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若者を中心に行列をなし、社会現象にもなったタピオカミルクティーの店。そういえば、最近、見かけることが少なくなったなあ…と感じることはありませんか?その跡地を利用して増えているのが唐揚げ専門店です。一時のタピオカ同様、出店に勢いを感じさせる唐揚げ専門店が急増している秘密を紐解いてみましょう。
タピオカブームが過ぎ去った今
幾度となく繰り返される日本におけるタピオカの歴史。「第1次タピオカブーム」は90年代初頭、ココナッツミルクと共に食べるデザートとしてのタピオカに注目が集まりました。
そして台湾のタピオカミルクティーの専門店が上陸した2000年代初頭の「第2次タピオカブーム」(諸説あり)、そして「タピ活」「タピる」などSNS発の流行語も生まれ、2019年をピークとするのが「第3次タピオカブーム」です。
3度目のブームの背景にはLCC(格安航空券)の拡大で台湾旅行が身近になったことがあるといわれています。現地のグルメに注目が集まり、多くの台湾フードと共に現地のタピオカ専門店が日本に上陸。美味しさはもちろん、バラエティ豊かな茶葉やメニュー、盛り付けのかわいらしさ、台湾発の専門店といった希少性などが受け、行列が行列を呼ぶように。
ピーク時にはタピオカ店の数軒先にタピオカ店が出店するような事態も少なくありませんでした。しかしタピオカブームが熾烈を極める一方で、希少性や目新しさが消滅。ブームの中心にいた若者も飽和したタピオカブームから離れていきました。
原価率は低く利益率が高いことが特徴のタピオカ店ですが、同時に客単価が低いため回転率を高めることが肝となる業態。コロナ禍による緊急事態宣言や自粛といった影響も重なり、閉店や業態転換を図る店が増えるようになったのです。
タピオカ店舗跡地に唐揚げ店舗が急増!
タピオカ店と入れ替わるように、その跡地で目立つようになってきた唐揚げ専門店。そもそもタピオカ店が増えた要因のひとつに初期投資が安く利益率が高いといった側面があるのですが、実は同じことが唐揚げ専門店にも言えることなのです。
フライヤーと冷蔵庫を設置するスペースさえあれば出店可能な唐揚げ店は、広さもタピオカ店程度(10坪程度)があれば十分。こうした事情もあり、タピオカ店の跡地に唐揚げ店が出店するというケースが多くなりました。唐揚げ専門店が急増した理由
人気韓流ドラマ「愛の不時着」の劇中、登場人物たちがよく食べていたのが「チキン」。揚げたてサクサクのチキンを頬張る姿に食欲を刺激された視聴者も多いのではないでしょうか。実は韓国では日本のコンビニの数より多いチキン専門店があるといわれ、バリエーションも豊かで「ヤンニョムチキン」は甘辛いソースで絡めた人気の一品。日本でも韓流ドラマと同時にハマる人が続出し、唐揚げ人気の後押しに繋がりました。
富士経済が2020年に発表した外食産業国内市場によると、唐揚げのマーケット(イートイン、テイクアウト両方の店舗を対象)は、2019年の853億円から2020年は1050億円と12%近い伸びを見せています。
同調査では、「テイクアウト店舗は九州の一部地域などでは古くから展開されていたが、2010年頃から全国に出店が拡大。2019年は「から好し」を中心に、「からやま」「からあげ縁」「鶏笑」(編集部注:いずれもチェーン店)なども店舗数を増加させ、消費者への認知が広がったことで需要が増加した」といいます。
唐揚げといえば、お弁当のおかずや小腹が空いたときのおやつ、お酒のつまみなど、老若男女問わず人気が高いですが、その一方で何かと手のかかる唐揚げなどの揚げ物は避けられる傾向にあります。
ニーズは高いものの、実は供給が少なかった唐揚げに注目が集まるようになった、ということも市場拡大の一因になったといえるでしょう。テイクアウトの急増
コロナ禍で私たちのライフスタイルは大きく変わりました。食生活もそのひとつ。緊急事態宣言により外出自粛が強いられ、外食にとって代わったのがデリバリーやテイクアウトとといった中食です。アルコールが提供できず、営業時間も制限されるなど飲食店は苦戦を強いられるなか、テイクアウトに力を入れる飲食店が増加。
仕事終わりに外食ができず、夕飯に困る「夕食難民」や、忙しい共働き世帯などにとって、時間を問わず持ち帰れる総菜やお弁当のニーズは高く、唐揚げは存在感を増すようになりました。
調理が簡単
唐揚げ専門店は他の業態に比べて運営しやすいメリットがあります。それは調理の簡単さ。フライヤーがあれば誰でも同じように調理ができ、特別な技術も不要。
ソースなどで味のバリエーションを出すことがほとんどで、鶏以外の食材を多用してメニューづくりを考えるといったこともありません。オペレーションが容易なこともあり、専門性のいらないパートやアルバイトで店を回すケースも多く見られます。低コストで開業できる
飲食店を経営するにあたり重要な3つの大きな経費には「FLRコスト」(F=Food(食材費)、L=Labor(人件費)、R=Rent(家賃))と呼ばれるものがあります。
唐揚げ専門店はそのいずれもかなり低いのが特徴。原料となる鶏肉は牛肉や豚肉に比べて、仕入れ価格が非常に安く、原価率を抑えられます。
店舗自体は10坪程度の場所にフライヤーと冷蔵庫を設置してスタッフも2人いれば回すことが十分可能。テイクアウト専門店であれば駅前の一等地である必要もありません。
通常、飲食店の開業資金は1000万円前後といわれていますが、唐揚げ店は50万~100万円程度といわれています。コロナ禍の今、負担の大きな極力ランニングコストは抑えたいものですが、低コストで運営できる唐揚げ専門店は非常に魅力的な業態といえるでしょう。
10坪で月商500万円を超える店舗も
数ある唐揚げ専門店のなかで、勢いに乗っているブランドのひとつが「から揚げの天才」です。ワタミ株式会社がフランチャイズ(FC)を中心に展開するこのブランドは、2018年11月に1号店をオープンしたのを皮切りに、2年7か月後の2021年7月に100店舗を達成したことが話題となりました。
テイクアウト需要にマッチしたことや、個人店からの業態転換ニーズにも応えていることが背景にあり、100店舗のうち、約60店舗がコロナの影響を受けた居酒屋のオーナーだといいます。
「から揚げの天才」では初期投資額を999万円に抑えた「999万円出店モデル」を開発。FLRコストを極力抑えたこのモデル、投資回収は2年で済むといいます。約500店舗を展開するワタミのスケールメリットを生かした仕入力などもあり、店舗面積約10坪で月商500万円を売り上げる店舗も出ているそうです。
ワタミは今後の出店戦略を担う上で、より初期投資額を抑えた低投資「380万円出店モデル」を投入すると明らかにしています。
唐揚げ店を開業したいならここに注意!
季節を問わず食され、用途も多い唐揚げは国民食ともいえる存在。タピオカのような一過性のブームで終わるというよりも、テイクアウトで食べるというスタイルが定着するといった方がふさわしいかもしれません。
コロナ禍でテイクアウトの需要が続くなか、唐揚げ専門店は今後も増加することが予想されます。先述の通り、唐揚げ専門店は参入のハードルが低い点がメリットに感じられますが、それだけに競争が激しいジャンル。
価格自体は低いアイテムなので、出店場所の吟味や味やサービスで他店との差別化をどう図るかがカギとなりそうです。また鶏肉は食中毒の原因となる「カンピロバクター」が多く潜むため、十分加熱するなど取り扱いにはくれぐれも注意が必要です。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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