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【小阪裕司コラム】第195回:お客さんが真に買っているものとは③

【小阪裕司コラム】第195回:お客さんが真に買っているものとは③

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

通い続ける動機は「楽しい」から

 当コラムで少し前に「お客さんが真に買っているものとは」というテーマをお届けした。牡蠣のオーナー制度にまつわるエピソードからの気づきだが、今日の消費行動の読み解きにおいて重要なテーマだ。今回は、そのエピソードから「同じことが自店でも起きている」という気づきを得た、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、布雑貨店からのご報告が題材。
 同店では、バッグやポーチなど布雑貨の作り方を教える教室も営んでおり、今年で20年目になる。生徒たちに手取り足取り手ほどきする、3時間ほどの講座だ。大人向けゆえ、参加動機のほとんどは「ソーイングの習得」。自分でもバッグやポーチなどを作れるようになりたいということだ。店主曰く、小物作りは技の種類がそれほど多くなく、習得するだけなら、数年も通えばほとんどは覚えられる。ゆえに教室を始めた当初は、ある程度のことを覚えた人は来なくなるだろうと思っていた。
 ところが、20年目にして思うことは、多くの人はそうではないということだ。それが顕著に現れているのは、通い始めて20年目になる二人の生徒。この二人には、教えることがもうほとんどない。本人たちも、新しく覚えることはほとんどない。それでも通い続けるのは、「新しいことを覚える」ためでなく、「ここに来ると楽しいから」のようだと店主は言う。
 一方、どれだけ通ってもなかなか覚えられない人もいる。そういう人の中にも長く通い続ける方は少なくなく、その理由はやはり「楽しいから」。ということは、と店主は思った。牡蠣のオーナー制度で、自分以外の家族が牡蠣を食べられないにも関わらずファミリーメンバーになり全員でイベントに参加する家族も、牡蠣がたくさん取れることに躊躇し、本当は参加したいのだが参加を見送った方々も、本質的には自店の生徒と同じではないか。つまり、「お客さんが真に買っているものは何か」ということだ。彼女はこう解釈する。「新しいもの」でなくても楽しい。「覚えられなくても」楽しい。お客さんは「教室で楽しく過ごす時間」を買っているのだと。

店側が気づくべきこと

 そこに気づけば、店側がやるべきことも変わって来る。常に新しい技や作品を提供するだけでなく、「ここで過ごす時間」が楽しくなることを考え、行っていくことも大切になる。ちなみに、件の牡蠣オーナー制度では今、作業中の家族の写真を撮りプレゼントするなど、牡蠣以外のサービスの拡充に入っているとのことである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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