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「飲食業界=ブラック」業界は負のイメージを払拭することができるのか?

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一般企業では早くも、残業のない日を決めたり、通常の退社時間を早めたりするなど政府が推進する「働き方改革」としての取り組みが進められています。
しかし、飲食業界での営業時間短縮は商売の特性上、至難の技。
「働き方」そのものも特殊である飲食店では、今話題の「働き方改革」を実現できるのでしょうか?

徐々に普及してきた「働き方改革」とは?

厚生労働省の労働時間データに異常値が見つかり、当初の見込みより大幅にずれ込んでいた働き方改革関連法案も今年4月に閣議決定し、国会へ提出。
いよいよ「働き方改革」が各業界において、本格的にスタートする運びとなっています。

飲食業界 = ブラック は払しょくできるのか?…

一億総活躍時代の実現が叫ばれ、働き方の多様化が注目される昨今ではありますが、働き方が特殊ともいえる飲食業界において「働き方改革」は、実現可能なのでしょうか?

およそ8割が実感している飲食業界の人手不足問題

ここ数年、深刻化している飲食業界における人手不足の問題。
飲食店のおよそ8割が人手不足を実感しているというデータもあります。
少子化などの影響により、飲食店でアルバイトする学生も減少。また、拘束時間が長く、深夜営業も珍しくないため、同一の店で長く働き続ける従業員もなかなか居ないのが現状です。
また、昨今の「飲食=ブラック」のイメージはまだまだ根強く、業界へ希望を持った働き手が少ないというのも人手不足の一因となっているようです。

参考記事:【お店が回らない...】飲食店の人手不足の原因と対策をご紹介

「飲食業界=ブラック」のイメージは変えられるか?

拘束時間が長く、一般的な企業が終業した後の時間や休業日が“書き入れ時”となる飲食店では、働き方におけるルールの統一が難しいため「飲食店=ブラック」というイメージがつきやすいのが現状です。
しかし、そんなイメージを払拭するかのような取り組みも、大手チェーン店などを中心に行なわれいます。
例えば、深夜帯の営業を従業員ひとりだけに任せる、いわゆる「ワンオペ」が問題視された某牛丼チェーン店では、昨年春に労使合意により「勤務間インターバル制度」を試験導入。
この「勤務間インターバル制度」とは、勤務の終了から翌日の勤務開始までの時間に一定の休息時間を設けるというもので、従業員の心身の負担を軽減することが期待される制度です。

実は飲食店の半数以上が取り組んでいる「働き方改革」

このように、飲食業界の働き方改革は始まったばかりではありますが、ブラックなイメージの強かった大手企業においても、従業員側の声を聞き、着実に働き方改革を進めていることが伺えます。
実際、大・中・小規模飲食店のおよそ6割が取り組んでいるといわれる働き方改革。
どのような施策が効果的なのでしょうか?

飲食業界の「働き方改革」…5つの切り札とは?

外食チェーン大手の「ロイヤルホスト」や「てんや」などを運営するロイヤルホールディングスが、24時間営業廃止を決定したという動きは、ニュース等でも大きな話題となりました。
ロイヤルホールディングスでは、従業員の心身への負担が大きくなる長時間営業を廃止し、全店舗をあげて従業員の働きやすい環境を整えています。また、最近では完全キャッシュレス化で会計時の従業員の負担を減らすことができるという「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町店」をオープンするなど、生産性向上への取り組みも進んでいます。
また、同じく外食チェーン大手の「ガスト」などを展開するすかいらーくグループでは、地域正社員制度を採用。定年制度や連休の取得といった待遇の充実度に加え、転勤がなく地域に密着した生活を基盤とした正社員の制度が魅力となっています。さらに、勤務時間も4~12時間のうちに設定された5種類の中から選ぶことができ、従業員ひとりひとりのライフスタイルに合わせた働き方が選択できる方式が採用されています。また、一部店舗ではセルフレジも導入。ロイヤルホールディングス同様、従業員の負担軽減による生産性の向上にも着目しているようです。
では、中・小規模飲食店でも今すぐに取りかかれる「働き方改革」の具体的な施策とはいったいどのようなものでしょうか?

給与の引き上げ

まず、従業員のモチベーションアップにつながる第一の策は「給与の引き上げ」ではないでしょうか。
「串カツ田中」を展開する株式会社串カツ田中では四半期毎にボーナス支給(毎年増加予定)するといった試みがなされています。これは、「串カツ田中」で働くことの魅力を高め、強い気持ちをもって入社する従業員の定着率向上を目指したもの。
「離職率が高い」、「待遇が悪い」といった飲食業界の常識を覆すことに挑戦する強い姿勢が伺えます。
しかし、実際には売上に見合った賃金しか支給できない飲食店が多いのも現実。
中小規模の飲食店では長年、給与体系を変えていないというケースも散見されます。
時代にあわせた給与体系はどのようなものなのか、今一度見直してみることも必要かもしれません。

福利厚生の充実

「個室居酒屋 番屋」、「個室会席 北大路」などを展開する大東企業株式会社は外食チェーンのなかでもとりわけ福利厚生が充実している企業のひとつです。
既婚の全社員を対象に3万円分のJCBギフトカードをプレゼントする「奥様手当」や奥様が出産される際に旦那様にも2日間の休暇が取れる「出産休暇」、さらに妻帯者は家賃手当月5万円など、家庭を持つ従業員だけでなく従業員の奥様にまで嬉しい福利厚生・待遇が整えられています。
金銭面だけでなく、従業員の家族との「時間」を大切にする“社員第一主義”がこれから飲食業界で生き残る鍵なのかもしれません。

定休日の増加(土日祝休み)

最近話題となっているのが、飲食店のプロデュースを行うonakasuita株式会社の取り組み。その内容は、飲食店でありながら、土日・祝日休み、社保完備、夏季休暇も10日程度確保するというもの。
その上、正月休みもあり年間休日は最低でも122日はキープするという、今までの飲食業界の常識では考えられない取り組みです。しかしこれは「働き方は会社が決めるのではなくて、ひとりひとりに選択肢を与えてあげることが大切」という経営側の価値観から生まれたものなのだそう。
「働き方」の改革は、同時に「生き方」の改革でもあるのです。

営業時間の短縮

営業時間の見直しは、人件費や光熱費の削減や、お客様や従業員の安全対策にもつながります。少ない従業員でまわさなければならない深夜帯などは、トラブルも多く、特にアルコールを提供している飲食店では、お客様同士の些細な揉め事から大きな騒動に発展することも少なくありません。
売上に見合った営業時間に改めることも、飲食店が今すぐ取り組むことのできる「働き方改革」のひとつです。

時短勤務、二交代制など柔軟性のあるシフトの導入

営業時間以外にも仕込みや開店準備等で労働力が必要となる飲食店では、子育てや介護をしながらも働き続けられるよう「時短勤務」など柔軟性のある勤務時間体系を導入しているケースも見受けられます。
早い時間に働きたい従業員と、比較的遅い時間から深夜まで働ける学生アルバイト店員などを交代で入れる制度を導入している飲食店もあります。

「働き方改革」は、従業員ひとりひとりの「生き方改革」だ!

大手外食企業に加え、さまざまな店舗で始まっている「働き方」改革。経営する側にとっては、一時的な苦労が伴うことも考えられますが、従業員ひとりひとりにとって働きやすい魅力的な環境をつくることができれば、より優秀な人材を確保できます。
同時に長期雇用にもつながるので、従業員募集のための採用コストの削減にもつながります。1日の売上に一喜一憂することも多い飲食店。しかし、飲食店経営そのものを長い目で見ることも時には必要かもしれません。
飲食店は、フードやドリンクはもちろん、提供する“人”そのものが商品でもあるのです。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

#飲食店 #働き方改革 #人手不足

※この記事は、2018年5月16日に公開した内容を加筆修正したものです

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