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【第5回】内装から考える愛されるお店の作り方

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「お店を開く」という夢を思い描いたときから、どんな内装にしようかと考えを巡らせている方も多いことでしょう。せっかく自分のお店を構えるのだから自分自身が満足できて、お客様にも愛されるようなこだわりのインテリアにしたいですよね。そこで大事になってくるのがパートナーでもある内装業者。「こんなはずじゃなかった……」と後悔しないための物件探しのコツや内装業者との上手な付き合い方など、内装にまつわるいろはを5回にわたってお届けします。教えてくださるのはこれまでたくさんの店舗の内装を手がけてきたその道のプロ、内装に関するセミナーも数多く行う小林佐理さんです。

最終回では愛されるお店になるための心得について伺いました。看板作りの参考にしたい具体的なアイデアから、内装を考えるときのマインドの持ち方まで、たくさんのお客様が訪れるお店にするためのアイデアが詰まっています。

入りやすいお店には興味を引く「看板」がある

小林:当たり前のことですが、お店を開くからにはお客さんにたくさん来てもらいたいですよね。では入りやすい店とはどんな店かと言うと、「入店する前から店の情報を知ることができる店」なんです。例えばメニューの内容や価格帯、お店やスタッフの雰囲気など、どれだけ店内の情報を知れるかで初めて来たお客様が一歩足を踏み入れられるかどうかを左右します。昔はそれをよくアイドマの法則(注意、関心、欲求、記憶、行動)と言っていたんですけど、つまりどこでお客様の興味を引くか?ということですよね。今はお店を知る情報ソースがグルメサイトや情報サイトということも多いですが、興味を引くきっかけとして、お店の前を歩く方々にどれだけ認知されるかはとても重要です。飲食をプロデュースするコンサル会社がよく「視認性を踏まえて距離を測り、遠視、中視、近視を考えて看板を出しなさい」と言うのですが、私も施主が物件契約をする時に物件そのものだけを見て決めるのではなく、その店舗を5m先、10m先、100m先から見たときにどう見えるかをきちんと考えましょう、ということをお伝えしています。お店の看板は、物件の立地によって見せ方が変わってきます。お店の前の通りが歩行者の導線なのか、自動車がよく通る導線なのか、バスが通る導線なのかなどで看板の出し方や見せ方も異なります。バスから見る人が多いなら上から見えるバス目線のファサードやサインを作ったり、自転車がよく通るなら通り過ぎてしまわないようにお店の10m先からでも目につく看板を出しておく必要があります。さらに、通勤や通学の行き帰りに使われる道であれば生活導線を考えて、お店に立ち寄りやすい帰り道からよく見える側に看板を置くなどが重要なポイントです。また、お店に入りやすいかどうかは、看板の内容が大事になってきます。最近では「築地から毎日直接仕入れています」とか「三ツ星レストランで働いていたシェフがやっています」というようなストーリー性を持った看板が多いですね。さらに、A形看板(店頭によく置かれているスタンド式の看板)はお店入店のきっかけとして非常に重要なのですが、物件契約前に店頭道路にA型看板が置けるかどうかのチェックをしておくことを忘れてはいけません。

内装のトレンドは意識しない

内装業者がこんなことを言うのは変ですが、僕らが内装のトレンドを施主に提案することはほとんどないです。店舗のトレンドは一年経てば変わりますし、日本での出店は海外から入ってくる企業も多いので改装へのタームも早くトレンドを追いかけたらキリがありません。ではどのようにして内装のテーマを考えるかというと、お店のコンセプトからその方向性を探ることが重要です。と言うのも、空間デザインは直接的に売り上げを生むものではないと私は考えます。例えば雑誌などで見て「このカフェに行きたい!」と思い行ったとしても、スタッフの接客態度が悪かったり、食事がおいしくなければどんなに内装がよくてもお客様は2度と来てはくださらないでしょう。つまり、空間デザインは新規のお客様を獲得するのには必要かもしれませんが、お店を継続経営するうえで大事なのはリピート客で、そこを増やすためには空間デザインは有効な策ではないし、内装にお金をかければ儲かる店舗になるということでもありません。大事なことは、コンセプトに合ったデザインをきちんと空間の中に取り込むことです。弊社がデザインを考えるときには、お店にやってくるお客様ではなく、ホールで接客する人や料理を作る人、スタッフのみなさんがいかにその空間の中でモチベーション高く働けるかを意識しています。「こんな立派な空間で働けてすごく嬉しい。オーナーさんありがとう」とスタッフが思えたならば、そのスタッフはきっとその空間に見合った振る舞いをするだろうし、それがお店に必要だと思います。料理人が焼き魚定食を和食のお店で作ったら端の方が焦げていて、それを普通に提供するのか、または躊躇できるかは「こんな素敵なお店で働いている自分がこんな料理を提供することはありえない」と、ひとつひとつの行動にお客様への思いを込められる空間作りが大事だと考えています。さらに施主の「こんな店舗にしたい」という思いを反映させるのが内装デザインの役割のひとつです。ですから、根拠のないデザインは目的が不明確であり、お店の経営を考えても避けるべきだと思います。「このデザインがカッコイイから、私はこうしたい!」というような根拠のないオーダーは無駄な出費と考えたほうがよいかも知れません。本当にそのデザインが必要なのか、しっかりと意見を出してくれる内装業者と一緒にお店のコンセプトを煮詰めながらアイデアをブラッシュアップしていくといいかもしれません。

根拠のあるデザインこそが内装で失敗しない秘訣

内装を考えるとき、大事なのはその根拠です。例えば「来た人が元気になるお店」にしたいのであれば、まずはどうすればお客さんが元気になるのかを考えてみることです。その具体的なひとつひとつをデザインに反映するのが内装だと考えています。例えば、料理が美味しそうに見えるお皿やそのお皿を載せるテーブルなどは実際にお客様に料理を提供する人の意向を汲むことが大切なので、料理長がどんなお皿を使用するのかを知り、そこから料理とお皿を置くテーブルはどんな色味、素材がいいのかを考える必要があります。また、料理が美味しく見えるためには照明もポイントです。照明によって料理の見え方が全然違いますからどう照明を当てたら料理が最もおいしそうに見えるか、お皿が最も映えるかを考えて内装を検討することが、根拠のあるデザインに繋がると思います。このような感じで仮説を立てながら内装を考えていけば、イメージがクリアになってくると思います。その中間が抜けてしまい、ただ「かっこいいデザインが作りたい」というようなケースはすごく多いのですが、それだとお金だけ掛かって根拠のないただかっこいいデザインになってしまいます。どんな内装にしようか悩んだら「デザインの根拠」を切り口に振り出しに戻って考えてみるとよいと思います。はじめて開業される方は予算も限られていて、実績や経験がない中で考えられることにも限界がありますから、理想と現実の調整役になるのが内装業者だと思います。ですから、きちんとそのデザインの根拠をお伝えできて、施主の思いをお客様に表現できる店舗を提案してくれる内装業者と協力して、愛されるお店作りをしましょう。

■プロフィール

小林佐理
オーナー目線で予算的に無理をしない物件探しや、内装工事に対するアドバイスを得意とする内装プロデューサー。

■プロフィール

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