです。
だから、やってほしい仕事をきちんと整理することで、理念や方針などの会社の考えに基づいた労務の仕組みをつくることが大切なのです。
最後に
どんな人もお店の戦力に変えてきた飲食業界が、日本の雇用を支えてきました。400万人以上の雇用を支えている業界であり、労働力人口の10%弱を支える巨大産業です。
この先、AIの時代・DXの時代として効率化は進みますが、飲食店から人が必要なくなるわけではありません。むしろ人が人に対してサービスをすることが、より重要になっていくことでしょう。そして、人口減少に備えて多くの外国の方が、飲食業の戦力として働きはじめています。つまり、この先の飲食店は外国人にも選ばれる職場でなくてはならなくなります。人手不足の中では即戦力ばかりに目が行ってしまうかもしれません。しかし、「いい人」に変えることができる飲食店は不滅です。震災も働き方改革もコロナも、全部まっとうに人の力で乗り越えてきたのが飲食業界なのです。
これからも人を活かして繁盛店をどんどんと作っていってください。
今回のキーワード:飲食店は人がいなくてはなにもできない
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