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近年若者を中心にアルコール離れが進み、世界的にアルコール消費量が落ち込む中、酒類メーカー各社は低アルコール・ノンアルコール市場の開拓を進めています。
アルコール度数3%前後の低アルコール飲料は既に浸透しつつありますが、2021年にはさらにアルコール度数が低い「微アル」という新ジャンルが登場。メディアでも多く取り上げられ、注目を集めています。
目次
微アルとは?
微アル(微アルコール)とは、アルコール度数0.5%程度の低アルコール飲料のこと。大手ビールメーカーのアサヒビールがアルコール度数0.5%のビールテイスト飲料「アサヒ ビアリー」の発売にあたって作り出した、新たなカテゴリーです。
一般的なビールのアルコール度数が5%程度である一方、微アルのアルコール度数はその10分の1程度。微量のアルコール分を含む飲料であることを端的に表現した言葉となっています。
チューハイ・カクテル部門では、サントリーの「ほろよい」シリーズをはじめとする低アルコール飲料が既に定着していますが、そのアルコール度数は3%程度。アルコール度数3%の低アルコール飲料とアルコール度数0.00%のノンアルコール飲料との間という絶妙なポジショニングが注目を集めています。
お酒に弱い体質の方でも無理なく楽しむことができる上、健康面などでお酒を控えたいけどノンアルコールでは物足りないという方にも好評です。
ノンアルとの違いは?
微アルはノンアルの一つである
日本の酒税法において、酒類の定義は「アルコール度数1%以上の飲料」と定められています。そのため、微アルを含むアルコール度数1%未満の飲料は、法律上ノンアルコール飲料に該当します。例えば、焼酎などで割って飲む「ホッピー」もアルコール度数0.8%であるため、ノンアルコール飲料にあたります。
アルコール度数0.00%でも0.9%でも法的には同じノンアルコール飲料となりますが、消費者に誤解を招く可能性もあるため、酒類業界では自主基準として、ノンアルコール飲料と名乗るのはアルコール度数0.00%の飲料に限定しているといいます。
製法が異なる
しかし、ノンアルコールのビールと微アルのビールを比べると、製法が大きく異なります。
ノンアルコールビール
日本で主流なのは、ビール味に調合する製法です。酵母や麦汁を使用せず、麦芽エキスに糖類や香気成分などを加えてビールに似た味を作り出します。すなわち、アルコール発酵をさせずに作られているビール風味の清涼飲料水です。
その他には、アルコール発酵を抑える製法も。途中で酵母を取り除いたり、低温下に置いてアルコール発酵を止めたりして、アルコール度数が1%を超えないようにアルコール発酵を抑えるのです。
しかしどちらの製法でも、麦を発酵させた時の独特な香りや旨み、アルコール由来の重さなどはほとんど感じられないといわれます。
微アルコールビール
ビールを醸造してから、アルコール分だけを分離して取り除く製法が取られています。麦芽に酵母を加えてアルコール発酵させ、濾過するのが一般的なビールの製法ですが、微アルビールではアルコール発酵後、蒸留してアルコール分だけを取り除いてから濾過します。
低温でじっくり蒸留することによって麦の旨みやコク、香りを残すことができ、ビール好きの方でも満足できる味わいが実現されています。
微アルの飲酒後、車の運転は可能?
アルコール度数0.00%のノンアルコール飲料の場合、飲酒後に車を運転することは問題ありません。しかし、微アルは法律上ノンアルコール飲料に該当するものの、実際には微量(0.5%)のアルコール分を含んでいます。よって、微アルの飲酒後の運転は飲酒運転にあたるため注意してください。
飲酒運転と判断される基準値は、呼気中アルコール濃度0.15mg/Lで、血中アルコール濃度は0.3mg/mL。これはビール中ビン1本、日本酒1合を飲んだ際に検出される数値に相当します。アルコール度数0.5%の微アルであっても、量を飲み過ぎれば基準値に達する可能性があるのです。
未成年者の飲酒は?
周知のように、20歳未満の飲酒は法律で禁止されており、法律違反に該当します。微アルには、微量ながらアルコール分が含まれるため、未成年者の飲酒は不可となります。
そもそも、微アルを含むノンアルコール飲料は、20歳以上の人が飲むことを想定して製造・販売されている商品であることを理解しておきましょう。低アルコール・ノンアルコール市場が拡大中
若者を中心にアルコール離れが進み、世界的にアルコール消費量が減少する一方で、低アルコール・ノンアルコール市場は右肩上がりに成長を続けています。
飲料市場調査会社のIWSR社が2021年に公表した調査によると、低アルコール・ノンアルコール飲料の世界消費量は2024年までに31%増加する見込みです。
低アルコール・ノンアルコール市場が拡大する理由として考えられているのは、昨今の健康志向の高まりと、あえてお酒を飲まない「ソーバーキュリアス」※ と呼ばれる人たちが増えていることです。
また、コロナ禍をきっかけに大人数での飲み会が減少し、自分のペースでお酒を楽しむ人が増えたこと。普段からお酒を嗜む人であっても、シーンやその日の気分・体調によって、低アルコール・ノンアルコール飲料を選ぶ機会が増えたことも一因として挙げられます。
そんな風潮を受けて、バドワイザーやコロナビールを販売するアンハイザー・ブッシュ・インベブ社は、低アルコール・ノンアルコール商品の販売を強化。2025年までに、世界で販売するビール販売数量の20%を低アルコール・ノンアルコールビールにすると発表しています。
国内メーカーも続々参入
日本国内においても、アルコール消費量は年々減少を続けています。アサヒビールの推計では、日本の20〜60代の人口約8,000万人のうち半数が普段お酒を飲まない(飲めない・あえて飲まない)層に該当するといいます。
こうしたことから、国内の酒類メーカーは「お酒を飲む人をターゲットとするビジネス」から「お酒を飲まない人にもアプローチするビジネス」へと転換を始めています。
アサヒビール
微アルという新たなカテゴリーを生み出したアサヒビールでは、2021年3月にアルコール度数0.5%の微アルコールビールテイスト飲料 「アサヒ ビアリー」を発売。同年9月には、アルコール度数0.5%のハイボール 「アサヒ ハイボリー」を発売しました。
ハイボールといえば、アルコール度数5〜9%のものが主流です。しかし、アルコール度数0.5%であれば、ハイボールの味は好きだけど、お酒に弱い体質なので抵抗がある…という方でも安心。微アルのハイボールであればランチタイムにも抵抗なく楽しむことができます。
サッポロビール
2021年9月にアルコール度数0.7%の微アルコールビールテイスト飲料「サッポロ The DRAFTY(ザ・ドラフティ)」を発売。麦芽100%生ビールを原料とする製法を採用し、ビール由来の香りや麦の旨みを感じる味わいが特徴です。
普段からビールを嗜む、ビール愛好家からも高い評価を受けているといいます。
日常的にお酒を嗜む人であっても「明日は朝が早いから深酒は避けたい」「家事をしながら少しだけお酒を飲みたい」といったニーズは存在します。微アルは、まさにそうした需要に応える存在だといえます。
今後は、カクテル、ワイン、日本酒など、ビール・ハイボール以外の酒ジャンルにも微アルが広がっていく可能性が考えられます。
微アルは新規顧客の取り込みにも有効
アルコール度数3%の低アルコール飲料と、アルコール度数0.00%のノンアルコール飲料との間という絶妙なポジショニングで注目を集める「微アル」。世界的にアルコールの消費量が減少する中で、低アルコール・ノンアルコール市場は拡大し、お酒を飲む人も飲まない人も、体質や気分、シーンに合わせて、アルコール度数を選ぶ時代へと変化し始めています。
飲食店においても、お酒の種類・銘柄を選ぶのと同様に、アルコール度数の選択肢を広げてあげることは、新規顧客の取り込みや顧客満足度アップにもつながります。今後さらに存在感が高まっていくと見込まれる「微アル」をぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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